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お台場でリアルロボットを見た日の夜、私達は日本の旅館やすらぎで疲れを癒していた。と言うのも実物大のロボットを見てフィーレが興奮してしまい、日本各地にあるリアルロボット巡りをする羽目になってしまったからだ。 これには美月さんも苦笑いしていたけど、周りに居た経済に詳しそうな人達はむしろフィーレと一緒に目をキラキラさせていた。美月さんが言うには地球側としても食べ物以外の交易品を探しているみたいで、フィーレが日本のロボットアニメに強い関心を示したことは嬉しい誤算だったらしい。
ただ、勘違いしてるんだよなぁ。フィーレは偶像としてのアニメを楽しんでいる訳じゃなくて、そこに出てくるロボットに強く惹かれているんだよね。そして、非常に厄介なことにアードにはアニメのロボットの大半を実現できてしまうくらいの技術力がある。
まあ、完全に未知のエネルギーが動力源とかなら難しいだろうけどある程度既存の科学が根拠にされているタイプのロボットなら十分に実現できてしまう。資材なんかはクラフト装置で幾らでも産み出せるからね。
だって、燃料であるマナはフェルと言うチートが居るから事実上無限大なんだよねぇ。
「そのまま作るのも良いけど、やっぱり工夫を凝らしたいよね」
フィーレは端末を楽しそうに弄る。てっきりそのまま再現するかと思ってたけど。
「模倣改変は悪いことじゃないよ。大切なのは本来の技術へのリスペクト、そしてそこにオリジナリティーを加えることなんだから」
「そんなものなの?」
「技術なんて基本的には模倣と創意工夫だよ。全く誰も知らないような技術がいきなり生まれることは滅多に無い。積み重ねなんだから」
ふむ、エンジニアのフィーレが言うと説得力があるなぁ。
「とは言え、インスピレーションを貰ったしリスペクトするとして先ずは同じものを作ってみようかな」
「へ!?」
いやいや、いきなりですか!?
「フィーレちゃん、何を作るつもりですか?」
「取り敢えずセンチネル用には広範囲攻撃が有効だから、サ◯ライトキャノンとかバス◯ーライフルかなぁ」
「軽く地球の軍事バランス崩すの止めよっか!」
人型機動兵器なんてもの簡単に作るのは難しいだろうけど、ちゃんと釘を刺さないと。大混乱になっちゃうから。
翌日。私達の前にはまさに伝説と言える実物大のファーストガン◯ムが鎮座していた。しかもちゃんと原作と同じスペックをしっかり再現している辺り、フィーレのリスペクトを感じるけど。
止めるのは無理でした。だって、イデ◯ンやらレ◯ズナーやらコン◯トラーやらゲッ◯ーやらグレン◯ガンやらガン◯スターとかヤバい名前がどんどん出てきた。何故かと言えば、答えは簡単。いつの間にかフィーレは日本のロボット好きが集まるスレに出没して意見を求めたんだ。
そしたらまあ、ネット民達はお祭り騒ぎになってあの手この手でフィーレにヤバいものを吹き込んでいた。私が気付いて介入した時には、ドリルの素晴らしさを延々と語るわ変形合体のロマンを語るわのカオスだったね。
慌ててフィーレを連れ戻したら、かなり濃いロボットマニアになっていたから軌道修正が大変だったよ。でも刺激されたフィーレの創作意欲は止められなくて、結局無難(?)なガン◯ムに落ち着いた。これ著作権とか大丈夫かなぁ?
「これ、まさか核エンジン?」
確か原作の動力は核エンジンだった筈。
「安心してよ、ティナ姉ぇ。流石に危ないから、ハイパーセルにしておいたよ」
ハイパーセルは反物質をエネルギー源にしたカプセルで、超光速航行システム、通称ハイパードライブシステムの燃料として使われてる。
……うん、普通にオーパーツだ。いつの間にか大勢の人が集まる。そりゃそうだよね。郊外と言っても東京なんだから。撮影してるっぽいし、大騒ぎになるんだろうなぁ。
ぼんやり考えていたら、急にガ◯ダムが動いた!しかも何故かラ◯トシューティングのポーズである。
「コイツ……動くぞ!」
「動くに決まってるじゃん、張りぼてとは違うんだから。なに言ってんの?ティナ姉ぇ」
「いやぁ、言わなきゃいけないかなぁって」
ティナが現実逃避をしている頃、この映像は瞬く間に世界中にばら蒔かれた。結果大騒ぎになったのである。
『朗報、リアルガ◯ダム大地に立つ』
『ジ◯はどうした。◯ムを作るのか否か、大事なのはそこだ』
『ザ◯を作るべきだろう』
『デス◯ーミーを忘れないであげてください』
『ど……ドー◯レス(ボソッ』
『量産型好きが集まり始めたな』
『やっぱり最初はガン◯ムかぁ』
『昨日お台場でフィーレちゃんが大はしゃぎしてたからな』
『実に愛らしかったが、頭が痛そうなティナちゃんと言う珍しいものが見られた』
『ああ、絶対やらかすと思っていたよ(確信)』
『これ、所有権はどうなるんだ?著作権とか』
『異星人相手に著作権を主張できるのか?』
『いや、分からん。まあ、訴えるような馬鹿は居ないだろ。だって地球人だとまだ作れないし(笑)』
『フィーレちゃんが楽しそうで何よりだ』
『次はスーパー系だな』
『先ずは軽くグレン◯ガンか』
『軽くとは何なのか』
この件は全世界のメディアも挙って報道し、アニメのロボットが実現できたと大騒ぎになった。
だが、日本の某テレビ局だけは何故か『魔法少女特集』を放映し。
『何に対抗してるんだよwww』
『こいつらwww』
『ロボットに対抗して魔法少女ってwww』
『今日も平和だな』
いつものようにネットを賑わせた。
そんな最中。
『ティナ、アードからのメッセージを受信しました。送信者はマスターティアンナです』
「お母さんから?なんだろう」
すぐにメッセージを開くと、そこには地球人の使節団をアードへ招くようにと書かれていた。んんん???
「なにこれ?」
『文面通りの意味かと』
「いやいや、お母さんはただの学者さんだよ?確かに政府にも伝があるみたいだけど、使節団云々を決められるような立場じゃないよ」
「へー、ティアンナちゃんが?☆」
声に振り向くと、そこにはニヤニヤしたばっちゃんが居た。
「遅いよ、ばっちゃん。何してたのさ」
「野暮用をね☆ところでティナちゃん、そのメッセージを椎崎首相とかジョンさんに見せてあげなよ☆喜ぶから☆」
「良いの?政府からの許可とか」
「パトラウスのお姉ちゃんはだーれだ?☆」
「ティリスちゃん(1000歳)w」
「笑うな☆」
「まあ、ばっちゃんが言うなら信じる。伝えるね」
尚、当たり前のようにハリソン大統領ではなくジョンにメッセージを丸投げし、彼の頭部で復活の兆しを見せていた産毛を一掃してしまう悲劇が発生したが、ティナは知るよしもない。