テラーノベル
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『日が沈みだした…そろそろ良い頃合いかなぁ』
mfくんと別れてから何度も何度も見上げた空はようやく日が落ちてきてぽつぽつと綺麗な星が見られるようになっていた。
うだるような暑さが和らいで気持ち良い風が吹いている、絶好の逢瀬日和だ。川で冷やしている西瓜もきっと良い塩梅になっているだろう。俺は人間の姿になって母さんに声をかけた。
「じゃあ母さん行ってくるね」
「ええ、気を付けて行ってらっしゃい。dnの大事な大事な恩人さんに果物ありがとうって伝えてね」
「な、んだよその言い方…」
母さんの生温い温度の笑顔と含みのある言い方につい頬が熱くなる。mfくんは俺の命の恩人だから大事で尊敬してるだけだし、それ以上でも以下でもない、たぶん。会わないうちにかなりかっこよくなってた、なんて思ってない。
山を降りながら太い枝を拾い集めて周囲を注意深く見渡す。この山のパトロールは俺の重大な仕事だ。
『………あった』
不自然に盛り上がっている土目掛けて枝を力強く刺し入れるとガチン!と嫌な音を立てて飛び出したバネが枝を嚙み砕く。成功したことにほっとして俺は小さくため息をついた。前から罠は仕掛けられていたけれど最近は特に数も威力もひどい。罠を仕掛けたクソ野郎の顔を拝んでやりたいと思っているけど母さんに珍しく真剣に止められていて未だ実現していない。俺はこのいたちごっこのやり合いに心底辟易していた。
『でも、俺がやるしかない、母さんやみんなを罠から守らないと…罠で大好きな皆が傷つくのを見るのは絶対に嫌だ』
山をすっかり降りきった時には拾った枝は半分ぐらいに減っていた。残った枝を放り投げて川に冷やしている西瓜を触るとひんやりとしていて気持ちがいい、これなら美味しく食べられそうだ。mfくんのおじいちゃんの家のほうを見るとちょうどmfくんが家から出てくるところだった。
「mfくん!」
「dn…」
「mfくん…?」
お互い良いタイミングで出てきたことが俺にはとっても嬉しくて駆け寄ったけど、mfくんは何だか難しそうな顔をしていた。
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