テラーノベル
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──お酒が進んでも、カイの様子はあまり変わらず、顔にも酔ったような風は表れなかった。
「意外と、強いんだね…」
瓶の中身は残り少なくなっていて、自分ばかりが酔って赤くなっている気がした。
「いや…俺も、酔ってきてる…顔に出ないだけで……」
言ったかと思うと、ふいにカイがグラリと身体を倒した。
「だ、大丈夫なの!?」
倒れかかる彼を慌てて抱きとめると、酔っているのは本当らしく、全身が火照って熱を持っていた。
「ねぇ…もしかして……実は、お酒に弱かったりも…?」
まさかという思いで尋ねると、彼は私の腕の中に倒れ込んだままで、
「ん…あんまり、飲めない……」
気だるげにそう口をひらいた。
「嘘でしょ……だって、けっこうな量を飲んでいて……」
どう見てもアルコールに強いタイプの飲み方でと、あ然としていると、
「ああ……緊張、してたから……少し……」
ボソリと彼が口にした。
「もしかして、緊張をお酒でごまかしてたの…? え…でも、何に緊張してて……?」
緊張の言葉の意味をはかりかねる私に、
「……おまえと、ふたりっきりなことに……」
カイが思いがけなく告げた──。
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