ミンドリーとぺいんの武器ライセンスの登録が終わり、3人は別室へと案内された。同席の警官はまるんの他、人質とビーチの二つの現場にいたことで呼び出された小柳、さぶ郎を心配した椎名である。
全員がソファに腰掛けたのを見計らい、まるんが話を進めた。
「では、先ほどの件をもう一度ご説明いただけますか?」
ぺいんとミンドリーが先ほど話した人質から解放された時に現場に警官がいたにも関わらず放置されたこと、ビーチで撃たれたことの他、この日の午前中に理由なく警察ヘリにつけられたことも話した。
この場にいる警官全員が午前中のヘリの件は知らなかったが、小柳は人質とビーチの件は現場にいたこともあり、気まずそうにしながらも二人の説明に間違いがないことを認めた。
その後、話を聞き終わったまるんとミンドリーとで今後の話が進められた。
「ご説明ありがとうございます。午前中のヘリの件についてはこの場にこちら側の当事者がいないため内部で事実確認します。その上で、後ほどあらためてご連絡し、警察に非があった場合は謝罪させてください」
「こちらとしては抗議ではなく、あくまでも『こういう事があった』という事実の共有です。事実確認の上、そちらに非があるのなら謝罪は受け入れますが、それよりも内部での共有と他の市民に影響が出ないよう再発防止に努めてください」
ミンドリーからまさに正論という言葉が出た。内部での共有不足も市民への対応も全くもってその通りある。
神妙に話を聞いていた椎名もさぶ郎に謝罪した。この街で友達となったからでもあろう。
「さぶちゃん、うちらがいろいろ迷惑かけてごめんね」
「んーん。椎名さんが何かした訳ではないから、気にしてないよ」
さぶ郎は椎名に話した後、その場にいた警官全員を見て言葉を続けた。
「でもね。自分が何もしていないのに、つけられたり、撃たれたりっていうのはね、武器を持っていない、普通の市民はとっても怖いんだよ。何も言ってくれないから、どうしてなのかが分からない。警察がさぶ郎たちのことが分からないなら、決めつけたりしないで、いっぱいお話しすればいいと思うよ」
椎名はさぶ郎の言葉を噛み締めながら返事をした。
「そうだね。さぶちゃんの言ってくれたこと、あたしもみんなに話しておくよ」
「うん。お店にもまた来てね。たくさんお話ししようね」
お互い伝えたいことを伝えたので、この場はひとまず解散となった。ミンドリーたちは店に戻り、警官たちは会議の手配を始めた。
ミンドリーたちが店に戻った頃、警察署内で会議が行われた。
ほぼ全ての署員が参加したその会議で、署長からミンミンボウ店員に関する出来事の共有がされた。
「私たちの使命は犯罪者を取り締まり、市民を守ることにある。今回のようなケースで判断できない場合は以後、花沢君に報告や相談をするように。花沢君は我々の指導のためにSGPDから招聘している。手続きの都合上、ハイランク(上官)ではないが、業務や市民対応で分からないことがあれば質問したり、報告するするように」
市民に迷惑をかけ、事件にも巻き込んでしまった事実は、警官たちをざわつかせた。納得する者、ミンミンボウの3人を心配する者、気まずそうにしている者、様々だった。
その様子をまるんは署長の後ろから見渡し、会議の後で関与していそうな者たちに個別に声を掛けていった。
彼らの言い分は概ね予測していた通りだったため、反省している者には次からは気をつけるようアドバイスをし、事の重大さを理解していない者には厳しく注意をした。
夜も更け、閑散とした店内で新聞を読んでいたミンドリーにまるんから電話がかかってきた。警察内での情報共有が終わり事実確認も済んだので、その連絡らしい。
この日の午前中に警察がぺいんたちの後をつけた件は大した理由もなく興味本位で行われた。しかも、ぺいんたちが何か問題を起こせば逮捕するつもりだったようで、該当する警官には厳重注意した事。その他の件も含め反省している警官がいる事だった。
「ドリーさん、本っ当に今日は家族団欒を邪魔したようで申し訳ないです」
「まるん君のせいじゃないよ。こちらも言いたいことは伝えられたから」
「そう言っていただけると、ありがたいです」
「まるん君もあっちの警察との違いで大変だと思うけど頑張ってね。相談には乗るから」
「ありがとうございます。まぁ、南署と違って、まだ素直に話を聞いてくれる人が多いので大丈夫です。それでは」
電話を切った後、再び新聞を読みながらミンドリーは思案した。
(あちらについてはまるん君には頑張ってもらおう。今の俺たちは家族最優先で、あちらに関わる気がないのだから。話してみた感じ、まるん君も分かってそうだけど)
視線を上げるとカウンターではさぶ郎とぺいんが今日楽しめなかった海遊びにいつ行くかを楽しそうに話している。
ミンドリーはその様子を目を細めながらしばらく眺めた後、再び新聞に目を落とした。
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