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#うちはイタチ
琴葉つきね
979
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「……っぐ……!!」
地下塩湖に、凄まじい黒雷の圧力が叩きつけられる。
うちはナラク。
信頼していた「担当上忍」の仮面を脱ぎ捨てた真の黒幕。その背後には、漆黒の雷を纏った『スサノオ』の骨格が、絶対的な死の威容をもって聳え立っていた。
「どうしたんや、アカネ? ミズキ? さっきまでの勢いはどこ行ったん?」
日傘を軽やかに弄びながら、ナラクがほくそ笑む。
右眼『思金神(おもいかね)』で私たちの思考を全て先読みし、左眼『武御雷(たけみかづち)』で必殺の黒雷を放つ。さらに万華鏡の究極絶対防御・スサノオ。
勝ち目なんて、どこにも見えなかった。
「アカネさん……ッ! 逃げて……僕が、時間を稼ぎます……!」
血を流しながら、マキナが最後のチャクラ糸を指に絡めようとする。
「あは……あはは……♡ ダメだよマキナ……次元が違いすぎる……こんな音、聞いたことない……♡」
シズクが笛を握りしめたままガタガタと震え、ロイスもアイネも、未来サエ先生すらもナラクの圧倒的なチャクラ圧の前に動きを封じられていた。
「ハハッ、無駄や無駄。全員ここでウチの神化の糧になりな」
ナラクのスサノオが、巨大な漆黒の雷剣を振り上げる。
落とされる——全員、一瞬で蒸発させられる。
冷たい死の予感が、私の首筋を撫でた。
その時だった。
バシッ!!
私の震える腕を、強い力で掴む手があった。
「……諦めるのですか、野蛮な風使い」
「……ミズキ……?」
横を見ると、日向ミズキが全身から血を流しながらも、その淡い紫の『白眼』に消えない炎を宿して立ち上がっていた。
こめかみの血管が破裂しそうに浮き出ている。倒れそうな足取りだけど、その瞳はまっすぐにナラクを見据えていた。
「あんな……あんなペテン師の言葉に惑わされて、あなたの風は消えてしまうのですか? たつまきの里の無念も、あなたの家族の想いも……ここで終わりでいいのですか!?」
「……っ!」
ミズキの叫びが、胸の奥で凍りついていた私の心を激しく叩き割った。
そうだ。
ナラク先生……うちはナラクに与えられた絶望は大きい。里の襲撃も、修行も、全部私を利用するための罠だった。
でも——!!
(この身体に宿る風は、ナラクに貰ったものじゃない!!)
荒れ狂う「たつまきの里」で、父ちゃんや母ちゃん、お兄ちゃんと一緒に生きてきた、私の一族の血と汗の風だ!!
「……諦めるわけ……ないでしょーがっっ!!」
ガアアアアアアアッっ!!
私の全身から、今までで最も強大で、最も澄み切った暴風が吹き荒れた。
『竜神化』。
身体から恐怖も迷いも消え去り、私は完全に周りの空気、地下塩湖の風とひとつになる。背中に現れた巨大な半透明の『風の龍』が、天に向かって咆哮をあげた。
「ほう……まだ抗うか、アカネ。だが無駄や。ウチの右眼はあんたらの思考を全て読み切り、左眼とスサノオは一切の攻撃を跳ね返す」
ナラクの冷酷な瞳が赤く光る。
「……なら、思考(考え)なんて捨ててやるわよ!!」
私が叫ぶと同時に、ミズキが隣で苦無を構えた。
「ミズキ! 打ち合わせも、作戦も無しだ! 考えるな、ただ直感で私につづけ!!」
「ハッ……洗練を誇る日向の僕に、そんな野蛮な戦いを要求しますか!」
ミズキが白眼の極限まで集中を高める。
「ですが……今のあなたの風なら、思考などという甘っちょろいプロセスなど不要だ!!」
「行くよ、ミズキィィィッ!!」
ドォォォォンッッ!!
私とミズキは、音速を超えて跳んだ。
「愚かな」
ナラクが右眼『思金神』を光らせる。私たちの身体の動き、チャクラの節目の思考を読み取り、スサノオの雷剣を振るおうとした——その瞬間。
(な……なに……!? 読めへん……!?)
ナラクの顔から笑みが消えた。
私の『竜神化』の風は、自然そのもの。意図も思考もなく、ただ荒れ狂う嵐。
そしてミズキは、思考を一切捨て、私の放つ「無規則な風の軌道」に己の感覚だけで完全にシンクロして動いていた。
思考を読もうとすればするほど、そこにあるのはただの「巨大な嵐」のノイズだけ!
「思考が読めへんなら……左眼で焼き殺すまで!! 武御雷(たけみかづち)!!」
絶対命中の黒雷が、一直線に私を狙う!
「させるかぁぁぁっ!! 竜神・風鏡流転(ふうきょうりゅうてん)!!」
私が全身の竜神化の風を巨大な旋風の鏡として展開! 武御雷の必殺の雷撃を、チャクラの回転で無理やり上空のスサノオの頭部へ向けて屈曲・跳ね返した!
バリバリバリズドォォンッ!!
「グッ……!? ウチの雷が……スサノオに……!?」
自分の雷撃を喰らい、スサノオの骨格に亀裂が入る。ほんの一瞬、ナラクの絶対防御に「生じた隙(穴)」。
「そこだ、ミズキぃぃぃっ!!」
私の叫びに、ミズキの白眼が限界を超えて光り輝いた。
「あなたの風が拓いた道……僕が、繋ぐ!! 柔拳法・八卦一石二鳥(はっけいっせきにちょう)の極!!」
白と紺の閃光となったミズキが、スサノオの割れ目からナラクの懐へと超至近距離で突入。
右眼『思金神』の点穴と、左眼『武御雷』の点穴……ナラクの両眼へと繋がるチャクラの経絡系へ、一卵双生児のような寸分違わぬ二連撃の突きを叩き込んだ!
ドドンッッ!!
「ガハッ……!? ウ、ウチの……万華鏡の経絡が……!?」
両眼の点穴を完全に塞がれ、ナラクの万華鏡写輪眼が強制解除される。スサノオの骨格がガラガラと音を立てて崩壊していく。
「仕上げだぁぁぁッ!!秘術・竜神爪破斬(りゅうしんそうはざん)!!」
私は竜神化の風を右腕に凝縮し、嵐の龍の爪となってナラクの胸元へ跳びかかった。
「アカネェェェッ!!」
「ナラクぅぅぅッ!!」
ズドォォォォォォンッッ!!!!
地下塩湖全体を吹き飛ばす、圧倒的な暴風と水柱が爆発した。
静寂。
塩の雨が降る中、煙が晴れていく。
ナラクは万華鏡写輪眼を失い、地下塩湖の壁に深く埋もれてピクリとも動かなくなっていた。命はあるが、二度と忍として暴れることはできないほどチャクラの脈を破壊されている。
「ハァ……ハァ……ハァ……」
竜神化が解け、私はその場にひざまずいた。
隣には、全身のチャクラを使い果たしたミズキが、大の字になって倒れている。
「……やりましたね……野蛮な……風使い……」
「……誰が野蛮よ……白眼野郎……」
私たちは顔を見合わせ、ボロボロの顔で……初めて、同時にクスッと笑った。
「アカネさぁぁぁぁん!!」
「アカネちゃん!!」
マキナが、シズクが、ロイスが、アイネが、サエが、駆け寄ってくるのが見えた。
最悪の絶望を乗り越え、私たちは勝ったのだ。
たつまきの里の、泥臭くて澄み渡る風と、洗練された一瞬の絆で。
「……ねえ、ミズキ」
「何ですか」
「今度こそ……握手、してあげる」
差し出した私の手に、ミズキは少しだけ嫌そうな顔をしてから——力強く、握り返してくれた。
コメント
1件
いやあ……もう、最高でした!(涙) ナラクの圧倒的な絶望感から、ミズキの「諦めるのですか」の一言でアカネが立ち直る流れ、鳥肌立ちました。思考を捨てて風の直感で戦うっていう発想、めちゃくちゃ熱いですね。最後の握手のシーンでじんわり来ました。お疲れさまでした、キュルノさん!😭✨