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もも@リゼロ二次創作激求め
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#リゼロの二次創作増やすため、意味もなくリゼロタグ
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もも@リゼロ二次創作激求め
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柔らかな日差しに瞼を突っつかれて、ベアトリスは目を覚ました。
窓の外から聞こえてくる、小鳥の軽やかな囀り。
程よい暖かさを携えた、穏やかな涼風。
そして、直ぐ側から聞こえてくる、愛しのパートナーの静かな寝息。
最初は彼と一緒に寝るのはどうにも照れ臭かったけれど、これもすっかり慣れたものだ。
今では自分以外の体温がないと、どうにも落ち着かなくなってしまった。
───目が覚めた時にすぐ隣に大切な人が居てくれること。笑いかけてくれること。
その温かさを知ってしまってからは、どうにもスバルから離れ難くなってしまった。
弱く、なったのだろうか。
それとも、これが本来の自分なのだろうか。
その真偽は分からないが、ベアトリスとしては今の甘えたがりな自分の方が好ましいと考えている。
何より、スバルを一人にすると、あまりにも痛々しく自分を傷付けるものだから。
「────」
自分もすっかりスバル中毒になってしまったな、と思いながらベアトリスは未だ寝息を立てているパートナーを起こそうと、目を向けて、
「…………。………………。……。……は?」
そこには、見慣れた黒髪の少年ではなく───見たこともない、赤髪の少女が居た。
✕ ✕ ✕
────可愛くて賢い完全無欠の大精霊、ベアトリス。
彼女の自慢の脳味噌は、今や疑問という名の嵐にめちゃくちゃにされていた。
「…………は?え?す、すすすすスバ?すばる?……は?スバル?は?」
は?とスバル?以外に言葉を発せなくなったベアトリスは、いつまで経っても完結しない情報を必死に飲み下そうとしていた。
昨夜のスバルは、いつも通りの見た目だった。
いつも通りエミリアにラブコールを送って、いつも通りラムに揶揄われて、いつも通りオットーたちとじゃれ合って、ペトラとフレデリカが作ってくれたお菓子を食べて、眠り姫となってしまった青い少女に寄り添って。
そして、ベアトリスと一緒に仲良く眠りについた筈だった。
その筈なのに、何故目の前に居るのは黒髪の少年ではなく、この赤髪の少女なのか。
まさか、今まで見てきたスバルの姿は偽物で、真の姿はこの赤髪の美少女だとでも言うのか。
「い、意味が分からんのよ…。え、えと……とにかく!お、お前!いい加減起きるかしら!!いつまで寝ているのよ!」
「………あと、五時間……」
「お前、昼間まで寝るつもりかしら!?いいから、さっさと起きるのよ!」
律儀に寝言にツッコミを入れながら、ベアトリスは少女から布団を引き剥がす。
布団の柔らかい感触が消えたことに少女はぶーたれながら、ようやっと起き上がる。
パチパチと眠たげに鳥の翼よりも長い睫毛を瞬かせながら、少女は蒼穹を閉じ込めたような青い瞳を揺らして───。
そして、目の前の怒りと困惑が冷めやらぬ様子のベアトリスを認識すると、ニコリと笑った。
その陽だまりの笑顔に、ベアトリスは確信した。
───これは間違いなく、見た目赤髪美少女、中身はナツキ・スバルその人だと。
「おはよう、ベア子!お前は今日も可愛いなぁ……ん?どした?」
「…す」
「す?」
「やっぱりスバルなのよ───!?」
屋敷中に響き渡る悲鳴をあげたベアトリス、二人の部屋に騒ぎを聞きつけたエミリアたちがなだれ込んでくるのは、今から十秒後のことである。
✕ ✕ ✕
────ロズワール邸の居間にて。
「いやらしい」
「いやいやいや姉様、これ不可抗力だから!!なりたくてなった訳じゃねぇから!」
「いやらしい」
「話聞けよ!!」
朝食を食べた後、現在のスバルの状態を解明しようとエミリア陣営の全メンバーが集結していた。
その際に、いの一番に言われたのが上記の台詞である。
かなり謎の事態にも関わらず、この豪胆さ。さすがは我らが姉様である。
そんなラムの絶対零度の瞳に蔑まれる赤髪の美少女こと、スバル。
彼(彼女?)は、サイズの合わないジャージの袖を握り締め、しょぼくれている。
白磁の肌に、火季の空のように青く澄み渡る蒼天の瞳、細くも女性らしい肢体。
とても普段の彼とは結びつかない、見慣れない美貌を改めて目の当たりにしたエミリアは、おっとりと微笑んで、
「でも、今のスバルすごーく可愛いわよ。始めはびっくらこいちゃったけど……スバルはスバルで安心したわ」
「え、エミリアたん……!!」
「いやらしい」
「姉様、さっきからそれしか言ってねぇな!?」
「ラムさん、さっきからそれしか言ってませんよ!?」
スバルと見事にハモったのは、混乱に痛む頭を抑えていたオットーだ。
聖域のゴタゴタが片付き、ようやく訪れた安寧に身を委ねていた矢先に、この事態。
一体、この友人はどれだけトラブルを起こすのが好きなのか。
ジトッとした目でオットーが睨めば、そんな思いを露ほども知らない彼はへニャリと笑って、
「なんだよ、オットー。そんな顔してー。てかお前、隈すげぇけど大丈夫か?」
「誰のせいだと思ってるんですか、誰のせいだと!!」
「えっ。ロズワール?」
「それはそうですけど、あんたのせいもありますからね!?」
朝からツッコミの絶えない状況にゲンナリするオットー、そのふわふわした灰色の頭をスバルはあけすけな笑顔と共に抱き締めてくる。
その美少女顔でいつも通りに抱き着いてこられると心臓に悪いのだが、そんなことを言ったって彼は不思議そうな顔をするだけだろう。
頭に柔らかい感触が当たるのを無の境地で受け入れるオットーの肩を、ガーフィールが心底哀れむ目をしながら叩いてくる。
非常に居た堪れない。
「つーかよォ。こういうのは、ロズワールとベアトリスの方が詳しいッだろ?何か分かッたりしねェのかァ?」
「……それがいくら調べても、ベティーには見当もつかなかったかしら。ロズワール、お前は何か分か…ロズワール?」
「…?辺境伯?」
渋面でロズワールを振り返ったベアトリスが、言葉を中断させる。
彼女の怪訝そうな顔に、オットーがスバルの腕から顔を上げて見てみれば、ロズワールは珍しく押し黙っていた。
その左右色違いの瞳には困惑でも怒りでも悲しみでもない、複雑な色が滲んでいる。
いつもの彼ならば、嬉々としてスバルを弄り倒してくる筈なのに、一体どうしたというのか。
「ロズワール?どうかしたの?」
「──。いいえーぇ、何でもありませんよーぉ。スバルくん。昨日は、何か気になることはなかったかぁーな?」
「え?いや、特に何もなかったと思うけど…。………」
話を逸らすように、ロズワールはスバルに話を振ってくる。
その態度に疑問を覚えつつ、スバルは昨日の出来事を思い出してみるが、やはり特段変わったことは無かったように思う。
一瞬、何か引っ掛かるモノがあったような気がしたが───。
「ふぅーむ……。取り敢えず、私の方でも調べてみようかぁーね。君にその姿でいられると、色々と困ったことになるからねーぇ。……ベアトリス、スバルくんをよろしく頼むよ」
「言われなくても、分かってるのよ」
スバルの感じた違和感を余所に、ロズワールはやけに真剣な声で呟きながら居間を後にした。
そのらしくない背中の後を追うラムを見送りながら、スバルはベアトリス自慢のドリルテールをビヨビヨと弄っていた。
───彼の言う「困ったこと」。
それが一体なんなのか、スバルが身をもって知ることになるのは、少し先のことである。
✕ ✕ ✕
───王都にて。
「ベア子、ベア子ー!見ろよ、あの花めっちゃ綺麗だぞ!エミリアたんに買ってこうぜ!」
「こら、スバル!あんまり一人で行動するんじゃないかしら!ああ、もう!待つかしら!」
幼子のようにはしゃぐスバルを短い足で追いかけながら、ベアトリスはそれはもう重たいため息を吐いていた。
『───彼の今の姿は、先代剣聖テレシア・ヴァン・アストレアと同じモノだ。間違っても、今代の剣聖たちに見られないように。面倒なことになるからね』
と、ロズワールに言われてエミリアから借りた認識阻害のローブを着せているが、奔放に駆け回るスバルの姿を見ていると、ちゃんと効果があるのか疑わしくなってくる。
最も、性悪さと趣味の悪さを除けば完璧な彼のことだから、ちゃんとローブは機能しているのだろうが。
「まったく……スバルは困った契約者なのよ」
誕生日が近いエミリアに渡す為のプレゼントを吟味しているスバル、その十人中十人が見惚れるような笑顔を目に留めながら、ベアトリスはもう一度ため息を落とす。
体の性別が変わるという異常事態が起きているにも関わらず、スバルの態度は1ミリも変化がない。
むしろ、いつもより騒がしさに拍車がかかっているような気がする。
ベアトリスたちなら、何とかできると思っているのだろうか。
こちらとしては、精神的にも体力的にも疲れが酷いというのに。
特にオットーなんかは、色々な意味で危なっかいスバルにげっそりとしていた。
(スバルのお願いで)王都に行くことになった際には、それはもう口うるさく、ベアトリスの言うことをしっかり聞くようにやら、大人しくしているようにやら、あまりはしたない真似はしないようにやら、変な人に着いていかないようになどと彼に注意していた。
どうにも最近の彼は、友人というよりも保護者のような振る舞いが増えてきているように思えるのは、ベアトリスの勘違いだろうか。
「──おや、ベアトリス様。こんな所で会うとは奇遇ですね」
「うにゃ!?」
こんな時にも仕事に忙殺されているオットーの半泣き顔を思い浮かべていたベアトリスは、突如後ろから響いた心地良いテノールに飛び上がる。
慌てて振り返れば、紫髪に切れ長の黄色の瞳が見目麗しい、美青年が悠然と立っていた。
微笑むだけで世の女性たちの心を射止めるであろう、この優美な騎士様の名はユリウス・ユークリウスだ。
彼は柔らかに微笑みながら、固まっているベアトリスに視線を合わせて、
「懇親会の時以来ですね。今日は、スバルと一緒ではないのですか?」
「すばっ!あ、ああ…ええと……。そ、そそそそれより、お前こそ、剣聖と剣鬼は見てないかしら!?」
「?ラインハルトとヴィルヘルム様ですか?」
エミリアに似たのか、嘘を吐くのが苦手なベアトリスは挙動不審そのものの動きで、ユリウスに掴みかかる。
丸っこい額に冷や汗を浮かべる彼女に、ユリウスは疑問符を頭に浮かべながら、フルフルと首を振り、
「いえ、見ていませんが……二人に何か用事がありましたか?よろしければ、私が詰所まで案内…」
「い、いいのよ!居ないならそれでいいかしら!!じゃ、じゃあベティーはそろそろ」
「おーい、ベア子ー!お待たせー……げっ、ユリウス」
ボロが出ないうちに大人しく帰ろう、そう考えていたベアトリスの元にスバルが駆け寄ってくる。「タイミングのいい男」という評価はどこに行ったのだろうか。
胸中でスバルを呪うベアトリスの隣で膝をついたままのユリウスは、耳聡いことにフードの少女が「ベア子」とベアトリスを呼んだことと、「げっ、ユリウス」と言われたことに片眉を上げている。
さすがは最優の騎士様といった所だが、さすがに、これだけで目の前の少女がスバルとは気づくまい。
───今ならまだ舞える。
今のうちにこの場を去ろうと、ベアトリスがスバルの腕を引こうとしたその時───。
「あ」
「あ」
神様の悪趣味な悪戯だろうか。
一際強く吹いた一陣の風が、彼が目深に被っていたフードを吹き飛ばしていた。
途端、フードの中から溢れ出す、燃え盛る炎のような赤髪にサファイアの如き青の双眸。
絶世と言っても差しささえのない美貌が、昼間の王都に白昼堂々曝け出された。
自然と周囲から集まってくる目とざわめきに思わず頭を抱えるベアトリス、さすがに見られたらまずい自覚があったのか、サッとフードを被り直そうとするスバル。
しかし、ユリウスが咄嗟に腕を掴んで止める。
その限界まで見開かれた黄色の瞳に、スバルは突然の暴挙を咎めるのも忘れて、冷や汗を流す。
「な、なんだよ?」
「もしや君は……アーデルハイトか?」
「あーでる…?」
「………。しくったのよ」
息がかかりそうな距離で顔を近付ける、美貌の騎士、これまた異様に整った顔立ちの少女、その間に挟まれるドリルテールの美幼女。世にも奇妙な三竦みの構図がここに誕生した。
ただでさえややこしい事態を、運命の神様の悪戯で更に面倒くさいモノに変えられてしまったベアトリスは、本日何度目かのため息を吐いたのだった。
───十分後、偶々通りがかったヴィルヘルムと、これまた偶々通りがかったラインハルトが見覚えのありすぎる美少女(スバル)に詰め寄るユリウスを目撃し、大騒ぎすることになるのだが、それはまた後のお話である。
✕ ✕ ✕
「……そっか、そんなことが。それは大変だったね、スバル」
「そうなんだよー。オットーがはしたないから胡座かくなとか、変な人には着いて行くなとかめっちゃうるさくってさぁ」
「…。そのオットーという人物も、随分と苦労しているようだね」
「全くなのよ。最近は、スバルのママかパパみたいになってきているかしら」
「ママ…」
──ユリウスの誤解を解いた後、スバル一行は途中で会ったラインハルトも混じえて、王都でも有名なレストランに着ていた。
豪奢なシャンデリアを天井から吊るしたこのレストランは、小市民なスバルは滅多に入らないような老舗の料理店である。
何でも創業百年になる貴族御用達の店であり、ユリウスもよく行く店なのだとか。
つくづく嫌味に事欠かない男である。
そんなスバルとは縁遠い店に、何故こんな謎の面子で入ることになったのか。
それには海よりも深く、山よりも高く、空よりも広大な理由がある。
「────」
目の前に次々と運ばれてくる、名前は全く分からないが、高いのだけは確実な料理の数々に手もつけず、先ほどからこちらを凝視し続けている老紳士──ヴィルヘルム。
彼こそが、スバルたちがこの店に入ることになった原因である。
スバルは、自分の隣でいつになく小さくなっているベアトリスとユリウス、そしてどこか引き攣った笑みを浮かべているラインハルトに視線をやってから、ヴィルヘルムに顔を戻す。
「あの、ヴィルヘルムさん」
「テ……何でしょう、スバル殿」
「本当に、ご馳走になってしまっていいんですか?やっぱり、俺が払った方が…」
「いえ、お気になさらず。私がやりたくて、やるのです。テレ……スバル殿が気にする必要はありません」
「そ、そうですか。では、ありがたくいただきます」
途中で何度もテレシアと言いかけていたが、自分がツッコんでいいことではないのは確かだったので、ベアトリスは真っ暗な目で運ばれてきた水を飲む。
───先代剣聖、テレシア・ヴァン・アストレア。
彼女は、ヴィルヘルムの亡妻にしてラインハルトの祖母だ。
そして、アストレア家の関係が拗れてしまった間接的な原因の一つである──らしい。
というものの、全部人づてに聞いた話な為、詳しいことは全く知らないのである。
強いて言うなら、ヴィルヘルムとラインハルトがのっぴきならない関係であることを、先ほど目にして知ったぐらいか。
なにはともあれ、何の因果かその先代剣聖と瓜二つの顔をしているらしい今のスバルを会わせたら、面倒どころじゃない事態に陥るのは、目に見えていた。
だから、ロズワールに言われた通りさっさと屋敷に帰ろうとしたのに。
絶対に会いたくなかった者たちと会うことになるだけでなく、まさか食事まで共にすることになるとは。
「おっ、このパスタみてぇなの美味ぇな!なんて名前なんだ?」
「それは…」
「ボロネーべという料理ですよ。何でも、この店で一番人気な料理なんだとか」
「へー!ヴィルヘルムさん、詳しいんですね!」
艶やかな花束のような笑顔を浮かべるスバルに、ヴィルヘルムはいつになくご機嫌に笑う。
途中で台詞を遮られたユリウスは、しょんぼりと肩を落とす。哀れである。
今のやり取りで、重たかった空気がもう一段階重くなったが、スバルはボロネーべなるモノにテンションが上がっていて気付いていない。
そして普段は冷静沈着なヴィルヘルムも、最愛の女性と悪魔合体したスバルのせいで正気を見失っている。
地獄の永久機関の完成である。
「なんだ三人共、元気ねぇじゃん。大丈夫か?」
久々に空気が読めなくなっているスバルは、ヴィルヘルムの炎天下よりも熱い視線をものともせず、梅雨空のテンションで水を啜る三人に首を傾げる。
途端、三人(特にユリウスとラインハルト)に氷点下の殺意が向けられ、それを受けたユリウスは青白い顔に笑顔を貼り付けながら髪を掻き上げる。
剣鬼から本気の殺気を向けられたせいか、常の優美さが完全に消え去っていたが、それを弄れる勇者はこの場にはいなかった。
「………そんなことはないさ。騎士たるもの、常に万全の状態でいられるよう、気を配っているからね」
「…僕も、心配いらないよ。それよりスバル、口元にソースが…」
「テレシ…スバル殿、口元にソースが。失礼します」
「ん、ありがとうございます、ヴィルヘルムさん!」
「どうぞ、好きなだけ食べてください」
「………」
今度は孫を押しのけ、紳士的に口元に付いたソースを拭ってやるヴィルヘルム、それを童女のようにきらきらしく笑いながら受け入れるスバル。
自身の祖父と友人が作り出す地獄の薔薇色空間の横で、ラインハルトはハンカチを片手にしょんぼりと肩を落とし、被害者の一人であるユリウスに同情の眼差しを向けられていた。
三人とそこまで関わりのないベアトリスですら居た堪れないのに、ヴィルヘルムの孫であるラインハルトや、その友人であるユリウスはもっと居た堪れないだろう。
ベアトリスも二人と同じように肩を落とすと、
「…お前たち、巻き込んで悪かったかしら」
「……いえ、ベアトリス様の謝ることではありませんよ」
「……こちらこそ、巻き込んで申し訳ありません。ユリウスも、悪かったね」
「…いや、私の方こそ」
「お前は謝るんじゃないかしら。もとを辿れば、ベティーたちの方が……」
「いえ、僕の方が……」
───数分後、どれだけ自分に責任があるのかを主張し合う、世にも奇妙な争いが発生することになり、途中からヴィルヘルムの惚気話に変わり、最後はスバルの鶴の一声でその場を収めることになるのだが、それは別のお話である。
余談だが、今回の一件でベアトリス、ユリウス、ラインハルトの間に友情が芽生え、よく三人で話している姿が目撃されるようになったとか。
【おまけ】
───見た目がテレシアとなったスバル、その事実を知った他の陣営の面々は、かたや爆笑し、かたや複雑そうな顔をし、かたや心配され、と三者三様の反応を受けたのだが、今回は割愛する。
陣営揃っての食事会、剣鬼との月下の恋話、ラジオ体操と、順調にプリステラを満喫していたエミリアたち。
一年ぶりの再会は温かさもほろ苦さもあったが、それでも楽しく、平和そのものだった。
だから──、
「そりゃないぜ、親父殿。今さら都合が───なんで、母さんが」
その平和を汚した、赤毛をした悪意の塊にスバルは怒りを抱いた。
短い赤毛に、精悍な顔立ちを赤ら顔と無精髭で台無しにした、中年の男。
無粋にも、冷え切っていた関係を修復しようとしていた祖父と孫(スバル視点)の邪魔をしてきた男は、何故かスバルの姿を目にした瞬間、顔を青褪めさせ何かを口走ったが、怒り心頭のスバルの耳には入っていない。
湧き上がる憤怒に急き立てられるままに、その場から立ち上がり、真っ向から男を睨みつける。
「 ──あんた、誰だよ」
「………ぁ、?」
「答えろ!あんたは誰だ!自分が何をしているのか、分かってんのか!? 」
赤と青で構成された美貌を怒りに染め上げる少女、その宝石の瞳に睨みつけられた男───ハインケルは直前までの勢いを削がれ、狼狽える。
なにせ、この花火のように華やかで、研がれた刃のように凛とした美貌の持ち主は───、
「……なんで、母さんがここに居るんだ…」
「…。は?何言って……」
「なんで……ッ、俺を呪ってるのか!?俺…俺への罰なのか!?これが、なんで…なんで…」
「ちょ、だ、大丈夫か…?」
その場で崩れ落ち、頭を抱えたまま動かなくなる男の様子に、毒気を抜かれたスバルはオロオロと彼の背中を擦ろうとするが、
「辞めろ、偽物が!!テメェは母さんじゃねえ!俺に近付くな!」
「─っ」
震える体に伸ばそうとした手を弾かれる。
手の甲に走った痛みに目を見開くスバル、その一連のやり取りを見ていたエミリアたちの瞳に萎みかけていた怒りが宿り、他の陣営の間にも剣呑な空気が走る。
しかし、他でもないスバルの手を弾いた男本人は、これまで以上に大きく肩を震わせ、死体色に顔を染め上げた。
「…ぁ、あああ、あ。違う、違う…そんな顔をさせたかった訳じゃ……ごめん、ごめん、母さん………」
「……俺は大丈夫だから。そ、それより、泣くなって。ほら、大丈夫だから」
ボロボロと子供のように涙を流す男の背中を擦りながら、結局スバルは男が泣き止むまで彼を慰めることになったのだった。
───ラインハルトにとっての祖母であり、ハインケルにとっての母であり、ヴィルヘルムにとっての妻である女性の姿をした少年が、泣き崩れる中年男性を慰める図。
見る者を何とも言えない気分にさせる光景を目に留めながら、フェルトはそっと他の者たちの様子を窺う。
見てみればラインハルトとヴィルヘルムを始めとした、殆どの面子が怒りと困惑と憐れみを混ぜこぜにした顔をしていた。
フェルトと同じく、反応に困っているらしい。
そんな中で、死んだ魚のような目をしている、全身を緑で固めた内政官の青年と、金色のドリルテールに派手なドレスを着込んだ幼女がいた。
歴戦の兵のような目つきから、何となくこれまでの二人の苦労を悟ったフェルトは、静かに二人の肩を叩いて、
「……兄ちゃんたち、苦労してんだな」
「………分かりますか、フェルト様」
「………早く、スバルには元の姿に戻ってほしいのよ」
三人揃って、重苦しいため息を吐いたのだった。
───その後、プリステラで起きた魔女教徒との戦い。
その戦い以降、『無駄飯喰らい』と悪名高い副団長が、急に真面目になりだしたと騎士団内でまことしやかに囁かれることとなった。
なんでも、その背景には『幼女使い』という名で有名な、かの英雄ナツキ・スバルが関わっているとか。
その噂を耳にした、とある武闘派内政官と大精霊は、またもや胃を痛めることとなったのだが、それを語るのは蛇足であろう。
なにはともあれ、スバル少年は今日も今日とて大好きな少女の為に、この異世界の片隅で奔走し続けている。
コメント
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**寺島あおいです🤍** ベアトリスの「おはよう、ベア子!」で確定する気づきの流れがもう最高でした。そしてヴィルヘルムとの食事会…あの口元のソースを拭うシーン、胸がぎゅっとなりましたね。「地獄の永久機関」という表現に笑いながらも、すごく切なくて。テレシアの面影を宿したスバルに、それぞれの想いが重なる感じが丁寧に描かれていて、一気に引き込まれました。連載、楽しみにしています🌷