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何時も通りの日を送れると思って居た。
何時も通り一緒に起きて。何時も通り一緒にご飯を食べて。何時も通り出勤して。何時も通り一緒に寝る。其れなのに…。
「おい、早く起きろ太宰。」
中也の声がする。
「後五分~~。」
「駄目だ。」
「えー。未だ寝たい~。」
結局叩き起こされ、リビングに一緒に向かった。机には朝食が置いて在った。
「頂きます。」
「おう。」
見た目の通り凄く美味しい。
…あ、先刻駄々捏ねてた所為で時間が無いや。中也に何云われるか解らないし、早く食べて探偵社行こう。
「御馳走様でした。探偵社行ってくるね。」
「行ってらっしゃい。」
「御早う諸君!」
「遅いぞ太宰!十七秒の遅刻だ!」
「相変わらず細かいねぇ。」
そんなこんなでもう夕方だ。後二時間位で帰れるかな。そう思って居ると私の電話が鳴った。
…え?森さん?
「…もしもし。」
『太宰君!今直ぐポートマフィアに来て呉れないかい!?』
「何故です?」
『中也君が』
『撃たれて意識を失った。』
私は返事をする依り先に探偵社を飛び出して居た。
ポートマフィアに着いて、病室に案内される。其処には寝台に横たわる中也の姿。今日は十二月二十四日。
何かの冗談だろうか。朝迄あんなに元気だったのに。何時も通り笑って居たのに。如何して?如何してこんな痛々しい姿に?
病室には私と森さん、紅葉さんと…中也。
「ちゅうや…。」
「太宰君…中也君は」
「ねぇ、中也、目覚ましてよ…。」
「太宰君…。」
「鴎外殿、今はそっとして置いて遣ったら如何じゃ…。」
「…そう、だね…。」
二人が出て行ったのを、私は直ぐには気付かなかった。だって、だって…。
「ねぇ、中也?冗談でしょ?」
「…」
「何か云ってよ…何時もみたいにさ…。」
「…」
返事は無い。
「此の侭死んじゃわないよね…?」
「…」
心臓の音が訊こえそうな程静かな病室。其の静けさを破ったのは私の携帯電話だった。今度は誰だろう。
「もしもし。」
『太宰。』
乱歩さんからだった。
『一週間休みをあげるよ。素敵帽子君と一緒に居てあげてね。』
乱歩さんはそう云うと直ぐに電話を切った。一週間…か。何か意図があったのかな。そんな事依り、中也は?
私は近くの椅子に座った。
「ねぇ、中也、何が有ったのさ。君がこんな有り様に成るなんて。」
「…」
…明日、森さんに訊こうかな。
此処に来てからどの位経っただろうか。先刻破られた静けさが又戻って来た。ふと、中也の顔を見た。
此の侭死んで仕舞ったら如何しよう。
もう一緒に笑えないのかな。
折角光を見付けたと云うのに。
又暗闇の中を彷徨わなければいけないのだろうか。
「う…ぁ…」
自然と涙が溢れて来る。
怖い。恐い。中也を失う事が。
「うあぁぁぁぁっ!!」
泣いても中也は帰っては来ない。解って居るのに。如何しても溢れて来る涙を制御出来ない。
「なんで、なんでっ!!」
何故中也がこんな目に遭わなければ為らない?幾ら考えても解らない。誰か教えて呉れ。
何時もこうだ。幸せに成ろうとすると必ず其の幸せを摘み取られる。
「あ”あ”ぁぁぁっ!!」
私は唯泣き叫ぶ事しか出来なかった。
泣き叫ぶ事しか出来ない自分が憎い。
助けてあげられなかった自分が憎い。
呑気に探偵社で過ごして居た自分が憎い。
こんなに中也が危険な状態なのに、生きて居る自分が憎い。
そして、もう一度中也と話したい。中也と生きたい。此の願いが叶う時は来るのだろうか。嗚呼、神様…。本当に神様が居るのなら。お願いだ。中也を助けて呉れ。私は如何成ったって善いから。
何時の間にか泣き疲れて寝て仕舞って居た様だ。外は太陽が昇って明るく成って居る。
私の心は暗いのに。
私が起きても中也は寝て居る。何時もなら中也の方が早く起きてるのにな。
「御早う中也。」
「…」
昨日に引き続き返事は無い。
すると叩敲音が室内に響いた。
「失礼するよ。」
森さんだ。
「太宰君に未だ説明して居なかったからね。」
嗚呼、そう云えば訊こうと思ってたな。
「一寸来て呉れるかい。」
私は云われるが侭に着いて行く。
「実はこの前の任務で、中也君の部下が撃たれそうに成ってね。其れに気付いた中也君が駆け付けたけれど、少し異能を発動するのが遅れて仕舞ったみたいでね。」
矢っ張りか。そんな様な事だとは思って居た。
「…そうですか。」
「一命は取り留めたけれど…目覚めるかは解らない。目覚めたとしても後遺症が残るかも知れない。」
「私は中也の傍に居れれば十分です。…欲を云えば目が覚めて欲しいですけどね。」
「そうかい。福沢殿に訊いたよ。一週間休みなんだってね。」
「はい。」
「其れなら一週間、中也君の傍に居てあげてね。」
「云われなくてもそうする心算です。」
「なら善いんだ。其れじゃあもう戻って大丈夫だよ。何か有ったら云ってね。」
「失礼します。」
早く中也の処に戻ろう。
「訊いたよ中也、部下を護ったらしいじゃないか。」
「…」
「本当、マフィアなのに優し過ぎるよ。君は。」
「…」
…そう云えばお腹空いたな。昨日の夜から何も食べて無いや。何か購って来よう。
「ご飯購いに行って来るね。」
「…」
変な感覚だな。
つい二人分購いそうに成って仕舞った。癖は中々抜けないな。
病室だと食べれないから、此処で食べて行こう。
「頂きます。」
味がしない。矢っ張り中也の料理が一番美味しいな。でも食べないとな。
「御馳走様でした。」
さっさと塵捨てて戻ろう。
「只今。」
「…」
「矢っ張り君の料理が一番美味しいよ。又作ってね。」
「…」
「蟹炒飯とか又食べたいな。お酒も又飲もうね。直ぐ酔わないでね?」
「…」
つい何時もの様に話し掛けてしまう。もう彼の声は訊けないのかな。
…否、諦めちゃ駄目だな。絶対に中也は戻って来る。
「又君の声訊かせないと赦さないからね。」
「…」
中也が目覚める迄此処に住もうかな。等と考え乍、家に帰る準備をする。
「又来るね。」
「…」
「只今。」
自分の声が家の中に響く。
あーあ。
寝る支度をしたは善い物の、寝れる気がしない。
「中也ぁぁ~~。」
寝台に入ったのは二十二時。今は三時。一生寝れる気がしないよ。本当に。
中也の事を思い出す度に涙が溢れそうに成る。
「中也…。」
結局私が眠れたのは五時頃だった。
私を起こしたのは中也では無く、携帯電話だった。こんな朝っぱらから誰?
「もしもし…。」
『太宰君!早く来て呉れるかい!』
今度は何だろう。中也の事かな。其れ以外の事だったらぶっ飛ばしてやる。
「善く来て呉れたね、太宰君。」
「用件は?」
「単刀直入に云うと、中也君の目が覚めた。」
「なっ!?」
私は話を最後まで訊かず走り出しそうに成ったが、森さんに止められた。
「目は覚めた、でも…」
「記憶が無くなって居るんだ。」
「…はい?」
「中也君の話を訊いた感じだと、中也君自身の事や中也君と関わった人達の記憶が無くなって仕舞った様だ。」
「…成程。」
「…其れでも、逢いたいかい?」
何故そんな事を訊くのだろう。
「勿論です。」
「其れじゃあ、行こうか。」
「中也君、入って善いかな?」
『どうぞ。』
扉を開け、病室に入る。
「体調は大丈夫かな?」
「はい。えーっと、後ろの方は…?」
「…。」
此の人は本当に中也なのだろうか。全然様子が違う。解って居た事だけど。
「あの…?」
「あ、嗚呼、私は太宰治だ。」
「太宰さん、ですね。よろしくお願いします。俺は中原中也です。」
「…よろしくね。」
嗚呼、此の声、懐かしい。でも…。
「えっ、何で泣いてるんです…?」
「え…。」
「…太宰君、一旦外に出ようか。一寸待っててね、中也君。」
「太宰君、大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です…。」
「まぁ、矢っ張りこう成るよね。落ち着いたら、又中也君の処に行こうか。」
「はい…。」
十分位経ち、漸く落ち着いた。
「じゃあ中也君の処に行こうか。」
「はい。」
「あ、お帰りなさい。大丈夫でしたか?」
「うん、大丈夫だよ。」
「却説、漸く色々話が出来るね。」
森さんが話を始める。
「先刻云って無い事は…。中也君が太宰君と恋人だった事かな?」
「えっ。」
「…。」
かなり驚いて居る様だ。無理も無いか。
「此処からは太宰君に話して貰おうかな。中也君は気まずいと思うけれど、太宰君は中也君と居たいだろうからね。」
「は、はい…。判りました…。」
森さんが病室を後にする。
話をするとは云ったけど…。森さんめ、行成恋人だったって云われても困惑するに決まってるじゃん。莫迦じゃないの。
「行成恋人だったって云われても困惑するよね。」
「は、はい…。」
「まぁでも、恋人だったのは本当だよ。」
「そうなんですね。」
敬語なの違和感有るな。
「敬語じゃなくて善いよ。」
「え?」
「違和感が凄いの〜。」
「あ、判っ…た。」
「別に無理に敬語崩さなくても善いからね。」
「うん。」
「恋人だった時にね__」
話し始めてからどれ位経ったんだろう。二時間位かな?
「そんな事が有ったんだな。」
「そうそう。それで…。…如何して笑ってるんだい?」
「否、愉しいなって思ってな。」
「え…。」
一瞬時が止まったかと思う位には固まって居たと思う。
「なんかお前と話してると安心するんだ。話して呉れてる事も本当なんだろうなって思う。」
泣いちゃ駄目だ。
「…そっか。他にも色々有るけど、訊くかい?」
「訊きたい!」
「じゃあ次は__」
『君達何時まで話して居るんだい?』
扉の外から声がした。又色々話していたら十九時に成って居た様だ。森さんに声を掛けられて初めて気付いた。
「もうこんな時間か。又来るね。」
「又な!」
…。
「久々に中也君と話してみて如何だった?」
「愉しかったです。…でも、何かが違う。」
「…そっか。」
愉しい筈なのに。
愉しい筈なのに、何かが違う。此れじゃない。
「そう云えば太宰君。中也君に異能力の事は云ったかい?」
「一応。」
「中也君が異能力を制御する方法を忘れて居る可能性は否めない。」
「…つまり?」
「中也君の異能力が暴走するかも知れない。」
矢っ張りか。
「万が一に備え、中也君の記憶が戻る迄、太宰君には中也君の傍に居て貰いたい。」
別に中也と居られるなら何でも良いかな。
「判りました。」
「有難う。今日は一旦帰って、準備をして欲しい」
「はい。」
「其れじゃあ又明日ね。」
「…。」
私は何も云わずポートマフィアを後にした。
準備って云っても何をすれば?
「訊いとけば善かった。」
取り敢えず中也が好きだった物でも持って行こうかな。中也の部屋行こう。
中也の部屋には見慣れた物が沢山在った。殆ど私が贈呈品した物じゃん。可愛い。
「あっ、是は…。」
お揃いにしたキーホルダーだ。持って行こう。後は中也が何時も抱っこしてた縫いぐるみとかかな。
何を持って行こうか捜せば捜す程、中也との想い出が蘇って来る。
嗚呼、懐かしいな。
久々に眠れた気がする。却説、中也の処に行こう。
「やぁ、太宰君。」
「どうも。」
「中也君なら何時も通り病室に居るよ。」
「…。」
早く中也の処に行こう。
「やぁ中也。」
「あ、太宰さん!」
「家から色々持って来てみたよ。」
「わぁ…!」
中也の目がキラキラと輝く。何も知らない、好奇心旺盛な幼子の様な目。可愛いけど、何だか淋しい。
「先ず一つ目~。お揃いのキーホルダー!」
「可愛い…!」
「私が此の青いキーホルダー、中也が赤いキーホルダーを付けて居たんだよ。」
「成程…。」
「後は此の縫いぐるみとかかな。」
「…。」
「中也?」
目を見開き固まる中也。如何したんだろう。
「…懐かしい。」
「え?」
急に、何で…?
「あ、否、何でもない。」
「あ、そっ…か。」
此の事森さんに後で報告しよう。今は中也と居たい。
「此の縫いぐるみ持ってなよ。」
「うん!」
もふもふしてる。可愛いな。
「他には何が有るんだ?」
「んーと、後はね__」
時間が経つのが早い。もう朝の一時だ。
未だ朝日と中也は寝て居る。
「少し森さんの処に行って来るね。」
「…。」
中也から離れるのは厭だけど、森さんに報告しに行かないと。面倒臭い。
私は中也を起こさない様に病室を出た。
「太宰君かい。何か進展は有ったかな?」
「縫いぐるみを見て、懐かしいって云ってた位ですかね。」
「ふむ…成程ね。其れでも十分過ぎる進展だ。そしてもう一つ。」
「記憶を戻す薬の作り方が判ったよ。」
「…え?」
「でも完成する迄に三日は掛かる。」
「三日…?…本当に、三日で完成するんですね?」
「嗚呼、そうだよ。」
三日なんて、直ぐじゃないか。中也の記憶が戻るなら、其の位何ともない。
「本当に記憶が戻るんですか?」
「…嗚呼。」
何故、今間が有ったの?
「…本当の事を云って下さい。」
「…戻らない可能性も有る。何なら、更に症状が悪化する可能性だって有る。」
「…。」
病状が、悪化…。
「其れ以外の方法は無いんですか?」
「…無い。選択は君に任せるよ。」
…そっか。でも、可能性が有るなら。
「判りました。他に選択肢なんか無いですし、お願いします。」
「嗚呼、其れじゃあ三日後に薬を渡すから、受け取りに来てね。」
「はい。」
森さんに頼るなんて厭だけど、此処は任せるしか無いな。
待っててね、中也。
病室で一緒に寝る事には成ったけど、中々寝れない。もう三時だし。外見てようかな。そう思って椅子から立ち、窓に近付く。すると、
「ぅ”…。」
唐突に声が聞こえた。何だろう。
「え、中也…!?」
振り返ると、何かに悶え苦しみ呼吸が荒く成って居る中也の躰に模様が。真逆、異能の暴走!?
急いで駆け寄り、中也の躰に触る。すると模様が消えて行き、呼吸も落ち着いて来た。
「善かった…。」
異能の暴走か。早く森さんに報告しよう。
「森さんっ!!」
首領室の扉を勢い良く開ける。
「一寸太宰君…もう少し静かに開けて呉れないかい?」
「中也の異能が暴走した!」
「なっ!?」
かなり驚いて居る様だ。そりゃそうか。私も未だ呼吸が整って居ない。
「中也の躰に模様が出て来て、凄く苦しそうだった。」
「矢っ張り暴走したかい…。中也君は無事かい?」
「先刻無効化したから今は大丈夫。早く薬を仕上げて下さい!」
「嗚呼、判ったよ。太宰君は引き続き中也君の様子を見て居て呉れるかい。」
「云われなくても。」
はぁ…焦った。でも無事で善かった。
「…。」
中也も寝てるし、暫くは大丈夫かな。でも油断は出来ない。ちゃんと傍に居よう。
あ、もう七時だ。
「ん…。」
あ、中也起きた。
「御早う中也。」
「御早う…。」
「朝御飯置いといて呉れたみたいだから、食べようか。自分で食べられるよね?」
「うん!」
本当、幼いな。
「頂きます。」
美味しそうに食べるなぁ。そんな事を思い乍中也を眺めて居ると、何時の間にか二十分位経って居た様だ。
「御馳走様でした。」
中也の塵を片付け、中也に話し掛ける。
「そう云えば明日は、少し外に出てみようか。」
「善いの?」
「うん、森さんには許可を貰ってるよ。でも今日は此処でお話しようか。」
「うん!」
中也に話したい事は沢山有るから、話題は一生尽きない。
「今日は私がお昼に料理を作ってみようかな~。」
「…。」
何故か中也に滅茶苦茶見つめられる。
「…如何したの?」
「なんか、太宰さんに料理を作らせちゃ駄目な気がする。」
中也には未だ私が料理した時の話はして居ない。
記憶は無くても、感覚は残ってる様だ。此の前の縫いぐるみの件も同じ感じだったのだろう。
「そっかぁ。じゃあお昼は又購った奴食べよっか。」
「うんうん。」
早く薬出来ないかな。此の子は中也だけど、何か違う。愉しいけど、何か違う。でも、今は此の声を訊いて居たい。
「明日のお出掛け愉しみ。」
待ちに待ったお出掛けの日だ。浮かれて中也から目を離さない様にしないとな。
「早く行こうぜ!」
「はいはい、一寸待ってね。」
普段は私が色んな処に連れ回して居たんだけどな。
…よし、準備出来たし行こう。
「お~!」
目輝いてるなぁ。
あ、クレープ売ってる。
「ねぇねぇ中也、クレープ購わない?」
「購う!」
中也は好きだった苺猪口選びそうだなぁ。
私は正直要らないな。
矢っ張り中也は苺猪口を選んだ。クレープを頬張る中也。私は目の前に広がる空を眺めて居た。
良い天気とは云えないな。
「是美味いけど食うか?」
「私は大丈夫だよ。」
「え~。」
明らかにシュンとした。一寸心が痛む。
「や、矢っ張り一口貰おうかな。」
「本当か!?」
にっこにこだ。顔の周りにキラキラが飛んでそうな程。本当に判り易い。
「如何だ?美味いか?」
「うん。美味しいよ。」
本当は美味しくは無い。味がしないから。
「なら善かった!」
中也の嬉しそうな顔を見ると、何故だか此方迄笑顔に成る。不思議だな。
「そろそろ次の処行こっか。」
「うん!」
何時の間にか空は晴れて居た。
其の後、二人でよく行ったレストランで食事をした。
私はあまり食欲が湧かなかった為、凄く軽い物を頼んだ。中也は何時も此処で食べて居た物を頼んで居た。
「美味い!」
「善かったね~。」
「うん!!」
滅茶苦茶美味しそうに食べる。可愛い。何故中也ってこんな可愛いんだろう。
…早く記憶戻らないかな。
「御馳走様でした!」
何時の間にか食べ終わって居た様だ。
お会計を済ませ、又二人で歩いて居た時の事。乱歩さんに偶然会った。
「やぁ太宰。素敵帽子君の調子は如何だい?」
「記憶は戻って居ませんね。」
中也は私の横で乱歩さんに貰ったお菓子を頬張って居る。
あ、そうだ。と何かを思い出した乱歩さん。
「是あげる。」
植木鉢を貰った。
「鈴蘭の蕾。此の侭病室に置いときなよ。」
鈴蘭は春に咲く筈。今は冬真っ只中だ。如何して?
「あ、此の侭だと咲かないから。ねぇ素敵帽…じゃなくて、中原中也君。」
「はい?」
「是、病室に戻ったら植木鉢に植えてね。あ、太宰は触っちゃ駄目だぞ。」
不思議に思い乍、私達は其れを承諾した。
其の後私達は病室に戻り、中也は植木鉢に乱歩さんに貰った肥料の様な物を植えた。もう十六時。夕飯を食べたり、雑談したりしてたらもう二十一時。
そう云えば、明日は薬が完成する日。待ち遠しい。
今日は薬が完成する日。そう云えば、今日は中也が料理をするって云ってたな。森さんには許可貰ってるらしいし。中也の手料理何て久し振り。一寸楽しみ。御昼に成ったら台所行こう。
台所で料理をする中也を私は見守って居る。異能が暴走するかも知れないと云う理由も有るけれど、普通に中也を眺めてたい。
「えーっと、是は此の位入れれば善いか。」
慣れた手付きで着々と料理を進めて居る。何か昨日迄幼子みたいだったのに、今日はお母さんみたい。
「お母さ~ん。」
巫山戯てそう呼んでみる。
「俺は親じゃないぞ。」
「だってお母さんみたいなんだもの。」
「そうかよ。」
呆れられた気がする。
あ、そろそろ料理完成するかな?
「味の素って何処だったっけな…。は?何で味の素…?」
「ふふっ。」
つい笑ってしまった。私に料理を作って居た時の癖が抜けて居ない様だ。困惑して居る中也も中々に可愛くて面白い。
「まぁ…善いか。出来たぞ~。」
「はーい。」
私は席に着く。
「頂きます。」
美味しい。中也の味だ。懐かしい。久々に味を感じた。
「御馳走様でした。美味しかったよ。」
「えへへ、なら善かった。」
えへへ?えへへって云った??え、可愛い。
つい心の声が漏れそうに成ったが、何とか抑えた。私達は皿を片付け、部屋に戻った。
時間に成る迄家から持って来たアルバムでも見て様かな。中也も興味有るみたいだし。
「是何の写真だ?」
「是はね__」
想い出を振り返って居たらもう十九時に成って居た。。早いな。想い出も振り返れたし、森さんの処行こう。
「一寸森さんの処行って来るね。」
「うん!」
「森さん薬出来た!?」
「だからもう少し静かに開けて呉れないかい?薬は出来てるよ。行こうか。」
嗚呼、漸くだ。
「中也君失礼するよ。」
「如何かしましたか?」
「急だけど、此の薬を飲んで呉れるかい?」
「あ、はい!」
何も疑わず飲む中也。相手が森さんだからとは云え、流石に一寸心配に成る。
薬を飲んだら、直ぐに中也は寝て仕舞った。少し、苦しそう。
「明日の朝如何成るかな。太宰君、後は任せたよ。」
「はい。」
中也を任された筈が、今迄の疲れが一気に押し寄せ、何時の間にか寝て仕舞った。
「早く起きろ、太宰。」
え?
私は其の声で一気に目が覚めた。
「何時迄寝てんだよ寝坊助。」
「中、也…?」
「応。…御早う。」
「御早う!もう、寝坊助は中也だよ!」
涙が溢れそうだ。
「まぁ、そうだな。」
中也は笑って云う。
「う、うあぁぁぁっ!!」
私は我慢出来ず、つい泣いて仕舞った。でも、仕方が無いと思う。
中也を見ると、中也の目にも涙が。
其の侭二人で暫く泣いて居た。
そう云えば、今日は出社する日だったな。そう中也に伝えると、一緒に行きたいって云う物だから、落ち着いたら森さんに許可を貰って一緒に行ったよ。まぁ、終わったら病室には戻るけどね。
出社すると、出迎えて呉れたのは乱歩さんと社長。
「あ、矢っ張り戻ったんだね~。」
乱歩さんは云う。
「今日の太宰の業務は探偵社の皆に会う事だ。仕事を終えたら帰って善い。幹部殿も一緒に行くと善い。」
社長…。
本当、暖かいな、探偵社は。
「判りました。行こう、中也」
「応。」
顔を出すと、皆驚いた顔をする。でも直ぐ笑顔に成り、中也の回復を祝福して呉れた。
あっと云う間に業務は終わり、帰宅する事に。帰宅って云っても病室にだけど。
「帰ろっか。」
「そうだな。」
社長と乱歩さんに挨拶し、私達は探偵社を後にした。
「そろそろ鈴蘭咲いたかな~。病室に戻ったら、太宰は僕が態々鈴蘭をあげた意味を理解するだろうな。」
病室に戻って来た。
「改めて、御早う。そしてお帰り。中也!」
「御早う、そして只今!」
抱き合う私達の直ぐ近くに、鈴蘭が咲いて居る。
嗚呼、そう云う事か。解りましたよ、乱歩さん。本当に優しいな、貴方は。
鈴蘭の花言葉は、
完
皆さん明けましておめでとう御座います。無事に新年を迎える事ができました。
さて、今回の小説は如何でしたでしょうか。たまには本格的な小説も良いかなと思い、この書き方にしました。
今回の小説は、とある動画に鈴蘭の花言葉が載って居り、それを見たのが始まりでした。クリスマスに何か出す予定では有ったんですが、何を出そうか決めて居なかった為、「あ、これ良いじゃん!」と成り、執筆しました。初めてノベルの方で書いた為、最初は昨日が全然分からず苦戦しました。でももう慣れました。
十二月十六日から執筆を始め、書き終わったのが十二月十九日です。思って居たより掛かって焦りました。明けましておめでとう御座いますとか書いてますが、十二月十九日に書いて居ます。
一話書くのに短いと三十分、長いと一時間掛かりました。皆さん小説を書く時は十分に時間を取りましょう。地獄を見ます。未だ書き終わったのは物語だけです。これからサムネと撮影裏も書きます。間に合う気がしません。
そして、もう気付いた人も居ると思いますが、雑談の時に言って居た「サンタに成る。」とはこの事です。皆さんに小説をプレゼントしようと考えて居ました。喜んで頂けましたら幸いです。
千文字超えのお話が殆どでしたが、それでも飽きずに最後まで読んで下さった方、本当に有難う御座いました。今数えたら全部で九千四百文字を超えて居ました。あとがきも含めたら一万文字行ってます。長い。
質問等有ればコメントで。自分はこれから撮影裏を書くので、失礼します。