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クロノアさんと電話した次の日
俺はクロノアさんとデートするため、待ち合わせ場所に来ていた
「おっまたー」
クロノアさんが手を挙げて遠くから歩いてくる
「てか、何なんですか……『デートしましょう』って……」
「さっきまでしにがみ君とゲームしててね。それで、ゲームに負けた方がトラゾーと明日デートするっていうことだったんだよ」
「なんでそんな罰ゲーム……てか、俺を巻き込まないでくださいよ!」
「お酒入ってたからね〜ごめんね〜」
おい、あの時クロノアさんお酒入ってたのかよ……、通りで少しふわふわした感じの声だなぁと思ったよ……
「あ、思い出しちゃ駄目だよ!意外と恥ずかったんだし……」
といい、口もとでバッテンを手で作る
そういうとこだよ。クロノアさんが可愛い担当って言われてる理由。
「さーてと、どっか食べに行く?トラゾー何食べたい?」
「えっ、と、俺は別に……」
「じゃ、どっかテキトーな店入っちゃおうか」
おい、プランも何もないのか。
と思いながらも、たまにはこういうのもいいなと思い、クロノアさんの後をついて行った
暫くして、クロノアさんが立ち止まり、
「ここの料理食べよ」と言い出したので、
少しこじんまりとしたカフェに入った。
この人、本当に気儘な人だな。憎めないところが少し悔しい。
カラン カラン と軽快な音を鳴らしながら ドアを開けると、外観とは裏腹にお洒落な雰囲気が目に飛び込んできた。
「いらっしゃいませ。お二人様でよろしいでしょうか?」
「はい。」
「こちらへどうぞ」
店員さんが店の奥へ案内してくれる。
案内されたのは相席の2名用の机だった
「ふぅ。昼ごはんまだなんだよね〜とりあえず、俺はコーヒーと……、このホットサンドセット頼も〜トラゾーは?」
「あ、じゃあ、同じ物を」
「おけー。店員さん呼ぶね〜」
呼び鈴を鳴らし、「コーヒー2つと、ホットサンドセット2つください」とクロノアさんが慣れた手つきで注文を完了する。
「あ…、なんか、全部任せてしまってすみません……、」
「いやいや!トラゾーを独り占めできてサイコ~な気分」
ニヤリとこちらを見る。
そんな俺と話したかったことがあるのか?
「そーだ!ぺいんととしにがみ君に自慢しちゃおー!トラゾー!一緒に写真とろー」
「えッ!?いやいやいやいや!?クロノアさん1人で映った方が写真映え…、」
「はい、ポーズ」
いきなり過ぎだろ!?
クロノアさんって時々グイグイ行くとこあるよな……
「ふふん。やっぱ俺が一番トラゾーと仲いいもんね〜」
「はぁ…、?」
「おまたせしました〜。コーヒーとホットサンドセットです」
あれやこれやでもう料理が運ばれてきた
「うわー!美味しそ〜」
「ッ!このコーヒー美味しいですね!深みがある……」
「皆と来たかったなぁ……、」
皆……、それは日常組の皆のことだろう。
ふと、この間ぺいんととのやりとりを思い出す
「あの、クロノアさん。クロノアさんは、俺のこと、日常組だと思いますか?」
「え?『日常組だと思う』って……?
だって、トラゾーは日常組の一員でしょ?」
さも、当たり前のように。息をするのが当たり前というように応えた
「……、でも、俺、何も無いんです」
クロノアさんはコーヒーを飲みながら俺の話に耳を傾けてくれる。
「キャラもなければ、面白さもない。上手く喋れないし、ゲームさえも上手くない」
俺には何もない。
ぺいんとには面白さと編集力がある。
しにがみさんにはユニークさと、データパックを作る才能がある
クロノアさんにはイケメンというキャラと、場を和ませる才能がある。
俺には……、
何があるの?
「最初は皆、そんな感じだよ」
俺の話を聞き終わった後、クロノアさんは、コーヒーに映る自分を見ながら言った
「キャラなんてなくて、才能もない。
……、ように見えるだけ」
「見えるだけ?」
「本当は、全員才能があって、それを見つけてないだけだよ」
ニコッと俺に笑顔を見せてくれる
「だから、トラゾーは『日常組』っていう居場所で、そういうのを探していけば良いんじゃない?」
「探す……、?」
思ってもいなかった。自分にも才能があるかもしれない、って
でも、今まで生きてきた中で、才能なんてモノ……、見つからなかったし……、
「大丈夫。ゆっくり探していこう。だから、色々なことに挑戦してみようよ!日常組の皆と一緒に!」
俺の心を見たかのようにクロノアさんはそう付け加える
「俺も探すこと、手伝うよ」
その時のクロノアさんは、一番星のように、綺麗だった。
でも、俺は一番星に追いつけるのだろうか
『俺には、何もないだろ』
誰かが耳元で囁いた……、ような気がした
考えてることをクロノアさんに悟られたくなくて、咄嗟に 冷めきってしまったコーヒーに口を付ける。
何故だろう。最初はとても美味しいと思っていたのに、苦味だけが口の中に残っていった