テラーノベル
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「……おい、マジで言ってるのかお前ら」東西連合軍へ三億魔導ゴールドの請求書を叩きつけ、ハンスに集金の手配を済ませた直後。
魔王城の執務室のドアがバァン!と盛大に蹴破られ、なだれ込んできた三人組を前に、俺は本日何度目かわからない盛大な欠伸を途中で止めた。
真っ赤な顔で氷の結晶をバチバチ散らすセリス。
両拳にバチバチと紫電を纏わせ、目を三角にしているエレナ。
そして、両手に爆縮の火花を散らしながら涙目で睨みつけてくるシャーロット。
そして、俺のすぐ隣には、苦めのコーヒーを淹れ終え、ごく自然な動作で俺の腕に寄り添っている風のシエル。
「クロード! ちょっとどういうことよそれッ!?」
セリスが机に両手を叩きつけ、身を乗り出してきた。
「戦場から戻ってきたと思ったら、なんでシエルがアンタの隣に当然みたいな顔で収まってるのよ! 『正式に結婚する』って噂、本当なの!? ねぇ!?」
「そうだよクロード! アタシを差し置いてシエルを選ぶなんて聞いてないんだけど!?」
エレナが拳を振り回して地だんだを踏む。
「結婚って何!? 挙式はいつなの!? **っていうか、子どもは何人欲しくなったのよッ!!**」
「そうよクロード! 私の『全て』をあげるって言ったじゃない! なんで静かに抜け駆けしたシエルなのよーっ! 子どもの名前はもう決めたの!? 爆発的に可愛い子にするつもり!?」
シャーロットまで大騒ぎで詰め寄ってくる。
「……っ~」
頭が痛くなってきた。
東西の八千の軍勢を物理法則と化学兵器で完封するより、この騒々しい三人組の追及を裁く方が何倍もMPを削られる。
俺は寄り添うシエルの頭を雑に撫でつつ、冷え切った缶コーヒーの底をデスクにコトンと置いた。
「……子どもが何人だの、挙式がいつだの……よりによって、こんなタイミングでほじくり返してくるな」
俺は深々と不快な溜息を吐き出し、盛大に欠伸を噛み殺した。
「そんな暇はない」
「なっ……! 暇がないってどういうことよ!?」
「誤魔化すなーっ!」
騒ぐヒロイン共をスルーし、俺はデスクの上に一枚の極秘暗号書類と、ハンスから届いたばかりの戦術端末を広げた。
「東のシノノメと西のテラノピアに三億ゴールドの請求書を叩きつけたばかりだ。奴らが大人しく支払うか、あるいは裏で人間界の特務機関と手を組んで悪あがきをしてくるか……今が一番重要な『資金回収と防衛線の再構築』の局面なんだよ」
俺は消音拳銃の弾倉(マガジン)をカチリと装填し、三人を冷ややかに見渡した。
「シエルは俺の戦闘スタイルを一番理解していて、静音・遮蔽・情報撹乱のサポートが完璧にできる。だから隣に置いている。文句があるなら、ハンスからの最新兵器の納品手配と、東西の賠償金取り立て業務を全部代わってから言え」
「うぐっ……! か、確信犯的に書類仕事と軍事処理で煙に巻こうとしてるわねバカクロード!」
セリスが悔しそうに地脚を踏む。
「……シエルは、クロードの相棒。……子どもは、とりあえず静かな子が二人くらいでいい」
シエルが俺の腕に頬を寄せながら、ポツリと、しかし決定的な追撃を静かに叩き込んだ。
「~っっ!? シエル言った! 今さらっと二人って言ったわよねこの風っ娘ーっ!?」
「ズルい! アタシだってクロードの子どもなら三人くらい……っ、じゃなくて!」
「私だって爆発的に子だくさんな家庭を……ッ!」
大混乱に陥り、真っ赤になって騒ぎ立てる三人。
その横で、影から姿を現したくノ一のミサキが「やれやれ、魔王サマもモテすぎて大変ね」と他人事のようにクスクス笑っている。
「……ハァ」
俺は首を鳴らし、シエルが淹れてくれた二杯目の苦いコーヒーに手を伸ばした。
東西国家からの莫大な賠償金回収、前魔王の遺産探し、そして相変わらず騒々しい暇人共の襲撃。
新米魔王の忙しない毎日はまだまだ終わりそうにないが——まあ、退屈するよりはマシか。
俺は不敵に口角を上げ、紫煙とともに冷徹な決意を夜空へ吹き上げた。
コメント
1件
お疲れさまです、キュルノさん!第38話、読み終わりましたよ〜。 もうね、シエルが「子どもは静かな子が二人くらいでいい」ってさらっと言った瞬間、思わず声出ました(笑)。あれ、完全に決めゼリフですよ。クロードの「暇人は騒がしい」って扱いも相変わらずで、でも内心まんざらでもなさそうなのが好きです。 東西軍への三億請求とか、賠償金回収とか、魔王業も忙しそうですね。このハーレム×バトル×政治のバランス、毎回楽しく読んでます!
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89
蒼月
800