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はい 小説ね〜
pixivの方であげてるからネタバレ嫌だったら逃げろ
「・・・はぁ」
深夜の電車の中で一人で溜息を付く。
今は会社のプロジェクトが忙しくて、殆ど帰るのが日付が変わってからだった。
・・・今は迎えてくれる人も居ない。
眠そうな目で、けれど笑顔で迎えてくれたiemonさんは事故にあって死んだ。
死因は飲酒運転の車に轢かれたからだった。
車を運転していた人は温厚そうな人で、ただ、飲酒運転が原因なだけだった。
どれだけ泣いたのかわからないほど、涙も枯れるほど泣いた。
今でも、iemonさんの私物を捨てられていない。
彼は何度も頭を下げて、何度も謝りに来た。
けれど、彼は俺が一生許すことが無い事を悟ったのか、ある日から来なくなった。
なんて、電車に揺られながら意味のないことを考える。
どれだけ願っても彼は帰ってこないのだから。
そう考えて涙が溢れそうになっていると、電車の到着音が鳴る。
その音で一気に現実に戻される。
駅から出て、駅まで歩く。
暗い道を、ぽつんと街頭が照らしていた。
俺の気持ちも、少しだけでも晴れたら楽になるのかな。
「・・・ただいま〜・・・・・・ははっ、」
誰も居ないと言うのに、あの頃の癖で言ってしまう。
そんな愚かな自分を思わず鼻で笑う。
「おかえり〜」
「・・・は?」
その瞬間、明らかに聞こえた。
もう居ないはずの、彼の声。
俺は、玄関にバッグを投げ捨ててリビングへ走る。
リビングの扉を開けると、椅子に座っていたのはiemonさん。
「・・・い、iemonさん・・・?」
「あー、どっから説明したら良いかな・・・・・・おい、泣くなって」
泣くなと言われても、写真の中でしか生きていない彼の姿を見ると涙が溢れる。
彼は少し照れながら俺の手を握る。
お揃いのペアリングが当たると、カチン、と音が鳴る。
「・・・生きてたの?」
僅かな希望にかけて、声を絞り出す。
勿論、そんな出来の悪いアニメの様なことはないと知っていた。
けれど、もし生きていたら、元の関係に戻れるのか。
「・・・あー、生きてはないよ。なんかね、気付いたらここに居たんだよね」
「・・・・・・。」
まあ、勿論生きては居なかった。
よく見ると体も少し透けているし、ペアリングの音が鳴るだけで、彼の手に触れている感触はしない。
『こんな事はあるのか、お前は誰だ』
そう声を荒げたかったけれど、俺の感性が、これは彼本人だと言っている。
「・・・とりあえず、ご飯作ってるから」
そう言って、iemonさんは冷凍庫を指差す。
冷凍庫を開けると、作り置きの煮物が置いてある。
「・・・ありがとう・・・?」
「なんで疑問形なん」
そう言って笑う彼の笑顔が久しくて、少し静まった涙がまた溢れてくる。
「あ、おい!せっかくおさまったのに!」
そう言って、少し乱雑に涙を拭われる。
彼の手の感覚はしない、けれど、確かに涙は拭われていく。
その事実に、また涙が溢れてくる。
「ばっかお前・・・!マジで泣きやめ・・・」
そう焦ったように言うから、思わず笑ってしまう。
「・・・あははっ!そんな焦る事ある!?」
俺が急に笑ったのに驚いたのか、iemonさんの体は跳ねる。
それから、少し呆れたような、けれど笑いながら言う。
「・・・もう、お前って本当忙しいやつだよな」
・・・いつもはあんなに見慣れていたはずの笑顔も、久しぶりに見ると慣れないな。
それから、俺達は6日ほど過ごした。
iemonさんに触れられないから、少し大変なこともあったけれど、それでさえ愛おしかった。
だって、亡くなった人、しかも恋人が戻ってきたのだから。
そのお陰で、手につかなかった仕事も少しは進むようになっていった。
それで、プロジェクトも成功した。
その事をiemonさんに報告をすると、ニヤッと笑って言う。
「良かったじゃん、やっぱ俺が居ないとなんも出来ひんやん」
「・・・まあね」
そんな会話をするのも久しぶりだった。
iemonさんも嬉しいのか、いつも笑顔で居た。
七日目の夜。
「ただいま〜」
いつもより明らかに軽くなった声色で、家のドアを開ける。
電気がついているリビングに向かうと、iemonさんはいつもより暗い顔をしていた。
「どうしたの?」
そう俺が声を掛けると、iemonさんは笑って俺の手を握る。
「・・・俺、多分もう帰らないといけない」
「・・・は?」
間抜けな声をあげると、iemonさんは淡々と語る。
「俺がこっちに居れたのも、多分俺が願ったからなんだよね」
「けど、こういうのってアニメでは期限があるでしょ?」
「それと同じみたいで、多分俺ももうそろそろ居れないんだよね」
「・・・何言って」
俺がそう問うと、iemonさんは切なく笑う。
それで、俺が一番恐れていたことを悟ってしまう。
「・・・多分、戻らないと駄目なんやと思う」
涙がどんどん溢れてくる、目の前が歪んでいく。
iemonさんは、俺の手を一層強く握る。
「・・・ルカ」
「・・・・・・!」
普段はしない名前呼び。
涙でぐちゃぐちゃな顔で見上げると、iemonさんも泣いていた。
「・・・ひなにい、ひなニキ、ルカ、柊鳴ルカ・・・」
「・・・どうしたの」
涙に堪えきれずに、自分の手で自分の涙を拭う。
iemonさんの時と違って、感触のある手。
その時に、iemonさんが詰まった声で言う。
「・・・俺の事、忘れてね」
「・・・!」
そう声がすると、手に触れていた「ペアリング」の感触が消える。
驚いて顔を上げると、もうiemonさんは居なかった。
iemonさんが居ない悲しみ。
それよりも俺の心に残っていたのは、やけに清々しい気持ち。
赤くなるまで泣いた目も、固く握っていた手。
本当だったら痛いはずなのに、ちっとも痛くない。
「・・・忘れる事は出来ないと思うけど、頑張るね」
涙を堪えた声で言うと、目の前に笑っているiemonさんが見えた気がした。
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