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少しの間をおいて、元貴からは意外にも
「わかった…」と返事が返ってきた
俺が驚いて「え、、いいの?」と言うと、「うん。」と答えたけど、相変わらずちょっと元気がないような読めない表情をして考え込んでいる
全然よさそうには見えないけど…
「…元貴?」
「いやなら、嫌っていって?俺、元貴が嫌がることはしたくない」
本心だった。
そりゃあ、俺だってキスマークを付けられて恥ずかしがる元貴をみたい願望は正直めちゃくちゃある
でもそんなもの軽く飛び越えるくらいには、元貴と一緒にいて、元貴が恋人で、充分すぎる程に幸せで、大切だった
それよりそんな事で、元貴とぎくしゃくするのが嫌だった
割と…
というか、だいぶ真剣に元貴の目を見て言う俺
我に返ったような元貴から、慌てたように返事が返ってきた
「あ…いや、!ちがう!、、、」
「 えーっと、さ、、若井って嫉妬心とか独占欲とかあんまりないじゃん…?」
「なのに、若井がそんな事いうなんて、俺、よっぽど不安にさせる事なんかしてんのかなって、、思って、、…」
………なるほど。確かにね?
これって、独占欲なのか…。
冷静に客観視すると明らかにそうかもしれないけど、元貴に言われるまで本当に自覚がなかった
元貴の言うとおり、俺は普段あんまり嫉妬とかしない
元貴は人懐っこいところがあって、普段から涼ちゃんやスタッフの腕に巻きついたり、
今朝の俺にしてきたように膝に頭を乗せたりを割と自然にした
でも、それが口下手な元貴の、恋愛だの友情だのをとっぱらった”心を許した人間”に対してのコミュニケーションの取り方で、 愛情表現の手段だとわかっていた
だからそれに対して嫉妬とかは本当になかった
それに、元貴はみんなと同じ様に”メンバーの俺”に対してちゃんとその愛情表現をしてくれたし、
俺も信頼している涼ちゃんやスタッフと元貴が仲良くしてると微笑ましいというか、、
むしろ、周りにどれだけ愛されていても、どうしても孤独と同居してしまう性分の元貴に、そういう心が許せる人がいてよかったと勝手に安心すら覚えていた
俺と元貴は幼馴染で、恋人という観点を除いたとしても、
“俺が一番元貴と仲良しなのは揺らがない”
みたいな、俺の中だけの勝手な奢りが、嫉妬させないのかもとも思うけど…。
いや、
でも、 もうかなり前だけど、俺には学生時代から結構長く付き合っていた彼女がいて、
その人とは、決して適当に付き合ってたとかじゃないし、当時はちゃんと恋愛として好きだったと思う…
なのに、やっぱりその人にも、こんな風にはならなかったんだよなぁ………
………
随分長い事ぐるぐる考えてたせいか、
元貴が、俺何しちゃったんだろう?とでもいうように 「…若井…?」と不安げにしている
元貴を安心させるように、後からふわっと抱きしめておだやかな声で言った
「…元貴にはあるよ。」
「…ていうか……元貴が恋人になるまで気付かなかったけど、俺の中にも、ちゃんとあったみたい。…」
「”恋人の元貴”にだけあるのかもね。独占欲…」
恋愛感情で元貴を好きになってから無意識にずっと感じていたけど、
それが独占欲だったと自覚してちょっと照れた
右手で元貴の手をとって、お互いの右指同士を絡めながら口元に持っていき、元貴の手の甲にじっとりと口付ける
指を絡めたままで、元貴の首筋に顔を埋めてちゅ、ちゅ、と軽く吸いつくようなキスを落とした
「不安になってる事なんてなんもないけど、どんだけ恋人の元貴を独り占めしてても、まだ独占したい」
元貴が嫌がっていないことを注意深く観察しながら確認し、「…だめ…?」と吐息混じりに元貴の耳元で囁く
元貴の体がびくっと小さく反応し、左手で抱きしめていた俺の腕をきゅっと掴んで、俯き加減で呟く
「お前さ……よくそんな恥ずかしいことを平気で素直に言えるね………。」
「…………… いいよ。」
と小さく呟く元貴はだいぶ照れてて、結構嬉しそうだった
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