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5年前。
12歳の時の頃。
医師「お……落ち着いて〜!」
ツゲ「受けなければいけないんだ!注射は!」
「病気に罹ってしまうんだぞ……!」
ルディア「やだ!やだ〜……!」
椅子に座ってじたばたするルディアを、ツゲが抑えている。
若い女性の医師はあたふたしている。
サルビア「あーあ。始まったぜ。ガキの駄々が」
ロベリア「サルビアさんもよくガキの駄々やるじゃないですか」
サルビア「オレは正当な要求をしてんだよ!」
ツゲ「はっ……今思うと、酷なのかもしれない」
「こんな幼いルディアを抑えつけて、痛みを押し付けるなんて」
ロベリア「ガキとか幼いとか言ってますけど、私たち同い年ですよね?」
ツゲ「……私としたことが軽薄だった」
「終わったら何かご褒美をあげよう!そして……」
「ルディア!私も……私も共に痛みを受けよう!」
「何か私に注射するようなものはないのか!?私もルディアと分かち合おう……!」
医師「ええっ!?」
ルディア「ツゲ……」
医師「えっと……特にないから……言葉でもかけ続けてくれると嬉しいな〜」
ツゲ「ああ……それはもちろんだ!」
「しかし自分が痛みを負わぬのに、嫌がるルディアに痛みを押し付けるとは、なんとも不条理なことだ」
「私も同じ立場に立たないことには……」
ロベリア「あ、薔薇の茎持ってますよ。トゲトゲしてるし良いんじゃないですか?」
ツゲ「ありがとう、ロベリア……これを握りしめておくよ」
医師「か……解決したようで何よりかな〜」
そしてツゲが言葉をかけ続け……
注射が無事に終わった。
ルディア「っ………いたぁい……」
ツゲ「ルディア……本当に本当に、よく頑張った」
「私は君のことを称賛しよう……」
「新しい漫画を買いに行かないか?君の好きな漫画を……!」
ルディア「うん……行くよ、ツゲ……!」
「『ゴースト・アルタイル』買おうよ……!」
サルビア「こいつらはほっといて良いのか?」
ロベリア「良いんじゃないですか?」
サルビアとロベリアは出て行った。
医師「あの〜……注射受けた子に、ひとつだけシールを配ってるから〜……良ければ持ってってね〜」
シール帳の中に、たくさんのシールが入っている。
ルディア「どれでも良いの……?」
「じゃあ……やっぱり、これだよ」
『ゴースト・アルタイル』の主人公、アルタイルのシールを選ぶ。
医師「人気なんですね〜……ゴースト・アルタイル」
「実は私も……かなり好きです」
くろはる
228
狐夜月愛🩵🦊🌙
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59
ルディア「本当!?」
医師「幽霊になっても人を助けるアルタイルに、憧れちゃって……」
「自分もヒーローになりたいと思って、医師になりました〜……」
ツゲ「ああ……その精神はとても素晴らしい」
「私も共感するよ」
医師「……?あれ……」
「ルディアちゃんの注射跡……この一瞬で塞がっちゃったような……?」
ルディア「私、どんな怪我もすぐ治るんだよ!」
医師「そうなんですか〜……?」
「ルディアちゃんたちも、きっとアルタイルみたいに強い子になりますね〜……」
「きみたちが大人になってからも、注射する機会はあるから〜……」
「そのときも、私に頼んでくださいね〜……?」
ルディア「………!うん!」
それからというもの。
病院に行く時は、必ずその人にお世話になって、
その人がいない時は残念がった。
そして時は進み……
5年後。
ルディア「カモミさ〜ん、居る〜?」
医師「あ……ルディアちゃん、来てくれたんですね〜」
ルディア「ちょっとやけどしちゃって……診てほしいな!」
医師「もちろん、おやすいご用ですよ〜」
「うんうん……これならすぐ治りそうですね〜」
今日のその医師は、なんだかいつにも増して笑顔だった。
ルディア「嬉しいことでもあったの?」
医師「わかりますか〜?」
ルディア「『アルタイル』の絵が上手く描けたとか……?」
医師「残念ながらハズレです〜」
「私……もう25なんですけど……」
「来月、結婚式を挙げることになったんですよ〜」
ルディア「えーーー!!?そうなの!?おめでとう!」
「来月!?行くよ!」
医師「来てくれるんですか?ありがたいです〜……」
「なにか奢っちゃおうかな〜……なんて……」
ルディア「良いよ良いよ!大丈夫だから」
医師「ルディアちゃんって……いくつになりました〜?」
ルディア「17歳だよ!」
医師「そうですか〜……もう大人なんですね〜……」
「ルディアちゃんは好きな人とかいるんですか〜……?」
ルディア「………」
「どうなんだろう、分かんない……あんまり気にしてないかも」
医師「そうですか〜……でも……」
「いつかルディアちゃんの結婚式をやることになったら、必ず私行きますよ〜……!」
ルディア「……!そっか!お願いね!」
だが、その1週間後には…………
セイザタウンは滅亡し、ルディアを除いて、一人も生き延びなかった。
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第2話
⟣ 痛み ⟢
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砂嵐がひどくなってきた。
とぼとぼと歩く。
ひたすらに歩く。
ここは砂漠だ。
行くあてもなく。
歩く。
ルディア「………」
こんなに歩いたのはいつぶりだろう。
確か、中学生の町マラソンの時以来。
やっぱりツゲに勝てなくて2位だった。ツゲはどんな人にも手を抜かない。よく知ってる。
悔しいって嘆きながら足踏みしているところを見られると、ツゲは手を差し出して、
「良い走りだった」。
そんな一言。
人によっては煽りに感じると思うけれど、やっぱり私は嬉しかった。
何せツゲから褒められるのが、いっちばん嬉しいから。
でも、力勝負だとか、物投げとかなら、町の誰もがあたしに勝てなかった。
ツゲもね。
やっぱりツゲは手を出してこう言うんだ。「良い投球だった」。
ツゲはストイックで、間違いなく憧れだ。
ゼルは些細なことでもプレゼントや食べ物で祝ってくれる。無表情だけど、何だか気持ちが伝わる。
一緒に甘いものを食べる。ゼルが甘いものを好きなのかは、正直よく知らない。
でもあたしと一緒に食べてる時は、何だか嬉しそうだった。
だから、あたしも嬉しそうに食べる。
そんなお祝い事の時、いつもロベリアから花をもらう。
『花言葉』を意識してるらしいけど、その場では教えてくれない。
でもやっぱり、特別な時にくれる『ガイラルディア』をもらう時が、一番嬉しかった。
それはあたしの名前の元になった花。花言葉も完ペキに覚えてる。
『協力』『団結』『明るい人柄』『きらびやか』。あたしにピッタリ。
そう。こんな花言葉だから、ロベリアはあたしをルディアと名付けた。あたしも深く気に入った。
だからこの名前は、誰にも譲れない誇り。
あたしは頭が良かったけど、やっぱり授業は楽しくなくて寝ちゃう。
だから足りない分をサルビアに教わった。
サルビアは努力タイプだから、説明はすごく分かりやすかった。
そのおかげで追い越して学年1位を勝ち取った時は、悔しそうに「……やるじゃねーか」って褒めてくれた。
たまに思い出して嬉しくなる。サルビアが褒めることなんて、全然ないから。
勉強と言えば、ツゲは物理学の才能があった。だからその勉強に追われていた。
でもツゲは嫌だったみたいで、「本当にやりたい仕事は違う気がするんだ」といつも話してくれた。
今頃生きてたら、一体何の仕事に………
ルディア「〜〜〜〜!!」
ガンガンと頭を叩く。
ルディア「だめ……弱音なんて」
「やることやらなくちゃ……!」
「そうだよ……あたしはゼルを救わないといけない」
「そうでなきゃ……みんなに顔向けできない!」
酷であった。
ふるさとを離れたばかりの一人の少女に、こんな旅をさせるのは。
ルディアは特段精神が強いわけではない。
むしろ涙脆く、弱音を吐くのは早い方だ。
今も、必死に涙を堪えている。
自分が愛した幼馴染のため、今すぐ後を追っても不思議ではないのに。
それでも……ルディアは進む。
進まなければならない。
恩師……ゼルから託された、『一番星の大剣』を背負って……
すると砂嵐の中から、歌声が聞こえてくる。
それはとても美しい。
ずっと聴いていれば……
心を奪われてしまいそうだった。
ルディア「……?」
「誰か……!誰かそこに居るの?」
「なんで歌ってるのか知らないけど……ここは危ないよ」
「砂漠の外まで……一緒に行こうか?」
しかし、その時……
隣にあったサボテンの……針が飛け飛ぶ!!
ルディア「!?」
顔はガードするものの、それを庇った腕に、針が刺さってしまう。
ルディア「あああああっ!!!痛い!!!」
「はっ………はっ………!」
「(ダメ!落ち着かなきゃ!注射より痛いけど……きっと大丈夫……!)」
「(スーーッ……………ハーーー………)」
グッと涙を堪え、大剣を構える。
「こ……この針は……!ゼルから聞いたことがある……」
「確かチョヤッって言うんだ……針を飛ばせるサボテン!その針が種子でもあるから、飛ばすって進化に行きついてる」
「でも針を飛ばすのは、危険を感じた時くらい……
貴重な水分を全て使って、圧縮から解放されるエネルギーで飛ばしてるから」
「私は何もしてなかったはず!それなのにどうして針が……?」
砂嵐の中からの歌声は止まない。
なぜだかは分からないが、美しいはずのその歌声が、だんだん恐ろしく思えてきた。
ルディア「よく分かんないけど危険だよ!
私が叫んだのにどうして歌い続けられの!?いや……別にいいんだけどさ」
「逃げようよ!良くないことが起こってる!」
……
歌声は止まない。
ルディア「どうして!?返事くらいしても良いじゃん!」
「置いてくからね!?危険な目に遭っても知らないよ!?」
そうして足を踏み出そうとした瞬間……
足元の長く長く広い草が、ルディアの足に巻き付く!
ルディア「ッ!?これは何!?」
「どうして草が急に伸びたの!?どうして私の足に!?」
ほどこうとするが、全くほどけないし……
巻きつかれた足に……違和感がある!
だんだん、自分の足がしわしわと、しなびていくような……
しかし反対に、この植物は……
うるおいを増していってる!
ルディア「す……吸われてるの!?」
「私の水分を……足から吸ってるの!?」
「思い出した……この形は『ウェルウィチア』!」
「生涯で2つの葉だけ伸ばしてく植物……奇想天外って異名がついてる!」
「その葉で獲物を拘束して、水分を奪い取るんだ……!」
そして……
ルディアの腕に、ひとつ抜き忘れていたチョヤッの針があった。
それが……急にふくらみ始める!
肌を裂いていく!!
ルディア「うわああああああっ!?!?」
そう……針は種子でもある。
ウェルウィチアの葉と同じように『急成長』している!
針を抜こうとするが、すでに肌に根を張っていて抜けない!
ルディア「(ッ………これ以上は!)」
「『ファーストスター』で!!」
己の大剣で……
サボテンがある場所の肌を……慎重に切り落とす!
ルディア「っあっっっ!!!!」
「(っきっと……切り落とさなきゃ、もっと痛かった)」
「(それでも………これは……)」
「(痛いよ!!)」
「(っ…………我慢だよ……我慢しなきゃ)」
「(このくらいの痛みでへばってたら、きっと私は……!)」
いよいよ涙を堪えられなくなってきた。
伝う雫が次第に落ち始める。
それでも行動を止めない。
ウィルウィチアの葉も、大剣で切断するが……
足に巻きついた葉は効力を失うかと思えば、むしろ増していく!
さらに拘束を高めてくる!まだ動き続け、葉の拘束が肌をつたってズボンを潜り、太もものあたりまで登ってくる!
ルディア「っく!?もう切ったのに!」
「ウェルウィチアの葉は生命力が強いから、切ってもしばらく動き続けるってこと!?」
「いや……そんな生命力はない!きっと何か異常なんだ!チョヤッの針種が急に成長したみたいに……!」
肌を伝うサボテンを、ズボンごと大剣でカットするが……
やはり加減が難しく、肌を巻き添えに切ってしまう。
ウェルウィチアは無力化できたが、それは痛みとの引き換えだ。
ルディア「っ〜〜〜………!」
もうルディアはボロボロだ。
極限状態に陥ると、どうしても考えたくないことを考えてしまう。
『なんで自分がこんな目に遭わなきゃいけない?
きっと、あの日に死んでしまえば楽だった。
どうして私が。
どうして私が。』
振り切りたい感情。
それは捨てても捨てても、湧いてくる。
けれど今はひとまず、今の危機に目をむける。
そうでなきゃ、また無駄なことを考えてしまう……
歌声は、まだ止まない。
ルディア「なんで……まだ歌い続けるの!?」
「姿が見えないけど……まさかこの異常はあなたの仕業!?」
「冷静に考えればおかしいよね!砂漠のど真ん中で歌い続けるなんて……」
「分かったよ!もう知らない!私は逃げるよ」
「ご縁がなかったってことでさ!」
そして全力で走り出すが……
前方から、タンブルウィードが転がってくる。
あまり気にせず通り抜ける。
が、それは……ルディアの腕に喰らいついた!!
ルディア「っあ!?」
それは────アノホラグサだった!
ルディア「まずい!!」
「(アノホラグサは正気を吸い取る……!)」
手で押そうとしても、離れない。
素手では、どうにも対抗できないようだ。
ルディア「(でも私は……あまりポケモンを自分の手で傷つけたくないんだ!)」
「(私は何かを傷つけるために生きてるわけじゃないから!)」
「(けれど傷つかせないとアノホラグサは離してくれない!)」
「(一体どうすれば……)」
「!」
あることを思いつく。
ルディア「これは言い訳だけど……」
「今から君を傷つけるのは『植物』だからね」
「私は何も知らないよ!」
と言うと………
ルディアは石ころを蹴って、チョヤッにぶつける!
するとサボテンの針が、ルディアに向かって飛ぶが……
腕にひっついているアノホラグサを盾にする!
針で枝が削れた。どうやら結構痛いようだ!
アノホラグサは鳴き声を発して、逃げていった……!
ルディア「(なんとかなった……!)」
「(でもどうして?どうしてこんな一斉に私が攻撃されてるの……?)」
「(いや……理由は重要じゃない!今は攻撃されているって事実があるだけ)」
「(考えるより先に逃げたほうがいい!)」
逃走を再開するが……
突然歌が止み、その方向から『竜の波動』が撃たれる!
慌てて躱す!
ルディア「!?」
「い……今のは?何?」
技の影響で、砂嵐が一瞬、明ける……
歌が聞こえてきた方向にいたのは………
蝶のような翼を持った、赤と緑色のフライゴン!
ルディア「あっ………!?」
「完全に……思い出した!繋がった気がする!」
「(フライゴンってポケモンは、元々砂地獄っていう流砂のトラップで捕食をやってたらしい……)」
「(けれど全国に酷い大雨が降り続けた時期、植物が砂に根を張ったせいで、砂地獄が作れなくなったことがある)」
「(その時のフライゴンは、みんな海に逃げて、海上のリージョンフォームを遂げたけど……)」
「(砂漠に残ったフライゴンはそうじゃなく、『歌のような羽音で植物を操る』能力を会得していったんだ)」
「(それがあの『クラシフライゴン』!くさ・ドラゴンタイプ……!)」
「(なるほど……それでチョヤッやウェルウィチアが異常に攻撃してきたんだ!
敵はあのフライゴンだった!)」
逃げ続けるが、何かを踏む。
ルディア「?」
カラフルな石ころのようだが、踏んだ感じがとても柔らかかったような……
と思っていると、石ころ上部の割れ目から、かわいらしい花が咲く……
ルディア「?……」
「(確かこれは『リトォープス』……岩に擬態する多肉植物)」
「(………?)」
その、かわいらしい花が……
爆発した!!
ルディア「うわあ!?」
そして驚いて踏んだ別のリトォープスからも……
すぐに花が咲き、爆破する!!
ルディア「わあああ!!」
間一髪で避けたが、次のリトォープスも踏みそうになり……
ギリギリ留まる!
ルディア「はぁ………はぁ………」
「(そうだ!リトォープスは踏まれた時、『爆発』して種を散らすんだった)」
「(踏むと爆破するなんて……ほとんど地雷だ!しかもそれが……)」
「(私の周りを囲ってる!)」
どうやら……『リトォープスの地雷原』に来てしまったようだ。
そして砂嵐に隠れていたフライゴンが、突如迂回する。
ルディア「!」
「(攻撃してくるのかな……?なら下手に動くと、リトォープスを踏みかねない)」
「(一旦はフライゴンを凌いでから逃げるしか……!)」
フライゴンは低空飛行すると……
少し遠いところで、尻尾で地面を薙ぎ払う!
それで砂がこっちに飛んでくる!
ルディア「っ?」
「(目眩し……?)」
いや……違う!
砂と一緒に………
リトォープスが飛んでくる!
地雷原だが……地雷が飛んできた!
ルディア「うわあああ!?!?」
とっさに身を伏せ……
リトォープスは空中で爆発する!!
伏せたおかげで甚大な被害はないが、それでも背中が痛い。
ルディア「っ……!」
「(サルビアがおかしいって言ってたんだよ……)」
「(『セイザタウンが、全く他の町と関わった形跡がない』こと)」
「(でも……これがおそらく答えだった)」
「(この砂漠を誰も越えられないから……セイザは孤独な町だった!)」
「(渇いている!この砂漠は渇いている……!)」
「(このままじゃ私も……!)」
すると……さっきのウェルウィチアのもうひとつの葉が、ルディアを襲う!
胴体と左腕を縛り、両足を縛る。
ルディアは伏せている。これほど拘束しやすい体制はない!
ルディア「っ!?」
「やめて!!身動きが……」
「(まずい……!ここまで拘束されたならもう二度と解けない!
大剣で切るより伸びていくスピードの方が圧倒的に早い……!)」
そしてまたフライゴンは地面を薙ぎ払い………
リトォープスが飛んでくる!!
ルディア「わああああ!!!」
そして混乱のさなか………!
ルディア「っく………!」
「わかったよ。そんなに渇いているのなら……」
「水なんてくれてあげる!!」
カバンから、水の入ったビンを1本取り出すと……
こっちへ飛んでくるリトォープスに向けてぶちまける!!
するとリトォープスはなぜか………爆発しなかった!
ルディア「多肉植物は水を欲してるけど、逆に水がありすぎるとブヨブヨに溶けてしまう……」
「普段は砂があるからその中で水が分散して、雨が降ってもちょうどいい水の量を維持できる」
「でも砂のない空中なら、水を分散してくれるものがなく、水を浴びるだけで溶け、効力を失う」
「うまく行ってよかった……」
「それとウェルウィチア……水を欲してるようだけど」
遠くに水の残ったビンを投げる!
「あそこに水がたくさんあるみたいだよ?」
「渇いているのなら………私を吸うより……」
「ビンの水を吸った方が良いんじゃない?」
ウェルウィチアの葉は少し迷った後……
ルディアの拘束をほどいて、ビンに向かう!
ルディア「よし!!」
すぐに立ち上がって、逃げる。
そして植物での攻略を諦めたのか……
歌が止み、フライゴンが飛んで追ってくる!
ルディア「植物を操る羽音を出すことを諦めて、スピードを出してきてる……!?」
「(冷静に考えると追いつかれるし、私の力じゃ勝てる予感がしない)」
「(大剣を使えば勝てるだろうけど、誰か傷つけるために大剣を使いたくない……だから使わない)」
「(私に残ってるカードは何?どうやったら逃げれるの……?)」
「(でも確実に、『道』があるはずなんだ)」
「(だからこそ……取るべき選択は!)」
フライゴンに向かって、ビンを投擲する!
うまく当たるが、特に効いた様子もない。
それでも、フライゴンに水が付着する。
ルディア「ねえ……フライゴンさん……『植物を操る羽音』は出したままの方が良かったんじゃないのかな」
「どうやら自然っていうのは……敵に回すと怖いみたいだからさ」
すると……
ウェルウィチアが空中のフライゴンに巻き付く!
ルディアよりも、ビンの水を浴びたフライゴンの方が水分量があるからだ!
そして羽ばたけなくなり、フライゴンは地に落ちると……
ルディア「大丈夫?その位置は……」
「『リトォープスの地雷原』だよ!!」
フライゴンの下敷きになったリトォープスたちから、一斉に花が咲き………
爆発する!!
ルディア「これに懲りたなら、もう人間を襲わないでね」
「私たち、争わなくても良いと思うの」
「どうか優しくあって」
かなり効果があったみたいで、もうフライゴンは追ってこれない。
ルディアは逃げた。ひとまず、勝利だ…………
夕日が落ちていく。
しばらく歩いていると、ちょうどいい岩場を発見する。
そこに布を敷いてみる。
ルディア「はぁ……もう疲れた」
「……こんな砂漠の中で野宿するんだ、私って」
「はは……砂漠を舐めてたかも。水は山ほど持ってきたのに、明日持つか分からないよ」
「…………」
「(………あたし……あんまり一人で寝たことない)」
「(いつも……起きたら隣に誰かが居てくれるのが、普通だった)」
「(でも、ゼルもツゲも)」
「(今は……)」
「ッ………」
「……今日は、もう寝よう」
「明日はもっと良い日になるはず……きっと」
自分にそう言って、ルディアは床についた。
布を敷いただけの、心地の良くない、砂の床。
………
つらい1日だった。
ゼルを救うため、象徴を会うのを目的にしているけど、まだ手がかりも掴めてない。
こんな1日を……
あと何回繰り返せば良いのだろう?
砂漠の苦労には慣れても……
森や山、新しい環境に何度も何度も悩まされていくのでは?
誰も傷つけたくないのに、あと何度、戦わなければいけないのだろう?
………
ルディアは、自分の澱みを、眠って誤魔化した。
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第3話
⟣ 痛み ⟢
終わり
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コメント
1件
第2話読み終えたわ……。過去の注射シーン、ツゲがルディアの痛みを分かち合おうとする姿が優しくてじーんときた。でも現在の砂漠で、あの優しかった日々がもう戻らないんだなって思うと胸が締め付けられる。知識と機転でフライゴンを倒したルディア、めちゃくちゃかっこよかった。それでも一人で寝るシーン、寂しそうで……。ゼルを救うため、一人で進むしかない彼女の決意、ちゃんと応援したくなる。次話も楽しみにしてる!