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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「最近のウッザーはどうです?」


サーバーでコーヒーを淹れていると里中くんが爽やかな笑顔でやってきた。


「相変わらず、みんなの前では離婚ネタで周りに人がいないと下ネタをぶっ込んでくるわ」


「さすが奥山さんですよね、他の人だったら病みそうですよ」


「褒められてる気がしないわ」


「そんなことないっすよ、尊敬してます」


「そういうことにしておく」と答えてコーヒーの入ったカップを持って席に戻った。


里中くんのおかけで前よりも安心して仕事ができるが、その反面心配になる。



待ち合わせの駅に到着する。

二人で住んでいた町、ここからなら実家に帰るのが楽だし土地勘があるからここにした。正人が実家に戻っているならここは遠いと思うが向こうの相談事だから別にいいかって思う。

改札を抜けたところに正人が立っていて私を見つけると満面の笑顔で手を振っている。


だから、デートじゃねえし!


二人で時々モーニングを食べに来たカフェで離婚した二人で向かい合わせにテーブルに座りBLTサンドを頬張っている。


てか、話は?

って思うけど、せっかく美味しいものを食べているから食べてから聞いてみる?

いやいや、正人が呼び出したんだからさっさと本題にとか考えているとサンドウィッチをもつ正人の手が止まった。


「本当にゴメン」


何度も聞いた言葉。


「陽性だった。瞳は大丈夫だった?」


「私は大丈夫よ、結果が出るまですごく不安で正人を恨んだけど。思えば、正人は美優に夢中で私とはレスだったから」


正人の手に力が入り、手に持っていたサンドウィッチからトマトが押し出されてテーブルに落ちると慌ててサンドイッチをお皿に置いたが手には汁がついたままだ。

バッグからウエットティッシュを取り出すと2枚ほど抜き出して正人に渡した。


正人は「ありがとう」と言ってウエットティッシュで手を拭くと小さく畳んで横に置いた。


「瞳が何でもなくてよかった。おれの方はもしかしたら、男性不妊になるかもしれないって」


言葉が出なかった。


「小野寺さんも不妊になるかもしれないと言われて、それでオレに治療費を支払えって、未成年に手を出したんだから慰謝料も払えって言われて」


私は黙って聞き役にまわる。


「誓って小野寺さんとしかシテないし、だから小野寺さんからうつされたとしか考えられないんだ。それに短大生だと言ってたし、だから二十歳のお祝いとかしたんだ」


二十歳のお祝いって、改めて聞くとモヤモヤを通り越してイライラしてきた。

妻の誕生日はどうでもよかったのか?とか、短期間に相当な金額を貢いでいてその総額は間違いなく私と付き合っていた頃から結婚していたあいだの総額とそう変わらない。

お金の問題じゃないという人もいるかもしれないけど愛情が目に見えて分かる尺度がないならその人のために使った総額で測るしかない。


「オレは騙されていたんだ。だけど、子供ができた時用にと二人で貯めていたお金を使い込んだから罰が当たったのかもしれない。だから、オレに子供が出来なくなるのかも」

「今更だけど」といって諦めたような表情をした。


「それで正人はどうしたいの?私に何を求めてるの?」


「そうだよね、本当は瞳にこんな事を言える立場じゃない事は分かってるけど、内情を知ってるのは瞳しかいなくて」


「正人はいつだって都合の悪い事には触れないようにして自分自身”だけ”を守っているよね。義母さまにも自分のしでかした事、置かれている立場を隠して都合よく話して、それで私は再度傷つけられた。分かってる?」


テーブルの上に置かれた手の甲にポタポタと涙が落ちている。


「ごめん。オレはまた都合のいい事を考えてた。被害者だから瞳が助けてくれるんじゃないかって」


1番の被害者は私だけどとビンタの一つをお見舞いしたいがなんとか堪えた。

「それで、正人はどうしたいの?」


「小野寺さんが他のパパから病気を貰ったのは確かで、オレが治療費を払うのは納得がいかないし、短大生だと言ってことも本当だし慰謝料を払う事だって納得いかない、だけど父親がただ怒鳴り散らしているだけで話が通じ無いんだ」


美優の父親と名乗る人物からの電話を思い出す。


「年齢を偽っていた事は何か証拠があるの?」


「パパ活の募集の時のやり取りがまだ残ってる」


そういうとスマホを取り出して私に見せようとしているから手のひらを見せて制止した。

「今更、生々しいしいやり取りを見たくない。今でも、何かの折に二人が裸で写っている画像が浮かぶことがあるの」


正人はピクリと体を痙攣させると慌ててスマホをポケットに入れた。

「ごめん」


「その画面をスクショしてあとは美優のインスタはまだ生きてる?」


「どうだろ?」そういうと今度は自分だけが見えるように操作を始める。


「まだやってるようだ」


「それなら、できる限り何を貰ったかどこに行ったかの記事や写真を保存して、正人があげたものや行った場所をチェックして、プレゼントした物って領収証だったりある?」


「ネットで購入したのは履歴がある」


「じゃあそういうのもまとめて、プレゼントしていないもので貰ったとして上げている記事や食事についての写真もまとめて保存したあとは弁護士さんに相談した方がいいと思う」


「それは、未成年と関係してるし」


「騙されたんでしょ、そして年齢詐称の証拠もあるんでしょ。とにかく何かの拍子でインスタのアカウントを消される可能性があるから、とにかく今は証拠を探してまとめてから弁護士を立てるのがいいよ。それにあの父親、威圧的にすればなんでも思い通りになると考えてそうな人物だから」


正人は驚いたように顔をあげ「会ったのか?」


「正人と連絡がつかないって電話が来た時、いきなり怒鳴られたわ」


「本当にオレのせいで傷つけて迷惑かけてごめん」


「がんばって」

私はそう言ってうなだれる正人を置いて店を出た。

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