テラーノベル
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「わたくし、回復魔法と水属性の魔法が得意ですわ」
おお! エルフの初期レベルで2系統いけるのは頼もしい。淡い水色の長髪が美しい彼女は、ミズキと名付けられた。
「あたしは剣の方がいいな。魔法は肉体強化しか知らない。エルフでは珍しく肉弾戦タイプ!」
ポニーテールの胸までスレンダーな元気娘はヤイバ。
「わ、私、木属性魔法で……補助系が、得意です……」
会った頃のゼロばりに挙動不審なおどおど娘はコノハ。肩までのふわふわヘアに堂々の巨乳だ。
「良かった、結構バラけてるね。皆にはダンジョンクリアの副賞として、冒険者の1日家庭教師をして貰いたいんだよね」
ゼロの言葉に、エルフ達は唖然としている。そんなの、俺でも驚くわ。
冒険者と戦うもんだと思って召喚されたら、戦うんじゃなくてプレゼントをあげるんだと言われたあげく家庭教師とくれば、そりゃ驚かないほうがおかしい。
「それで皆には、教え方のプロ! ハイエルフのルリから教え方をレクチャーして貰います!」
ええっ!? と驚いているのはもちろんルリだ。初耳だろう。俺も驚いた。
「あっ、戦闘系スキルの人はハクが先生ね。まずは先生から教え方のOKを貰ったら、僕のとこに来てね。で、僕に教えてみて、僕がそのスキルを習得できたら合格!」
ムチャ振り過ぎだろう! 俺、そもそも他人に何か教えた事ないし!
それにゼロが習得できたらって、なにその合格基準。
そもそも人には向き不向きがあってだな……言っちゃ悪いがゼロ……おまえ、正直言って戦闘系スキル、できそうなイメージ一切ないぞ?
難易度高くないか!?
俺たちの困惑を一切気にもとめず、じゃあ頑張ってねと言いおいて、ゼロはユキを連れてご褒美ルームを出ていってしまった。
残されたルリと俺は、途方に暮れてお互いに顔を見合わせる。まぁでも、やるしかないのか……?
つーか、家庭教師が出来るように教えるって……。
戸惑い気味の俺達とは対照的に、エルフたちはやる気まんまんだ。彼らも早くマスターであるゼロに認められたいんだろう。その日俺たちは、深夜までエルフたちの特訓に付き合わされた。
クタクタに疲れてマスタールームに戻ると、ゼロが満面の笑顔で出迎えてくれる。
「お疲れさま!どう?いい感じ?」
「どうもこうもないわよ~! あの子たち、ムダに張り切っちゃって。こっちがもう大丈夫って言っても全然聞かないのよ~!」
そう。ゼロの前で恥をかきたくないのか、彼らは自分たちでハードルをかなり高くあげていた。俺たちはそれに付き合わされていたわけだ。
「そっか、皆頑張ってくれたんだね! 明日が楽しみだな」
腹ペコの俺たちに食事を用意しながら、ゼロは本当に嬉しそうに笑っている。
「今日ね、僕も頑張ったよ? 二人がいない間にカエンに稽古付けて貰ったし」
カエンが「よう」と腕をあげ、俺と目が合うと何かを投げてきた。
危ねえな、もう。
って思ったらコレ、ダンジョンコアじゃねえか! こんな大事なモン、投げんじゃねぇよ!
「ハク、お前メシ食う間、それ大事に抱えてな」
意味がわからない。
カエンのニヤニヤ顔を見て、俺はゲンナリした。こんな顔をしている時は要注意だ、ろくな事がない。
「いや、出来るだけ……そうだな、寝る時も肌身離さずだ。お前今日からこの部屋でコア抱いて寝な」
「なんでだよ!!」
キレる俺に、ゼロが事情を説明してくれた。
「確かにその方がいいかも。あのね、ダンジョンコアに属性つけたいんだ」
なんでも、俺たちを待っている間に、ダンジョンをもっと強化出来る方法がないかと検討していたら、面白い方法を見つけたらしい。
コアに属性をつける事でダンジョン自体にも属性がつき、さらにコア自体にも特殊能力がつく。
「そんで、どうすれば属性がつくかコアに聞いたら、何かの属性を吸収し続けて、一定量を超したらって言うじゃねえか」
「もう、やってみたくて!」
ああ……またゼロの目が生き生きしてる。
俺はため息と共に、ダンジョンコアを母鳥レベルで抱き続ける覚悟をした。
「ダンジョンコアはマスタールームから出すのは危険過ぎるからな、この部屋だけにしろよ。あとハクは、魔力に余裕がある時はコアに注いどけ」
言うだけ言うと、カエンはおもむろに席を立つ。今日はシゴキはなしかとほっとしていたら、カエンはなぜか俺の肩をポンと叩いた。
耳元で囁かれた言葉にぞっとする。
「信用してくれるのは嬉しいが、マスターひとりにすんなよ。ゼロなんざオレ様が本気出しゃ瞬殺だぜ?」
そのままカエンはその場からフッと姿を消した。オレは、カエンが消えた空間を見つめて立ち尽くす。
本当にカエンの言う通りだ。
自分の迂闊さを呪いながら、俺は二度とゼロの側を離れるまい、と誓った。
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