「ねぇ、美都。今日は、仕事の後に買いものに行かない?」
ランチの際にエミから、そう誘いかけられて、「えっと……、」と、言いよどんだ。
すると、「エミ、ダメだって。美都は、買いものよりも、もっと大事な用があるんだってば」察したアミが、すかさず口を挟んだ。
「大事な用って?」
首を傾げて訊き返すエミに、
「そりゃ、もちろんデートでしょ。ねっ、美都?」
アミが答えて、私へにっこりと笑顔を向ける。
「う、うん……」
毎度のことだけれど、アミの察しの良さには驚かされてしまう。
「えっ、デートなの?」
エミが目を丸くして、私の顔を見やる。そうして、いつもながらのエミの天然ぶりは、微笑ましく思える。
「そうだってば、エミ。もうヤボなツッコミはなし!」
ケラケラと笑って言うアミに、「ア、アハハ」と、愛想笑いを浮かべて見せると、
「そっか、楽しんでくるんだゾ」
と、エミから握った拳を見せられて、「うん……」と、はにかんで応えた──。
だけど私は、この時はまだ知らなかった……。この日のデートが、思いも寄らないものになるということを……。
コメント
1件
思いもよらないって何だろう。何となく嫌な予感がするのは私だけ?