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「赤木が飛び降りた」
作家さんの言葉が電話越しに聞こえて震えながら消えていく。
思わずスマホを落としてしまった。
きむら「どこにおるん…、?生きてるんか…、?病院…、赤木…、」
作家「まず落ち着け、教えるから、」
そういった作家さんも声が震えている。
作家さんの隣にいるであろうマネージャーさんも同じ気持ちだと思う。
作家さんの話によると聖神大病院というところにいるらしい。
隣にあった自分の自転車にも乗らず、雨の中走って向かった。
受付に行くと、慌てて受付のお姉さんからタオルを渡された。
そりゃあびしょ濡れおじさんが来たらそうか…
受付「204号室にいるはずですよ」
その言葉が胸に重く刺さる。
本当に、病室にいるのか。
俺の赤木が、病室で苦しんではる。
そう思うと自分を捻り潰して焼き殺したいほど苦しい。
なんでここまでなるまで赤木を俺は放ってほいたんだ。
エレベーターの中うつむきながら床に写る俺と目が合って、深淵を見つめるように見てくるもう一人の俺を、
今、
殺したい。
殺したい。
殺したい。
殺し、
【4階です】
エレベーターの音声とともに歩き出して、204号室のドアの前で立ち止まった。
すると病院の先生らしき人が中から出てきた。
先生「あっ、木村さんですか?」
きむら「は、はい、そうです。」
先生「少しお話しても?」
もちろんだと言うくらい元気よく…いや、元気ではないが大きな声でお願いしますと言った。
先生「赤木さん、精神的に結構酷いね。何とか一命を取り留めたけれど…まさかビルの18階から飛び降りるとは…最初落ちているところを見た時、あ、死んでいると思ってしまうくらいの状態だったよ…」
きむら「…、」
俺はなにもいえなくなっていた。
先生曰く、皮は所々剥けていて、痣だらけ。傷口を縫うとすると全部で20針以上。心肺停止の意識不明という絶望的状況だったらしい。
先生「でもね、赤木さんはたぶん、きむらさんのために生きたんだよ」
きむら「…お、俺…ですか?」
先生「うん、多分本人は死にたかった。でもね、飛び降りた柵のところを見ると、1度立ち止まったのか靴の跡があったんだよ。そして、スマホを確認したら木村さんのメールのところに送ろうとしていたのか、スマホのキーボード部分に【ごめん】って書いてあったんだよ」
きむら「…そんな、」
先生「だから、君は赤木さんのヒーローだ。自分を責めないでくれ。赤木さんを救えるのは君だけだよ。覚悟が決まったなら、この病室に入りなさい。」
先生は俺の肩を優しく叩いて、背中を押してくれた。
そっとドアノブに触れて、その後ノックをして、中に入った。
きむら「赤木、」
彼の悲しそうでどこか寂しそうで虚ろで、でも少し嬉しそうな瞳がこちらを見てくる。
そんな目で見ないでくれ、弱い俺を。
そう言いたかったけれど、先生に言われてしまったからそんな弱音は吐けない。
きむら「心配したよ…。おかえり…。」
隣に座って、今にも溢れそうになる涙をこらえまくった。
本当なら引っぱたきたくなるくらい心配していたが、優しく、優しく、割れ物を扱うように。
赤木「…M-1優勝…したり…売れて…きたり…なんか…頭が…おかしくなっちゃった…、きむらは…明るくて…太陽で…それに対して…僕は…影…。生きる…価値なんか…なくて…居ても…【たくろう】っていう…存在を…汚しちゃうって…思っただけなんだ…、だから…、死なせてく」
きむら「何言ってんだよ!!!!」
びっくりした彼の顔。言いすぎたとハッとする俺。少し後ずさりして、間を置いてからもう一度話し始めた。
きむら「生きる価値…、?汚す…、?そんなわけないでしょ…俺のヒーローは赤木だ!赤木がいなかったら【たくろう】じゃないし、俺…お前が居なきゃ…、M-1も…今の俺も…いなかった…、」
赤木が腕をのばし、優しく引き寄せて包み込むように抱きしめてくれた。
こんなに積極的なのは初めてだ。
耳まで真っ赤になってしまって、思わずにやけてしまう。
慌てて顔をあげると、いつもポーカーフェイスな彼がボロボロ泣いていた。
赤木「…きむらの…馬鹿…、」
それと同時にさっきより強く、「離したくない」という赤木の独占欲と共に抱きしめられた。
きむら「赤木、生きてくれる…、?」
赤木「きむらが…望むなら…」
不器用に笑った彼は、どんな太陽よりも眩しかった。