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ね ぇ 、カ ラ ス バ さ ん ③

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ね ぇ 、カ ラ ス バ さ ん ③

18 - 第13話 〜『ざんねん』〜

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2026年02月10日

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───ピピピ……


スマホのアラームが耳の奥で容赦なく鳴り響く。

『……ゲホッ……』



体を起こした瞬間世界がぐらりと傾く

視界が白く霞み、額に手を当てると火傷するように熱い。



『風邪?私が……?』



信じられなかった。

施設で作られたこの体はそんな弱いものとは無縁のはずだった。


とりあえず今日の仕事が休みで良かった。

ゆっくり寝ていれば、きっと治る。



『げほっ、げほっ……』



ベッドから降り、フラフラと足を進める。

薬の入ったショーケースを開けるが──空っぽ。



『……ない』



思い出した。

この家で風邪を引くのはカラスバだけで 最近は彼が帰ってこないから、補充する気にもならなかった。

『……はぁ……』



ショーケースを閉じ冷蔵庫へ向かう。

だが、そこも空っぽ。

一人暮らし同然で、インスタントで済ませてきたツケが、今こんな形で回ってきた。



『詰んだ……』



自分の馬鹿さ加減に力が抜け バタンッ、と床に倒れ込む。

〖チャモ〜ッ!?〗



アチャモたちが心配そうに駆け寄ってくる。

そんなアチャモ達に対しシオンは弱々しく笑って、



『……はぁ……買いに行くか……』

〖きゃううん!〗

『エムリットは、何かあったら守れないから……お留守番してくれる……?』

〖きゃううん……〗



少し寂しげに頷くエムリットに、胸が痛むがこの状態ではエムリットを守れない。

心の中で謝りながら リザードンの入ったボールを手に、アチャモを肩に乗せ外へ出た。







『とりあえず、頭痛薬と解熱剤……』

〖チャモ♪〗

『取ってきてくれたの?ふふ、ありがとう』



アチャモが棚から持ってきてくれた解熱剤をカゴに入れ、ゼリー状のものを何個か追加。

それをレジで支払い、薬局を出る。



「ありがとうございました〜!」

『ケホッ……これくらいで……いっか……』



フラフラと歩き出す。

だが目眩が酷く視界がどんどん狭まる。

足が、もつれる。



『……っ、だめ。一旦、ベンチにでも座ろ……』

〖チャモ……〗

近くのベンチを目指す。

もう少し、もう少しだというのに、体が言うことを聞かない。



──ぴこんっ



スマホロトムが鳴り、自分の顔の前に現れ 朧げな視界で画面を見るとカラスバからだった



〖今日はなんしよんや。変わったこととかあらへん?〗



彼の事だから私につけているGPSを見て連絡してきたのだろう

そして、素直に話すべきか少し迷ったあと文字を打つ

〖少し風邪引いたみたいで……でも大丈夫です!!👍🏻✨〗



と返信しようとした瞬間──



───ボタッ……

『……え……』



スマホに、赤い雫が落ちる。

ふと鼻に違和感がありゆっくり手を伸ばすと指先に鮮血がべっとり。



『は、鼻血……? な、んで……』

〖チャモ!?チャモッ!!〗



アチャモの悲鳴のような声が最後に聞こえ

そこでシオンの 意識はぷつりと途切れた。



「……っと……危な……」















───サビ組事務所。



「…なんやこいつ、なんで薬局なんか行っとんや?」



ふとシオンのGPSを確認すると薬局とかいう健康体の頂点のような存在のシオンとは全く無縁の場所で長時間滞在している。



「…まさか、風邪でもひいたんか?」



異次元ミアレの調査をしていた手が止まる。

位置情報を更新すると薬局を出て、ゆっくりと歩き出している。

しかし歩調が遅く 明らかに普段のシオンじゃない。

胸がざわつきすぐにメッセージを送った。



〖今日はなんしよんや。変わったこととかあらへん?〗



既読はすぐについたが返信がない。



「(いつもやったら、すぐ返すのに……)」



もう一度位置を確認。

するとシオンは先ほどより少し速い足取りで進んでいるが 方向が……家の逆。

しかも、路地裏の危ない道へ。

「(既読無視……?シオンが?しかもなんでこんな道に……)」



シオンが絶対にしないはずのことが起き不安が急速に膨らむ。



「……すまん、ジプソ。ちょっと席外すわ、すぐ戻る」

「かしこまりました」









「…ここら辺か……」



GPSを頼りに入り組んだ路地裏を進む。

このまま行けば鉢合わせるはず。


そんな事を考えながら歩いていると、前方から現れたのはシオンではなく一人の男だった。

黒髪で、自分より遥かに背が高い。

男はカラスバを見ると、軽く会釈して通り過ぎようとする。



「───ちょい待ちぃ」



呼び止めると男は不思議そうに振り返る。

その腕の中には、ぐったりとしたシオンがいた。

鼻から血を流し、顔は真っ白で息も弱い。


その瞬間、心の奥から一気に怒りが湧き出るのを覚える



「え〜?なんですか?俺、急いでてー…」

「ほうですか。そら奇遇やな、オレも急いどってな」



カラスバは青筋を浮かべ、ゆっくり近づく。

声が低く殺意のようなものも込められている。



「その子、オレの女でな。しんどい言いよったから迎えに来たんやけど、迎え場所に居らんで心配やったんや」



男は、驚いたように目を見開く。



「へぇ、君がシオンちゃんの! そっかぁ〜、彼氏さんが来たならもう安心だね〜」

「(……シオンちゃん?)」

「名前で呼んどるけど、知り合いかなんかですか?」

「知り合いも何も兄妹だよ〜!」

「……は?」



カラスバの瞳が見開かれる。

兄妹?そんな話、一度も聞いたことがない。

胸にイラッとしたものが込み上げる。

でも今はそれどころじゃない。



「俺の名前はアンヴィ、よろしく」

「カラスバ言います。よろしゅう」



ニコニコと笑うアンヴィ

しかし一向にシオンを渡そうとしない。



「お兄さんも大変でしょう、シオンはオレが預かりますんで」



手を伸ばすと、アンヴィはそれを交わすようにひょいっとシオンを上に持ち上げる。

その仕草にカラスバの苛立ちはMAXに上がる



「……何のつもりで?」

「いやー、お兄さんの方が大変じゃない? だって、俺より力無さそうだし」

「───あ”?」



顔に筋が浮かぶ。

作っていた笑顔が引きつる。



「それにシオンちゃん持って帰ってどうするの?看病できるの?」

「はっ、何が言いたいんです?」



飄々とした態度、何もかも知っているような口ぶり──すべてが、腹立たしい。

今すぐ殴りつけたい衝動を必死に抑える。



「最近シオンちゃん1人にさせてるんでしょ?その調子なら、シオンちゃん預けても1人にしそうだなーって。

───として妹を心配するのは普通でしょ?」



オレらの何を知って、こいつはそんなことを……

いちいち腹が立つ。

やけど、 今揉めると彼奴の手の中におるシオンに負担が行くのは目に見える

拳をグッと強く握りしめ、再度笑みを浮かべる



「熱出とる恋人を1人にさすほど腐っとらんし、安心して下さいや」

「……ふぅん……1人ねぇ…男に二言は無しだよ〜?



アンヴィはパッと人懐っこい笑みを浮かべ、あっさりシオンをカラスバに引き渡した。


シオンを抱き上げると、熱が凄まじい。

アチャモも肩から飛び降り心配そうにシオンを見つめ〖早く帰ろう〗というようにカラスバの頬を突つく。



「こっからやったら事務所の方がええな」



アンヴィに小さく頭を下げたあと急いで背を向け、早足で路地を抜けるカラスバ。


その背中を、アンヴィは静かに見送った。













「……あーぁ……あとちょっとだったのに」

ざーんねん。





そんなアンヴィの低い声が、路地裏の闇に溶けた。

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