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×××の過去
夜。
焚き火はもう、小さくなっていた。
皆が眠りについたあと。
×××は、ひとり起きていた。
空を見上げる。
星が、滲んで見える。
(……思い出しちゃったな)
クロロの言葉。
「家族だった」
――嘘。
でも、全部が嘘じゃない。
そこに行き着くまでの過去が、ある。
足音。
「……起きてたか」
キルアだった。
隣に座る。
「眠れない?」
「……ちょっとね」
キルアは何も聞かず、黙って隣にいる。
その優しさに、×××は少しだけ笑う。
「……ねえ」
「私の過去、聞きたい?」
キルアは一瞬迷ってから言った。
「……嫌なら、言わなくていい」
「でも……聞きたい」
×××は、静かに頷いた。
「……私、孤児だった」
小さな村。
山に囲まれた、貧しい集落。
両親はいない。
理由も、覚えていない。
ただ、気づいたら――
ひとりだった。
「食べるものもなくて」
「……毎日、生きるだけで必死だった」
盗み。
隠れる。
逃げる。
そんな毎日。
ある日。
大人の男たちに囲まれた。
「ガキのくせに、生意気だな」
「売れるかもな」
連れて行かれそうになった、その時――
「……手を離せ」
低い声。
現れたのが、旅団だった。
クロロ。
フィンクス。
フェイタン。
一瞬で、男たちは倒れた。
「……怖かった」
「でも……助けてくれたのは、事実だった」
クロロは言った。
「生きたいか?」
×××は、必死に頷いた。
「じゃあ、来い」
それが始まり。
修行。
戦闘。
命令。
失敗すれば、制裁。
でも――
「……初めて、居場所ができた気がした」
キルアは黙って聞いている。
拳を、ぎゅっと握りながら。
「名前で呼ばれることは、なくなった」
「No.22」
「それが、私になった」
感情を殺す。
疑問を持たない。
逆らわない。
そうやって、生きてきた。
「……でも」
声が、少し震える。
「初めて、怖くなったの」
キメラアントとの戦い。
圧倒的な敵。
仲間は倒れていく。
血。
叫び。
絶望。
「……死ぬって思った」
崩れ落ちて。
視界が暗くなって。
その時――
聞こえた声。
『×××!!』
ゴン。
キルア。
クラピカ。
レオリオ。
必死に駆け寄ってきた。
「……あの時」
「初めて、番号じゃなくて」
「……名前で呼ばれた」
ぽろり。
涙が落ちる。
「……それが、嬉しくて」
「……怖くて」
「……離れたくなくなった」
キルアは、そっと言った。
「……それで、裏切ったんだな」
「……うん」
キルアは、×××の頭に手を置いた。
ぽん。
「……よく、生きてきたな」
×××の目が、見開かれる。
「……え?」
「そんな環境でさ」
「ちゃんと、優しくなれたんだぞ」
×××の胸が、熱くなる。
「……キルア……」
「泣くなよ」
「また泣くぞ」
そう言いながら、
自分も少し目が赤い。
×××は、思わず笑った。
「……キルアも」
「うるせ」
そっと。
2人の肩が、触れ合った。
その距離が、自然になっていた。
――この夜。
×××は、過去と向き合い。
そして。
本当に、前に進み始めた。
to be continued…
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