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第2話 ー囁く愛は本物で
✦ ✦ ✦
「…。依織〜」
「ん、どうしたの?」
「いや、暇だなって。」
そう言いつつ私と繋ぐ手をぎゅ、と少し強く握った。私の一回りは大きなその手が大好きだ。良く撫でてくれる優しい手。小さな頃私を守ってくれた強い手。私もそれに応じ、少し強く握り返す。
「──好きだよ、依織。愛してる」
こんな場所でもいつものように愛を告げられる。
一面の白に姉の艶のある黒髪が良く映える。毎回思うけどやっぱり姉は画になる人だ。妹の私が言うのだから間違いない。宇宙みたいに海みたいに深い、でもどこか温かい瞳も、私の前ではよく笑う口も。全部彼女のもの。私が大好きな尊敬する彼女のものだ。
✦ ✦ ✦
「…ん、」
依織は少し他所をみながら相槌を打つ。
俺がするり、と指を絡ませた。絡み合った指は懐かしくて。状況が違えば一生続いても良いと思う程に愛おしい。
「お姉ちゃん、?」
「ん〜?」
その大きな瞳に映るのは俺だけだと思うと何とも言えない誇らしい気持ちが全体を包む。
「早く、帰りたい」
「うん」
「なんでこうなっちゃったんだろ」
「…うん」
依織の口から発される言葉は悲しいものだった。俺は相槌を打つことしかできない。
励まそうにも、根本的にはどうにもできないしな、
原因は俺達の家系であった。
俺達は俗に言う“裏社会”側の人間だから、普通の人みたいに笑って平和に暮らすことが難しい。それだけならまだ耐えることもできるが、親の代で多くの敵を作りすぎてしまい、我が家の名が多く知れ渡ることとなった。全てはそのせいで、大好きな依織までもが傷つくこととなるのは何とも居た堪れない。
──佐藤家、別名[黒藤]。
当初は殺し屋としてなんとか生計を立てられるくらいだったらしい。だが祖父母辺りの代から少し名のしれた人も殺し始め、親の代がピークでどこかの社長やら幹部やらまでも殺しの対象内だった。そこで大勢が敵に回った。
その分強い仲間も居るには居るのだが…まぁ遠かったり敵が近すぎたり色々だ。
「…お姉ちゃん、ごめんあんなこと言って」
寂しい声色。別に謝らなくても良いのに。
「謝らんくて良いよ。依織も辛いもんな、」
そう言って依織の手の甲を親指で撫でた。少し安心したのか依織の表情は柔らかくなる。
その表情にさえ愛おしさが込み上げてくる。
✦ ✦ ✦
折角の幸せな空間にもアイツらは土足で踏み込んでくる。
「…おい、そこに居んのはわかってんぞ」
「⋯ッ」
俺は素早く鞘から刀を抜き相手に飛びかかる。依織の援護射撃もあるはずだ。
「依織」
「了解」
依織に銃をいくつか投げる。信頼しきっているからできる行動だ。
「じゃあね。」
そう言って次々と敵の頭を跳ねる。依織の協力もあり瞬く間に人が減っていく。
「っ、お姉ちゃん」
「ん」
「そこまで。一旦止まってもらおう。」
時計を手のひらに収めた一人の男。敵勢力の上の方の人だった気がする。…止まってもらおう?
刹那。その声を聞いた後起こったことは不可解なことばかりだった。
コメント
2件
時差コメ失礼します🙏(?) 戦ってる理由ってそういうことだったのか…重😇 不可解なことってなんだろう…🤔