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第3話ー異能
✦ ✦ ✦
この世の中は異能で溢れている。例えば時を止めたり。それがアイツだった。
俺の異能は「光・闇」で、依織は「藤」。それ関連なら能力適応でなんでもできる感じ。
異能というのは大体5歳あたりの頃に芽生えたりするものだ。なんだかんだ世界と調和して平和な世界が保たれている。
だが、俺たちの異能は日常には使えない。すっかり忘れていた。最近平和だったし……しかもこの異能に対応できるものではない。
「…も、無理か。依織、逃げて。」
俺は依織にそう言った。依織。逃げて。お願いだから。
「や⋯⋯うん、」
嫌だと粘ると思っていたが返答は思ったより早かった。依織のことだから何か計算があるのだろうか。
そうだと良いな。
最後に聞こえた依織の足音とあの男の能力を使う音。
間もなくして意識を失った。この後どうなってしまうのだろうという曖昧な気持ちを最後に。
✦ ✦ ✦
木々のざわめきがうるさい。お願いだから黙ってよ。私を一人にさせて。
嫌だ。お姉ちゃん、死なないで死なないで死なないで?今すぐ助けを呼ぶから。お願いだから、死なないで。
「お願いお願い……」
スマホをこまめに確認しつつ小走りで外へと向かっていく。
「…!繋がった…?もしもしお母さん?」
私の切羽詰まった様子にお母さんは優しく問いかける。
『どうしたの?』
「お姉ちゃんが、お姉ちゃんが…その、」
『…依織。異能、今使わないでいつ使うの?』
「あ、そっか、!うん。ありがと。また何かあったら連絡するね」
『死なないようにね。こっちからも遠隔で手助けするから』
「ありがと…」
プツ、と音をたて電話が終わる。そうだ。異能があったじゃないか。
私は来た道を急いで戻った。姉の気配を探りつつ。長い廊下を幾つも渡り、部屋も何十も置いて来た。何処に居るのか。イヤホンから連絡が入る。
『そこの道を二つ曲がって三つ目だから。気をつけて』
「ありがと、お母さん」
短いけど優しい。母の声に少し緊張が和らいだ。
今が異能を使う時…か。
重そうな扉。ドアノブに手を添える。私は息を整え、ドアノブをゆっくりと回した。