テラーノベル
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次のライブでは、K-Tの姿そのものを演出の一部にすることになった。
K-Tの顔には、手書きの線を描かない。
日常の写真とは違い、ライブ映像にも加工を加えない。
その代わり、照明によって、観客にはシルエットだけが見えるようにする。
ステージ後方から強い光を当て、K-Tの正面からは照らさない。
「Kさん、サングラスも掛けないんだよね」
メバルが尋ねた。
「必要ない」
「本当に顔が見えない?」
「照明で隠れる」
マサカゲが照明表を確認する。
「K-Tが登場する瞬間、後方ライトを最大出力。前方ライトは落とす。メバル、カキ、ミステー、アオノ、俺には上と前から照明を当てる」
「Kさんだけ、後ろからなんだね」
「顔を見せないためだ」
「写真みたいに、あとからもじゃもじゃを描く必要は?」
アオノが答えた。
「ライブ映像には加工を行わない。撮影時点で顔が判別できない状態にする」
「照明なら、Kさんが毎回編集しなくてもいいんだね」
K-Tはうなずいた。
「必要な作業が減る」
「でも、日常写真ではこれからも描くんだよね?」
「そうする」
K-Tは、テーブルの上に置かれた黒いペンを見た。
「写真では、俺が隠す」
ライブでは、照明が隠す。
方法は違っても、K-Tが素顔を知られたくないという意思は変わらなかった。
練習中、K-Tはいつものルーティーンを行った。
スネアを一度。
タムを一度。
ハイハットを三回。
シンバルを一度。
カン、カン、カン。
今度は、全員がその音に合わせた。
カキは自然にギターを鳴らし、マサカゲはベースを重ね、アオノはキーボードの音を調整する。
ミステーは、少し外れた音を出した。
「ミステーちゃん、そこ違う!」
「違う音が必要だ」
「必要でも、せめて曲の中で!」
メバルのツッコミに、カキが笑う。
K-Tは微かに首を動かした。
それが笑ったのかどうか、顔が見えないため分からない。
ライブ前日。
スタジオの窓の外に、人影が現れた。
K-Tがすぐに気づく。
「全員、下がれ」
K-Takasaka
153
#K-T
#スクラッチャーズ
#異世界転生
「また一人で前に出る気?」
「問題ない」
黒い服の人物が二人、ドアを破って入ってきた。
一人が銃を抜く。
K-Tはトンファーを構え、相手の腕を払った。
銃声が響く。
防弾チョッキが衝撃を受けた。
「Kさん!」
K-Tは相手の手首を押さえ、銃を床へ落とした。
もう一人が背後から殴りかかる。
K-Tは振り返らず、ガラケーのアンテナを伸ばして受け止めた。
アオノが敵の端末を拾う。
画面には、スクラッチャーズの公式動画が表示されていた。
日常写真に描かれた、K-Tの顔のもじゃもじゃ。
ライブ映像に映る、黒いシルエット。
敵は、その両方を解析しようとしていた。
「K-Tの正体を探している」
マサカゲが言った。
「誰かが、K-Tの存在を消したのかもしれない」
「可能性はある」
アオノが答える。
「だが、操作の証拠はない」
K-Tは端末を見た。
そこには、過去の写真が保存されていた。
K-Tがドラムを叩いている。
メバルが隣で歌っている。
カキがギターを抱えている。
マサカゲが指示を出している。
ミステーが変なポーズを取り、アオノが機材を修理している。
六人は、確かに一緒にいた。
だが、写真の説明欄はすべて空白だった。
コメント
1件
第四話、めっちゃ面白かったです!日常写真ではペンで隠して、ライブは照明のシルエット……「隠す方法」が違うだけでK-Tさんの素顔を出さない意志が一貫してるのがいいなと思いました。防弾チョッキで銃弾受けるシーンはヒヤッとしましたが、ガラケーのアンテナで殴りを受け止めるのがK-Tさんらしくて笑いました。ラストの「説明欄がすべて空白」で鳥肌。6人の過去が気になりすぎます!続き楽しみにしてます🤍