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翌日のキルア🫥と4日後の 目覚め
翌朝、学校の校門をくぐるキルアの足取りは重かった。
いつもなら軽やかにバスケ部の仲間と冗談を言いながら登校するのに、今日は違う。
リュックを肩にかけ、制服のネクタイを少し緩めたまま、歩く足はまるで鉛が詰まったかのように重い。
目は虚ろで、まるで魂の一部が抜けたように死んでいる。
教室に入ると、クラスメイトたちはキルアに声をかけようとしたが、その表情と雰囲気に思わず息をのむ。
「……キルア、大丈夫?」
担任の先生が控えめに近づき、肩に手を置く。
キルアは一瞥もくれず、ただ自分の席に向かう。
机に鞄を置き、うつむき加減に座るその姿は、いつもの明るく自信にあふれたキルアとはまるで別人のようだ。
授業が始まる前のわずかな時間、ゴンがそっと隣に座る。
「キルア……昨日のこと、無理しなくていいんだぞ」
キルアは一瞬ゴンを見たが、すぐに視線を前に戻す。
「……大丈夫だ」
声は低く、かすれている。言葉だけは普通に聞こえるが、目の奥には深い疲労と絶望が刻まれていた。
周囲の仲間たちはざわめき、クラスの中でも小さな緊張が走る。
いつもなら笑顔で交わす挨拶や冗談も、今日は届かない。キルアの目は、まだ夜の病院で見た×××の意識のない顔の記憶に支配されている。
休み時間になっても、キルアは一人で窓の外をぼんやりと眺めていた。
教室に差し込む光は暖かいのに、キルアの心には冷たい影が落ちている。
ゴンが少し離れた席から声をかける。
「……戻ってくるよ、×××は絶対に」
「×××なら絶対大丈夫!信じて待とう?」
キルアは返事をせず、ゆっくりと頷きただ手を机の上で握りしめる。
その拳の震えが、彼の心の焦りと不安を物語っていた。
目は死んでいる——でも、心の奥では、×××の意識が戻ることだけを願ってやまない。
教室の時計は昼前を指している。授業が進む中でも、キルアの目は虚ろで、ノートの文字はまったく頭に入っていない。
ペンを握る手が微かに震え、呼吸は荒い。
「キルア、ちょっと……」
隣の席のゴンが声をかける。ゴンの瞳には心配と戸惑いが混ざっていた。
「……大丈夫だ」
キルアは低く答えるが、声には力がなく、虚ろな目だけがこちらを向いている。
ゴンはそれ以上言えず、ただそっと隣に座り続ける。
放課後、バスケ部の練習時間になっても、キルアの動きはいつもより鈍い。
パスを受けても反応が遅れ、シュートの精度も落ちている。
コーチも部員も気づくほどだが、誰も直接理由を聞けない。
練習後、シャワーを浴びて着替えると、キルアは部室の隅に座り込み、携帯を握ったまま動かない。
頭の中には病院の光景が繰り返し浮かぶ。
——×××の顔。
——手を握ったあの日の感触。
——微かに震える呼吸。
「目を……開けてくれ……」
キルアは自分に言い聞かせるように、携帯の画面に×××の名前を打つ。
「×××……大丈夫か?」
返事はない。
意識はまだ戻らない。
キルアの母親からも学校に連絡が入り、夕方には病院に戻ることを告げられているが、今はその時間まで、ただ心ここにあらずのまま過ごすしかない。
教室や部室のざわめきも、校庭の声も、全部遠くで起こっていることのように感じられた。
ゴンがそっと肩に手を置く。
「キルア……俺たちも一緒にいる。無理しなくていい」
キルアはただ俯き、拳をぎゅっと握りしめる。
「無理なんかじゃない……×××が目を覚ますまでは……絶対に離れられない」
夕暮れが校舎を染める頃、キルアの目は、どこか死んだような光を湛えたまま、病院へ向かう時間を待っていた。
意識はまだ戻らない——でも、彼の心は×××に向かい続けている。
夕暮れを抜け、キルアは再び病院の緊急処置室に足を踏み入れた。
手には小さなカバン。中には飲み物やタオル、そして×××のためのハンカチが入っている。
目は虚ろで、校舎にいたときの死んだような光をまだ帯びていた。
「キルアくん……来てくれたのね」
担任の先生が声をかける。
「……ああ」
キルアは簡単に返事をするが、手を握る力は自然に×××の手に吸い寄せられるように向かう。
病院の白い光の下、意識のない×××は依然として眠ったまま。
額には冷たい汗、髪には血が混ざるが、呼吸はわずかにある。
もともと細いのになぜかいつもより細く見える。
「点滴の確認をします」
看護師が近づく。キルアはただ頷き、×××の手を離さない。
「×××……お願い……目を開けて……」
声が震える。握りしめる手も少しずつ汗で湿る。
その時、キルアの母親が到着し、そっと肩に手を置く。
「キルア、ここにいるのよ。大丈夫、私もついている」
キルアは小さくうなずく。目には涙が浮かんでいるが、声には出さない。
ゴンも到着し、そっと×××の横にしゃがむ。
「×××、絶対に大丈夫……俺たちが守るから」
キルアは涙を拭うことも忘れ、手を握る力を強める。
「×××……俺がここにいる……絶対に離れない……!」
夜が更け、外の街灯が病院の窓から差し込む。
意識のない×××。白い光と機械音に囲まれ、時間が止まったかのような病院の一室。
担任も母親もゴンも、静かに見守る。キルアは×××の額にそっと唇を寄せ、手を握り続ける。
「目を覚まして……頼む……×××……」
医師が再びチェックに入り、静かに報告する。
「出血は少しずつ止まっています。脳震盪の影響で意識はまだ戻っていませんが、生命の危険は今のところありません」
キルアはその言葉を聞き、少しだけ肩の力を抜く。しかし、目はまだ虚ろ。
「……戻るまで、絶対にここにいる……」
小さな声で誓い、手を握り続ける。
夜は深まり、病院内の音はほとんど消えた。
けれど、キルアの心は張り裂けそうに焦りながらも、絶対に×××のそばを離れないと決めていた。
意識はまだ戻らない——
けれど、キルアの腕の中で、×××は守られ続けている。
そんなこんなで
四日目の朝。病院の窓から差し込む光は、柔らかく、でもキルアの胸には重くのしかかる。
三日間、意識の戻らない×××。腕の中で手を握り続け、寝不足と疲労で肩や背中は痛い。
母親がそっと手を置く。
「キルア、ちょっとだけ目を閉じて休んでいいのよ」
「いや……離せない……」
キルアは小さく首を振り、額に寄せた×××の手をぎゅっと握る。
「×××……頼む……目を覚まして……」
ゴンも隣に座り、拳を握りしめたままそっと声をかける。
「×××、俺たちがついてる……絶対に大丈夫だ」
その時だった。
わずかに×××の指が動く。
小さな、ほんのわずかな動き。キルアは瞬間、息をのんだ。
「……×××?」
声が震える。額にそっと唇を寄せ、握っている手に力を込める。
再び、×××の肩が微かに揺れる。
息が少し荒くなり、かすかな呻きが漏れる。
「しっかりして……×××……お願い……!」
キルアは声を張り、涙が頬を伝う。
担任も母親もゴンも、思わず顔を見合わせる。
医師も駆け寄り、脈や呼吸を確認する。
「反応があります! 意識はまだ完全ではありませんが、目を開けようとしています!」
キルアは手を握りしめ、×××の額にそっと顔を寄せる。
「×××……俺だよ……キルアだ……目を開けて……!」
やがて、×××の瞳がかすかに開き、薄く光が戻る。
意識はまだ不安定だが、確かに、目がこちらを捉えた。
「……んん?……」
かすれた声が、やっと届いた。
キルアは涙をこぼし、笑いながら手を握り返す。
「よかった……生きててくれた……!」
ゴンも笑顔を浮かべ、母親も抱きしめるようにそっと手を置く。
担任も安堵の表情を見せ、そっとキルアに頷いた。
三日間の不安と焦燥が、一瞬にして溶ける瞬間だった。
意識が戻った×××の微かな反応は、キルアにとって、全ての苦痛を超える安堵だった。
to be continued…