その日 なんも頭に入ってこなかった
『グク帰ろうぜ』
『…………』
『グクお待たせー』
『?』
『どうしたの?』
『さぁ?心ここに在らずだな』
『? ねぇ グク!!帰ろう』
『え?…あ、あぁ 帰ろうか』
廊下から見える中庭
(いない…か)
『グクー早くー』
『うん』
それから数日 ジミンと会うことはなかった
ホッとしたような でもどこか残念という気持ちもあった
『ねぇ グク』
『ん?』
『何か悩み事でもある?』
『え?ないよ?』
『そう?最近考え込んでる気がしてさ…』
『大丈夫 なんも無いよ』
『そうゆう時はパァーっと遊ぼうぜー』
『いいねーwww』
『ただ遊びたいだけだろwww』
いつの間にか当たり前の日常に戻っていた
変わらない毎日だけど毎日楽しかった
この先もこのメンバーと一緒に生きていく
そう信じていた
放課後 いつものように遊び歩いた
『ヤバっ 外暗いじゃん』
『お前の負けず嫌いのせいだろwww』
『だって負けて終りたくねーじゃん!!なぁ グクなら分かるよな?』
『泣きの1回なら分かるけど…3回はなーwww』
『裏切り者ー!!』
『あははは』
『あれ?雨?』
『本当だ!! 傘ねーよ』
『お前のせいだからなー』
『ごめんって!!』
『走って帰ろうぜ』
駅に差し掛かった時
通りにある公園に傘もささず座り込む人に目がいった
(うわっ 雨に打たれて浸ってる奴いるわー)
そのまま駅に着いた
『びしょびしょじゃねーか』
『あはは やばーwww』
『お前のせいだからなー』
『なんでだよー』
『ほら、電車来たぞ』
『これじゃ座れねーな』
『端っこにいようぜ』
『グク?』
『ん?』
『どうした?』
『いや、さっきさー そこの公園で…』
〖ドアが閉まります ご注意ください〗
『グク?!』
グクは何故か電車から下りた
自分でも分からなかった
けど 体は動き出していた
『…………』
『先輩?』
『…………』
『ジミン先輩!!』
やっと顔をあげてくれた
その顔は切なさと悔しさと安堵したような複雑だった
俺は…目が離せなかった
何故かキレイだと感じていた
『君は…あれ?雨?』
『ブハッ こんなにびしょびしょなのに気付かなかったんですか?あはは』
『あはは 確かに けど何故君も?』
『あ…俺も傘ないんです』
『…あはははは 変なやつwww』
(キュッ)
(ん? なんだ)
『風邪ひく前に帰らなきゃな…』
『そうですね』
『………』
『先輩…帰りたくないんですか?』
『え?…あぁ 今日は特にな…』
『あ、君は早く帰って温まりなw風邪ひくよ』
『…うち来ませんか?』
気がついたらそう呟いていた
『え?』
『え?…あ、俺ん家そこまで遠くないし 今日は家族帰り遅いし…』
『…………』
『あ、無理には…』
『じゃ お言葉に甘えて』
『は、はい!!』
何故か凄く嬉しくてちょっと歯がゆくて
今まで感じたことのない気持ちだった
家に着くまでたわいもない話をした
学校の事、友達の事、趣味や休日の過ごし方
でも…何故か彼女については話せなかった
何故だろう…
そして…ジミン先輩は部活や家族については
話そうとしなかった
『着きました どうぞ』
『お邪魔します』
『先に風呂入ってください』
『え?悪いよ!!タオルだけ借りれたら…』
『風邪ひかれたら困ります!!俺も次入るんで』
『…じゃ…ありがとう』
俺は急いで部屋に行き掃除した
『はぁはぁ…よし!!これくらいで大丈夫だろ』
『あ!!変えの服!!』
グクは着れそうな服を持ち お風呂場に行った
『先輩 服ここに置いて…』
ドアを開けた先にはお風呂上がりの
ジミンが立っていた
細いのにしっかり筋肉が付いていて
温まった身体はほのかに赤く火照っていた
『あ、服まで貸してもらってごめん』
『…え? あ、いいえ こんなのしか無くてすみません 』
『助かるよwww』
『じゃ、リビングにいるんで出たら声掛けてください』
『分かった』
グクは急いでリビングに向かった
(なんだこのドキドキは…別に同じ男だろ…)
『先にお風呂ありがとう』
『あ、いいえ じゃ俺入ってきます…先輩俺の部屋で待っててください 2階の角部屋です』
『分かった ありがとう』
グクはずっと自問自答していた
何故 ジミンの前になると自分が自分じゃなくなりそうになるのか…
友達とは違う感情を抱きそうになるのか…
『そっか…先輩だからか!!同級生とは違って接し方があるしな…そっかそっかw』
グクは自己解決をした
それが正解か不正解かは分からないまま…
ガチャ
『お待たせしました』
『おぅ』
『それ』
『あ、勝手に読ませてもらった…すまん』
『いや、別にいいっすよ』
『なぁ…』
『はい?』
『……いや、なんでもない』
『なんですか?気になるじゃないですか』
『いや…その…ゴニョゴニョ』
『え?聞こえ無かった』
『だ、だから!!このマンガまた読みに来てもいいか!!』
『…………』
恥ずかしそうに頬を赤らめる顔が可愛くって
思わず笑ってしまった
『あはははは』
『な、なんで笑うんだよ?! やっぱりいい!!もう来ない!!』
『あはは ごめんなさい いつでも読みに来てく
ださい』
『ふんっ』
『先輩はどんなマンガ読んでるんすか?』
『…………』
『先輩?』
『ない』
『え?』
『マンガ持ってない…そんな時間…』
『先輩?』
『……ハッ ごめん 帰る』
『え?!』
『服はちゃんと返す じゃ』
バタンッ
『え?…なんだ…』
何か地雷踏んだか?
さっきまで笑ってたのに一瞬で苦しそうな顔してた
『一体なんだよ…めんどくせぇ…』
次の日
『グクおはよう』
『おっす』
『はよー』
『ねみぃー』
『そういえばお前昨日どうしたんだよ!!』
『え?あぁ…』
『いやさ、昨日急にグクが…』
何故か話すことを躊躇してしまった
そうしてるうちに友達が話し始めていた
『何それ?グク教えて?…浮気じゃないよね?』
『違うよ』
『じゃ なんだよ』
急に教室がざわめいた
その先を見ると教室のドアにジミンが立っていた
『え?!あれってジミン先輩じゃない?!』
『やばいやばい!!かっこいい!!』
女子たちの黄色い声で教室が溢れていた
『グク!!』
ジミンが呼ぶと一斉に教室や廊下からの視線がグクに集まる
『ちょっ!!お前ジミン先輩と知り合い?!』
『知り合いって言うか…』
戸惑っていると
『こら、シカトか』
紙袋で頭を叩かれた
『いてっ いや、シカトしてないっすよ』
『フッ これありがとう』
『あぁ…いつでも良かったのに』
『次いつ会えるか分からないから早めにな』
『…はい』
『じゃ 』
ジミンが去った後は周りからの質問攻めにあった
昼休み イツメンには事情を話した
『そうゆう事だったのねー浮気じゃなくて良かった♡』
『なんで隠すんだよー』
『別に隠してねーよ!!…別に大したことじゃねーし』
『でもさ あの部活休みあった?』
『あれは部活が休み無しじゃなくて先輩が毎日自主練してるからだよ』
『なるほどなー 俺は無理だわ』
『まぁ 家が家だしな』
『どうゆう事?』
『は?グク知らねーの?』
『いいから 教えろよ』
知らなかった…
そんなに凄い人だったなんて
本当は関わる事のない人なんだ…
ジミンが急に遠くに感じた
『そっか…じゃ もう会えな…は?』
『ん?何か言ったか?』
『え?! ううん なんも』
あれ?俺残念がってないか?
別にちょっと話したりしただけだし…
放課後
『今日も遊び行こうぜ』
『いいねー』
『グクも行くだろ?』
『当たり前だろwww』
『どこ行く?』
『グク?』
『なぁ ジミン先輩って何部だっけ?』
『え? 剣道だよ』
『…悪ぃ 先行ってて』
『ちょっと!!』
何故か気になった
先輩がどんな人なのか
自分の目で確かめたかった
道場につくとその場所は熱気とピリッとする空気がただよっていた
『お願いします!!!!』
そのかけ声と同時に掛かり稽古が始まった
正直何をやっているのか、勝ってるのか負けてるのかすら分からない
でも何となくかっこいいと思った
そして隙がなく動き続ける1人の部員に心奪われた
『あいつ 何かすげぇ…他のやつと何か違う』
そう思っていた時
顧問が声をかけてた
そしてその部員はゆっくり面を取った
『あ、ジミン先輩…すげぇ…本当にあのジミン先輩か?』
気が付くと部活が終わるまで見ていた
そして部員達が帰ってもジミンはひたすら
竹刀を振っていた
ピリッとした空気にグクは声をかけれずにいた
『……はぁ ん?』
ジミンはふと入り口に視線をやるとそこにグクがいた
『?!』
『グク?!どうした?!ってか いつからwww』
『いや 剣道してる先輩を見てみたくて』
『なんだよそれwww』
さっきまでの空気とはガラッと変わって優しく温かかった
『邪魔でした?』
『ううん 大丈夫』
『もう帰ります?』
『…そうだな 帰ったら稽古もあるし』
『え?まだやるんですか?!』
『あぁ…強くなるには仕方ないさ』
『楽しいっすか?』
『え?』
『いや…何か苦しそうだなーって』
『…………ブッ』
『な、なんすか?!』
『あはははは 本当にお前は面白いな』
『はぁ?!』
『帰ろう』
『?…はい』
駅まで部活のこと 家の事 少しだけ話してくれた
その時の顔は何も感じなかった
ただ淡々と話すジミンの話を聞くことしか出来なかった
『じゃ 俺こっちの電車だから 気をつけて帰れよ』
『先輩も』
『ありがとう』
ホームに去っていく後ろ姿をずっと眺めていた
テスト期間
この数日は部活がない
勉学を優先にする為 場所や道具類使用禁止されている
『あー!!無理!! 絶対赤点だ』
『俺もー』
『……』
『グク お前は?』
『ん?俺はセーフな気がする』
『はぁ?!何でだよ!!仲間だろー』
『塾か?家庭教師か?!裏切り者ー』
『やってねーよwww』
『じゃ 何で?!』
『それは…』
『グク』
振り向くとジミンが立っていた
『先輩どうしたんすか?』
『ほら、これ 昨日言ってた参考書』
『放課後でも良かったのに』
『…確かに 』
『お、おい!!グク?どうゆう事だ』
『あ、あぁ…ジミン先輩に勉強教えてもらってるんだよ』
『はぁぁぁ?!』
『ずりぃ!!』
『私には教えてくれても良かったじゃない!!』
『ごめんって』
『先輩ごめん うるさいからあっち行きましょ…』
『待て待てー!!』
『なんだよ』
『先輩!!お願いっす!!俺たちにも教えてください!!』
『え?』
『お前ら!!』
『いいよ 役に立つか分からないけどw』
『ありがとうございます!!』
その日から放課後 勉強会が始まった
初めは緊張や遠慮があったけど気がついたら打ち解けていた
『あー もう頭が爆発しそう!!』
『ほら、明日で終わりだから頑張れ』
『先輩スパルター!!!!』
『あはははは』
楽しかった
初めは何か残念な気もした気がするが
今はこの空間が楽しい
先輩が笑ってると何故か嬉しかった
でも 不意にモヤモヤするこの気持ちはなんだ?
何か衝動的になりそうになる怖さを感じ始めていた
『ねぇ グク テスト終わったらどこか行こうよぉー』
『え?』
『だって最近2人の時間ないじゃん』
『ちょっ!! 今は…』
『え?2人…付き合ってるの?』
『そうですよwえ?知らなかったんですか?!』
『仲良いなーとは思ったけど』
『あはは 先輩鈍感そうですもんねw』
『バカにすんなー』
『あはははは』
知られた
先輩に知られてしまった
いや、だからなんだよ
隠すことじゃないし 先輩は関係ないし
そう…関係ないのに
何でそんな切ない顔してんだよ先輩…
何でそんな先輩を見てるのが辛いんだよ俺…
コメント
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いつ続き出るか首を長くしてお待ちしておりました。また、次が楽しみです。