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トリカブト 〜本編〜

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トリカブト 〜本編〜

23 - 第23話 「学校」

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2023年08月07日

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1.コンビ

「よし、駆除完了っと…あとはイサナ、よろしく」

ある日、院瀬見とイサナの2人は廃れた公園に来ていた。目の前にはたった今倒したばかりの悪魔が死んでいる。

イサナが1歩前に出て、両手を叩く。悪魔が大きな泡に包まれ、跡形もなく消えた。

「その技いいよなー便利で。駆除するどころか綺麗サッパリ消え失せてやんの」

「…しゃぼん玉が割れて悪魔の血が飛び散るの、ちょっとやだ」

今日はリヅがいない。マキマに単独任務を頼まれたらしい。なかなかに面倒くさい任務を回されたようで、出かける前に「もう嫌やー帰りたいー!」と嘆いていたが…

「んじゃ、そろそろ昼だし、ラーメンでも食ってリヅに自慢してやるとすっか!」

「…ハナちゃんいないとつまんない…」

イサナがしょんぼりと肩を落とした。

「なんで?」

「…しゃぼん玉やっても見てくれる人いないから…」

「いや、ガキかよ」

院瀬見はフンと鼻で笑った。そして、イサナに向かって手招きをする。

「ほら、行くぞ。ちょうど近くに美味いラーメン屋があるんだ」

「…炒飯ある?」

「おま…!ラーメン屋だっつってんのに炒飯食うつもりか!?」

「別に…」

2.ラーメン屋にて

「えーっと…?確かこの辺に…」

件のラーメン屋を探してキョロキョロする院瀬見。イサナはそれに黙って着いていった。

「ダメだ。随分前に行ったっきりだから覚えてねぇわ。私あっち探してくっから。イサナそこで休んでな」

院瀬見にそう言われ、イサナは頷いて近くにあったベンチに腰掛けた。

「お腹空いた…」

ぼそりと呟きながら天を仰ぐイサナ。空は青く、ところどころに雲が浮かんでいた。

「あの雲美味しそう…」

院瀬見に聞かれたらまた「ガキかよ」と言われてしまいそうな台詞だが、そんなこと言われてもイサナは何も気にならない。

「イサナー!」

「!」

噂をすれば、だ。院瀬見がイサナに向かって大きく手を振っている。

「わりぃ!あっちにあったわ!」

どうやら見つけたらしい。院瀬見が自身の後ろを指さしている。空腹だったイサナは静かにベンチから立ち上がった。

「炒飯もあるってよ。良かったな」

2人がのれんをくぐって店に入ろうとしたその時だった。

「……」

「? イサナ?どうした?」

突然、イサナの表情が変わった。あさっての方向をじっと見つめ、黙りこくっている。

「イーサーナ!ほら」

「…うん」

3.気配

「だぁー、ごちそうさんしたァ!」

会計をする院瀬見を置いてイサナが先に店を出る。空は相変わらず青々としており、特に他と変わったものもない。

「イサナ。任務終わっちまったし、このまま帰るぞ。まだ報告書が残ってる」

そう言い、財布をポケットにしまった院瀬見はすたすたと歩いていった。


「…あ?」

「…どうしたの…?」

「わり、道間違えたかも。行きんときこっち通ってねぇわ」

院瀬見は軽く舌打ちをし、元きた方へ戻ろうとした。

だが、イサナが着いてこない。

「おいイサナ…帰るって─」

「待って」

院瀬見の話を遮り、イサナははっきりと言った。

「…どうした?」

「ここ、”出るよ”」

硬い表情でイサナが見つめる先には学校が建っていた。

恐らく高校だろう。雰囲気からしてそんな感じがする。

「…出るって何が?」

院瀬見の問いかけにも応じず、イサナは突然校門をくぐって校舎に向かった。

「あ、おい!」

慌ててそれを追いかける院瀬見は、イサナの感じ取っている”何か”に気づいていなかった。

「ど、どちら様ですか?」

イサナが豪快に職員室の外扉を開けてしまったため、中にいた教師全員がギョッとしたような顔をした。

イサナが先陣を切るから説明もするのかと思いきや、口下手で人見知りな性格なため、そんなことをするはずがなかった。というかできるはずがなかった。

「公安対魔特異4課だ。校長と話をさせて頂きたい」

縮こまったイサナの代わりに院瀬見が言った。何のためなのか自分でもよく分からないが、とりあえず胸ポケットに入っていた手帳を見せる。

「校長先生…は今ご不在ですね…」

「公安…ウチで何かあったんですか?」

2、3人の教師が校長を探すのを尻目に、年配の男性教師が心配そうに聞いてきた。

「いや、コイツが急に…」

「悪魔の気配がする」

「え?」

話のバトンを受け取ったかのように、今度はイサナが話し始めた。それを聞いていた教師は疑いの目を向けた。

「それ…本当ですか?勘違いとかじゃなくて?」

「公安所属の悪魔がそう言ってんだ。とにかくちょっと上の方に言えって…!」

「あ、ちょっと!」

強引に職員室に侵入しようとする院瀬見を、教師たちが懸命に押さえつけた。理解が早い彼女とは違い、まだ半信半疑なのであろう。あまり信じてもらえない悔しさを噛み締めていたその時。

「院瀬見…?」

どこからか聞き覚えのある声がした。

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