テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
第八話 偽りの記憶
星の都の夜。
かつて多くの人々が暮らしていたはずの街には、今は静寂だけが残っていた。
レインは古代都市の塔の屋上で、一人空を見上げていた。
そこには六つの月。
そして――
見えるはずのない七つ目の黒い月。
「……」
あの夜から、全てが変わった。
村で普通に暮らしていた少年。
それが今は、世界に一人しかいないと思われていた力を持つ存在になった。
「星喰い……か」
胸の紋章に触れる。
『呼んだか』
アークの声が響く。
「お前に聞きたい」
『何だ』
「俺以外の星喰いって、本当にいたのか?」
少しの沈黙。
『存在した』
「ゼルグも?」
『肯定』
「じゃあ、あいつの言っていたことは本当なのか」
『……』
「アストは裏切られたのか」
アークはすぐには答えなかった。
『記録が破損している』
「破損?」
『千年前の情報には、大量の改ざんが確認される』
レインは眉をひそめる。
「つまり、誰かが歴史を書き換えた」
『可能性が高い』
その時。
「やっぱり聞いていたのね」
振り返ると、そこにはリリアがいた。
彼女の表情はいつもの冷静さを失っていた。
「眠れないのか?」
「……眠れるわけないでしょ」
リリアは拳を握る。
「もし本当に……」
「私の一族がアストを裏切ったなら」
「私は何を信じればいいの」
レインは何も言わなかった。
簡単な言葉で慰められる問題ではない。
自分だって同じだった。
突然得た力。
突然変わった人生。
信じていた世界が崩れる感覚。
「調べよう」
レインが言う。
「え?」
「本当のことを」
「誰かの言葉じゃなくて」
「俺たち自身で」
リリアは少し驚いた顔をした。
そして小さく笑う。
「……あなた、本当に変な人」
「それ褒めてる?」
「少しだけ」
翌朝。
二人は星の都の地下施設へ向かった。
古代記録庫。
千年前の情報が保存されている場所。
しかし。
「ここまで来ても……」
リリアが扉を見る。
入口には巨大な封印。
中央には二つの紋章。
一つは星喰い。
もう一つは――
「これは……」
リリアの顔が青ざめる。
「私の一族の紋章」
レインは驚く。
「じゃあ、ここはお前たちが作った場所なのか?」
「分からない……」
リリアが手を伸ばす。
すると封印が反応した。
『血統確認』
『守護者一族』
『入場許可』
扉が開く。
中には大量の記録が並んでいた。
そして中央。
一冊の本が置かれている。
黒い表紙。
レインが近づく。
「これ……」
触れた瞬間。
映像が流れ込む。
千年前。
星の都。
そこには、まだ多くの人々が暮らしていた。
そして中央には、初代星喰いアスト。
その隣には一人の女性。
「彼女は……?」
リリアが呟く。
女性はリリアと同じ銀色の髪をしていた。
『アスト』
『本当に封印するつもりなの?』
『世界を守るためには必要だ』
アストは答える。
『だが、私が消えれば星の力を制御する者がいなくなる』
『だから君たちに頼みたい』
女性は悲しそうな顔をする。
『あなたを裏切ることになる』
『違う』
アストは首を振る。
『これは裏切りではない』
『未来へ繋ぐための選択だ』
映像が途切れる。
レインとリリアは言葉を失った。
「……違った」
リリアが呟く。
「私の一族は……」
「アストを殺したんじゃない」
「封印を手伝っただけ」
しかし。
その時。
別の声が響いた。
「そこまで知ったか」
二人が振り返る。
そこには黒いローブを着た男が立っていた。
「誰だ!」
レインが構える。
男は笑う。
「私はゼロ」
「星喰いの研究を続ける者」
アークが警告する。
『危険』
『対象……未知』
ゼロはレインを見る。
「ようやく会えた」
「完成した星喰い」
レインは睨む。
「また俺を利用するつもりか」
「違う」
ゼロは首を振る。
「私は君を救いに来た」
「救う?」
「君はまだ知らない」
「星喰いの本当の力を」
男は指を鳴らす。
地下施設全体が揺れ始める。
「星喰いは星を喰らう力じゃない」
「その先にあるものだ」
床が開く。
その奥には巨大な黒い結晶。
レインの紋章と同じ反応をしている。
「第二の星核」
ゼロが告げる。
「これを手にすれば――」
「君は本当の星喰いになる」
レインは結晶を見る。
強大な力。
欲しくないと言えば嘘になる。
だが。
その瞬間。
アークが警告する。
『注意』
『その星核を吸収した場合』
『あなたの存在は変化します』
「……」
レインは拳を握る。
力を求めるのか。
今の自分を守るのか。
選択の時が迫る。
そして地下深く。
眠っていた何かが目を覚ました。
『星喰い反応……確認』
『王の復活準備を開始』
千年前の戦いが。
再び始まろうとしていた。
コメント
1件
みぅです🤍🥀 第8話、読みました。 レインとリリアが「真実」を自分の足で確かめようとする姿、すごく刺さりました。特にリリアの「何を信じればいいの」って言葉、重すぎて何も言い返せない気持ち、分かります。 で、やっぱり歴史は誰かによって書き換えられてた。アストを裏切ったんじゃなくて、未来に託しただけだったっていうのが切なくて美しくて… でも最後のゼロの登場、そして「第二の星核」。レインがどう選択するか、すごく気になります。アークの「存在が変化する」って警告も不気味で… 次が待ち遠しいです。良いところで終わりましたね🌙