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第九話 第二の星核
地下深く。
星の都のさらに下に存在する、古代の研究区画。
そこには千年前から眠り続けていた巨大な黒い結晶――
《第二星核》が浮かんでいた。
周囲の空間が歪むほどの圧倒的な力。
それを前に、レインは立ち尽くしていた。
「これを吸収すれば……」
ゼロは静かに答える。
「君は完全な星喰いになる」
「今の君は、まだ不完全だ」
「アークの一部しか扱えていない」
レインは胸の紋章を見る。
確かにそうだった。
自分はまだ、この力の全てを知らない。
敵は強大になっていく。
ゼルグ。
古代星獣。
そして、これから現れる存在。
もっと力が必要なのかもしれない。
しかし――
「それを吸収したら……俺はどうなる」
ゼロは少し笑った。
「変わる」
「人間ではなくなる」
リリアが即座に反応する。
「レイン、やめて」
二人が見る。
「その力は危険」
「あなたがあなたじゃなくなる可能性がある」
レインは黙る。
以前、アークから言われた言葉。
『力を求めるほど、世界との繋がりを失う』
その意味が今なら分かる。
強くなること。
それは同時に何かを失うことかもしれない。
「……ゼロ」
レインが口を開く。
「お前は何のために俺を強くしようとしている」
ゼロは答えなかった。
その沈黙が答えだった。
「やっぱり何か隠してるな」
「……」
「俺は道具じゃない」
レインの胸の紋章が輝く。
「誰かに決められた力の使い方なんてしない」
ゼロの表情が変わる。
「君は力を拒むのか」
「違う」
レインは第二星核を見る。
「必要なら使う」
「でも――」
「俺が選ぶ」
その瞬間。
研究区画全体に警報が響いた。
『侵入者確認』
『危険存在接近』
リリアが剣を抜く。
「まさか……」
天井が破壊される。
黒い影が落ちてくる。
現れたのは。
巨大な鎧を身にまとった戦士だった。
全身から黒い魔力が溢れている。
『星喰い反応確認』
『排除開始』
アークが告げる。
『名称』
『黒星騎士』
『危険度……A+』
レインは構える。
「また星喰い関係かよ……」
黒星騎士が剣を抜く。
その刃には、黒い星の力が宿っていた。
「リリア!」
「分かってる!」
二人は同時に動く。
リリアの光の剣。
レインの黒い光。
二つの力が黒星騎士へ向かう。
しかし。
ガキンッ!
二つの攻撃は弾かれた。
「硬い……!」
黒星騎士は無言で剣を振る。
レインは避ける。
だが、衝撃だけで壁が崩れる。
『解析』
『対象は星喰いの力を人工的に組み込まれている』
「人工……?」
レインは驚く。
ゼロを見る。
「お前が作ったのか」
「違う」
ゼロは否定する。
「これは千年前の失敗作だ」
「星喰いを兵器にしようとした者たちの……」
黒星騎士の攻撃が再び迫る。
レインは避けながら考える。
吸収は効かない。
攻撃も通らない。
なら――
「アーク」
『了解』
「共鳴を使う」
『推奨』
レインの紋章が輝く。
《星喰い・共鳴》
周囲の星の力と、自分の力を繋げる。
すると。
黒星騎士の動きが一瞬止まった。
『……』
『認識』
『同種』
レインは驚く。
「お前も……苦しんでるのか?」
黒星騎士の剣が止まる。
初めて、声が聞こえた。
『……私は』
『作られた』
『戦うためだけに』
その言葉に、レインは息を止める。
敵ではない。
ただ利用されていた存在。
「お前も……俺と同じか」
黒星騎士の身体が揺れる。
『違う』
『私は兵器だ』
「違う」
レインは近づく。
「お前は自分で考えてる」
「なら、もう誰かの道具じゃない」
黒星騎士の剣がゆっくり下がる。
しかし――
「甘いな」
ゼロの声。
次の瞬間。
黒星騎士の胸に黒い杭が突き刺さった。
「な……」
ゼロが手を向けている。
「役目を終えた兵器に価値はない」
黒星騎士が崩れる。
「やめろ!」
レインが叫ぶ。
ゼロは冷静に言う。
「だから力が必要なのだ」
「この世界を変えるには」
「優しさでは足りない」
黒星騎士は最後の力でレインを見る。
『……星喰い』
『もし……本当に選べるなら』
『私にも……未来を』
その身体が光になる。
そして一つの黒い欠片が残った。
レインはそれを握る。
『新能力取得』
《星喰い・救済》
倒した存在の力を奪うのではなく、解放する力。
ゼロは目を細める。
「……面白い」
「君は星喰いの力を、全く別のものへ変えようとしている」
レインは睨む。
「俺は俺の道を行く」
ゼロは笑った。
「ならば見せてもらおう」
「君が世界を救うのか」
「それとも――」
「過去の星喰いと同じ結末を迎えるのか」
ゼロは姿を消した。
残された第二星核。
レインはそれを見る。
まだ答えは出ていない。
だが。
彼には一つだけ分かった。
星喰いとは。
奪う力ではない。
選ぶ力なのだ。
コメント
1件
第9話、読ませていただきました! 第二星核を前に「人間ではなくなる」という選択を迫られるレイン。でも「俺が選ぶ」って自分の意志で決めるのが本当にカッコよかったです…!黒星騎士との対峙も、敵かと思ったら実は利用された悲しい存在で、彼が「お前は自分で考えてる」と認めるシーンに胸が熱くなりました。最後に「救済」の能力を得たのも、奪うだけじゃない星喰いの新しい在り方を見せてくれて素敵です。 続き、すごく気になります!