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第4話
こんがりと焼かれたソーセージにぱくりとかぶりつく。パリッと弾けた皮の中から肉汁が溢れ出し、舌の上に旨みが広がる。
私は今日もブリジットと一緒に寮の食堂で朝食を摂っていた。朝食は基本的に毎日ビュッフェ形式であり、寮生たちは自分の好きな料理を皿に取っていくという仕組みだ。良家の子女たちが通う学園とだけあってここに雇われている料理人はなかなか腕が良いらしく、卵料理や肉料理、色とりどりの野菜のサラダなど、どれも非常に美味しいのである。
個人的にはパンも素晴らしく美味だと思うのだが、これは学園の料理人が手ずから焼いているのではなく、街のベーカリーに外注していると聞いた。今度、時間がある時に自分でも買いに行ってみよう。
「あれだけ動けるならお腹も空くわよね」
ソーセージを二口で飲み込んだ私を見ながら、ブリジットはくすりと微笑んだ。
「ねえアディ、今日の放課後一緒にお買い物へ行かない?」
「いいけど……何を買いに行くの?」
「ほら、毎年恒例の校外学習で、新入生はサナトリウムに職場見学に行くじゃない。私、今年それの引率役に選ばれちゃってるから、その準備をしようと思って。だいぶ暖かくはなったけど、外はまだ少し肌寒い時もあるから、制服の上に羽織る可愛い上着が欲しいのよ」
「ああ、そういえばそんなイベントもあったわね……」
記憶の隅を掘り起こしながら、私は言う。
このゲームにおけるサナトリウムというのはつまり療養施設のことで、心を病んでしまったり肺病を患ったりしている方たちが療養している場所だ。緑多い土地に建てられているこの学園から、そう遠くない高原地帯にある。温室も併設されているのだがそこは一般にも開放されており、美しい草花を誰でも観賞することができる。
確かその温室で植物たちの世話をしている庭師の青年がいて、ゲームでは彼も攻略対象の一人だったはずだ。名前は……エマ・アンジェリーニだったか。植物や生き物を愛する、淑女のようにたおやかな青年だったと記憶している。
本来なら怪我を負ったヒロイン、リタが、短い間だが療養する際に出会う存在だ。学園に戻ったリタが校外学習に参加し、そこで再会するというシナリオだった。
「一度しかプレイしていない割に結構覚えているわね、私」
「アディ?」
「あ、いいえ! 何でもないのよ」
私は軽くかぶりを振り、気を取り直してブリジットに言う。
「そういうことなら付き合うわ。街に行くのよね? それなら私も行ってみたいお店があるし……」
「決まりね! ありがとうアディ、大好きよ!」
「もう、ブリジット……」
快活な笑顔を見せるブリジットに、私は少々困ったように微笑みかけた。