むかしむかし、あるところに。
【Ø】は、静かに、そして。
そう、たしかに、存在していました。
1.愚弄
「…【Ø教】……?」
「うん、最近勢力を上げてる宗教名」
ニィ、と口を三日月のように歪め、
彼は答えた。
「ああ可笑しい、無知の人間如きにまさか、まさかだよ、天界の真似事をされるなんて」
馬鹿にしたように高らかに嗤うのは青年…
ではなく、白髪のショートヘアに銀白色の輪を浮かべ、背に純白の翼を生やした、紛れもない「神」であった。
開かれた淡いモスグリーンの瞳は何処までも深く、
そして身が凍るほど昏く光を透さない。
やがて横でその様子を見ていた男が、
呆れたように溜息をつく。
その男もまた、宗教関連の人物のようだ。
漆黒に沈む神父服を纏い、ほっそりとした長身で、黒い長髪を後頭で結わえている。
そして男の頭上にも、
青年の神と同じく輪が浮いていた。
色こそ異なるも、
天界族であることは間違いない。
背に羽はない。天使ではないのだろうか。
「ゼロ、かぁ……。
ふふ、まさに無知に相応しい宗教名だねぇ」
「カミラ様、天の真似をされるのはお嫌いですか」
「んー、嫌いってわけじゃない。
ただ、烏滸がましいと思うだけかな」
神父服の男が首を傾げる。
「烏滸がましい?」
「うん。
人間が神や天使の真似事をするのは、自身への自惚れからだよ」
つまり、とカミラと呼ばれた青年を象った神は微笑む。
「───勘違いも甚だしい、
愚者の成す所業だね」
2.虚像
『いやはや、悲しいことですね』
『まさか、神様に酷評をくらうなんて思いもしませんでしたよ、』
『────天の真似事、ねぇ』
ふふ、と悪戯に微笑む。
そよそよと揺蕩う風に、横髪がゆらりとなびく。
他人に観せるのは仮面の表だけ。
仮面の下から辛うじて露になっている左眼は、
おおよそ人間のものではなかった。
先ほど、散々侮蔑の視線を送ってきていた神と連れ添っていた神父服の男は立ち去ったようだ。
『逃がしませんよ、そして受け入れます』
さんさんと光る陽を浴びているにも関わらず、
そして純白色であるにも関わらず、
その髪も左眼も、
色彩を無くしたように無に沈瞰している。
その昏さは、
先ほどの神をも凌ぐほど、染まる。
────【Ø】に。
3.信仰
『Ø、故に全てを観ている。』
『Ø、故に全てを知っている。』
『Ø、故に全てを超越する力をもつ。』
『Ø、故に全てを覆す可能性を秘める。』
『Ø、故に無限である。』
『Ø、故に観測者である。』
『Ø、故に我々の神様は、偉大なる観測者である。』
『そう、【Ø】に還るのです』
あまり私を人間呼ばわりしないことですね、
と呟き、ニヤリと口元を歪める。
『さあ、
観測されし全存在よ。
観測せよ、Øを超越せよ。』
(ps.この変な宗教の主張、分かる人には分かるはず。そう、あの御方です。)
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第九章→現実とほぼの確率で同期している物語世界 雑談系→現実みたいなもん。物語であることに変わりは無いが 短編集→第九章が「あるEND」を迎えた場合の世界線と置き、その世界線での出来事などを語る物語世界。無料お試し版的な 戯れ言→第九章が「別のあるEND」を迎えた場合の(ry ¿→ 縺ェ縺懊◎繧薙*縺�@縺ヲ縺�k縺九o縺九i縺ェ縺�