テラーノベル
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❤️💛
ー❤️ー
今日も今日とて歌う。
新曲のデモが出来てバンドメンバーとセッション。
俺の今のイメージをより良くして行きたい。
だから容赦なく2人とサポートメンバーに無理難題を言う。
それにいつも着いてきてくれるのがこのメンバーだ。
有難い。俺だってただ指示してる訳ではない。
絶対にこうした方がいい、そう確信しているから。
「んなぁーむずぃぃー!」
若井がピックを持ってる指以外で髪をグシャッとした。
本当に難しいと思う。俺がそうしたのだが。
若井ならどれだけ難しくても出来るし。
チラッと涼ちゃんの方も見てみる。
「んー、ちがう…こうか…?うーんちがう…。」
涼ちゃんもキーボードに前屈みになって試行錯誤していた。
涼ちゃんも涼ちゃんで出来てしまうから。
だから俺はこの2人を信じてあえて難しくしているのだ。
「一旦ちょっと通しで。」
みんなで合わせてみる。
まぁ、出来てはいるんだろう。しかし俺には全然だ。
「お疲れ、まず、ぜんっぜんダメ。俺が思ってるのとかけ離れすぎ。若井も涼ちゃんもただ弾いてる。楽しさを微塵も感じない。俺の曲にかけてる思い、こんなんなの?正直そう思っちゃう。もうちょっと2人とも頑張って欲しい。ただ頑張るだけじゃちょっと違うけど。」
俺はいつものように厳しく言った。
「分かった。」と2人は真剣に聞いていた。
いつもいつもありがとう。
そう思いながら、俺は2人を信じている。
夜まで練習、セッションを繰り返し今日は解散した。
「あぁ…むず…早く帰って練習しよ…。」
若井がげっそりとしながらギターをしまっている。
帰っても仕事をさせてしまうのは申し訳ないが。
「涼ちゃん。」
俺は涼ちゃんに声をかけた。
涼ちゃんは俺と恋人なのだ。
譜面を見ながら険しい顔をしているが俺に呼ばれて何?といつもの顔に戻った。
「涼ちゃんも、今日はあがろ。」
もう夜も遅い。明日も変わらずセッションの予定だ。
早く帰って休ませないと。
「うん。そうする。」
そう言って譜面をしまう。
まさかこの後こんな事態になるとは。
「涼ちゃん、早く寝なね今日。」
俺は涼ちゃんに言う。
涼ちゃんはうーんと顔を顰めた。
練習したいのか。
「でも、やらないと。」
全然ダメだ。と言って地面を見る。
「涼ちゃん俺無理矢理自分を追い込むならやって欲しくない。」
俺もハチャメチャ言っている事は分かっている。
練習しなきゃ上手くはならない。
かと言って睡眠時間を削ってまではやって欲しくない。
「分かってる。分かってるけど…。」
悔しそうに、そう呟く。
「若井に、置いてかれないようにしなきゃ…。」
そう続けて言う。
「なんで、別に涼ちゃんいつもちゃんと着いてきてるじゃない。」
別に涼ちゃんだけ出来てないなんて事は思ってもいない。
俺は涼ちゃんをまっすぐ見て伝える。
「出来てない、俺は、俺はいつも、2人の足を引っ張ってるだけっ…。」
そんなこと言って欲しくなかった。
そこまで追い詰めてしまっていたのか。
俺は思わず感情的になってしまった。
「ふざけんな。そんなんで俺が頼んでると思ってんのか。」
強く、怒りに任せて言ってしまった。
涼ちゃんもいっぱいいっぱいだった。
「分かんないだろ!俺がどれだけ元貴に応えたいか!どれだけ想ってるのか!」
久しぶりに涼ちゃんが声を荒らげている。
俺はさらにヒートアップしてしまう。
「分かんねぇよ!いつも口で言わねぇだろ!」
分かってない訳がない、涼ちゃんの想いはちゃんと 分かっている。
だが今は感情的になりすぎて思ってもない事を言ってしまった。
涼ちゃんは悲しそうに寂しそうにでも怒りを抑えられまま、
「っ…もういいっ!元貴なんかに分かって欲しくない!一人で帰るっ!」
そう言って走って行ってしまった。
やってしまった。
些細な言い合いはあるが、ここまでちゃんとした喧嘩は初めてだ。
俺はその時のどうやって帰ったのか、覚えてない。
ー💛ー
俺は元貴と言い合ってしまった。
初めて元貴に感情をぶつけた。
帰ってから涙が止まらない。
「うっ…ふっ…。」
あんなこと言いたいんじゃなかったのに。
怒りに任せてつい言ってしまった。
口で言わないくせに、そう言われて図星だった。
弱音を吐きたくなくてがむしゃらになっていた。
どうしよう、明日からどうやって元貴と向き合おう。
とりあえず、落ち着いて練習しなきゃ。
俺は足を引っ張ってる、そう思っているから。
結局この日はひたすらキーボードに向き合ったけど、元貴とぶつかった事が過ぎって全然練習にならなかった。
目も泣きすぎたせいで腫れている。
「おはよ…」
小さく、控えめに挨拶をする。
元貴と若井がもう来ていた。
元貴には目を合わせず、若井の方だけ見た。
「はよ。涼ちゃん。」
若井は多分察している。
これだけ目も腫れているし。ちょっといつもと雰囲気が違う。
「おはよ。」
元貴は俺の方を見ている。ちゃんと。
でも俺はそのままキーボードの方へ向かった。
ー❤️ー
俺は誰よりも早く来てスタジオを見つめていた。
昨日はあまり眠れていない。
眠れる訳がなかった。涼ちゃんのあの悲しそうな顔が頭から離れない。
扉がガチャっと開き、
「あれ、はや。」と聞き馴染みのある声が後ろから聞こえた。
「はよ、元貴。はやくね?」
若井だった。正直若井で助かったけど。
「あぁ…はよ。」
若井は瞬時に察した。こういう俺の変化には本当に察しがいい。
「どした。」
短く、俺を見つめて。
俺の顔がいつにも増して良くなかったのだろう。
「あー、うん…。その、涼ちゃんとちょっとぶつかった…。」
俺は下を見ながら答えた。
若井はあー、と。何か覚えがあるのか。
「なぁ、元貴、ちょっと話そ。」
そう言って地面へ座った。
俺も隣に座り、若井の言葉を待っている。
「あんさ、俺涼ちゃんに無理矢理聞いてみたんよ。前に。」
若井がポツリポツリと話し始めた。
「必死になってるって思ってさ。元貴も気づいてたと思うけど。そんなムキになってやったって元貴は喜ばないよ、って。そしたらそうでもして着いていかないと、元貴に、俺に、見捨てられるって。」
涼ちゃんはそんな事思っていたのか。
知らなかった。何も。
「そんな事ないってその場は終わっちゃったけどさ。それが元貴と現実になっちゃった感じか?」
全部正解だった。
俺の顔を見て「まぁいつかはこうなると思ってた。」と。
「俺のせいだ。俺が昨日何もしてやれなかった。」
若井を見て言う。
「いや、元貴のせいでもない。これは。」
若井は1ヶ月だけど年下のくせに大人びている。
俺もこの落ち着きが欲しい。
そうしたら涼ちゃんにもっと上手く向き合えるのに。
涼ちゃんが来た時はドキッとした。
目が腫れている。
あぁ、俺のせい。若井は違うと言ってくれたが泣かせたのは俺だから。
涼ちゃんは目も合わせてくれない。
自業自得だ。
「じゃあ、始めるよ。」
無理やりセッションを始めた。
喧嘩はしているものの案外普通だった。
若井も練習してきたのだろう。
昨日よりは良くなっている。
もちろん涼ちゃんも。まだ必死さが出でいるが。昨日より全然上手くなっていた。
やはりプロだな、と思う。昨日の今日でこの仕上がりは。
しかしこのまま上達してもモヤモヤだけが残って最高と言える程のいいものが出来ない。
ちゃんと涼ちゃんと向き合わなければ。
「休憩しよ。」
そう言って一旦水を飲んだ。
そして涼ちゃんの方へ行く。
俺が来たのを察知して視線をずらした。
「涼ちゃん。昨日より上手くなってる。その調子。」
涼ちゃんはそう言われると思いもしなかったのだろう。一瞬チラッと俺を見て「あ、うん、ありがと。」
とまた視線をキーボードへ戻した。
「涼ちゃん。今日残って。」
ちゃんと話がしたい、そう思って簡潔に伝えた。
涼ちゃんも「分かった。」と答えた。
若井は黙って俺らを見守っている。
良い奴だな、お前。
今日も夜まで歌いまくり、1日が終わる。
全員が帰りそうな時、若井が俺にポンポンと肩を叩く。
「じゃあな。元貴。」頑張れと言うように。
「涼ちゃんじゃあね!無理すんなよ!」
涼ちゃんにもいつものように明るく。
涼ちゃんも「お疲れ様、気をつけてね!」と。
さて、話をしよう。
俺は全員がこの場に居なくなった事を確認して涼ちゃんへ向き合った。
「涼ちゃん、座ろうか。」
地べたにだけど。
2人で冷たい床に座る。
涼ちゃんは黙ったまま下を向いていた。
「涼ちゃん、昨日はごめんね。」
まずは謝罪をする。ただ何も考えずキレてしまったから。
涼ちゃんも俺の方をやっと見て
「元貴は、何も悪くない。俺もごめんなさい。」と目を見て言った。
「ねぇ、涼ちゃん。昨日俺あんな酷いこと言ったけどちゃんと見てるよ。涼ちゃんを。知ってるよ。人一倍頑張ってること。昨日涼ちゃんは言ったよね。足引っ張ってる、って。
それ言われてさ、悲しくて、ついキレた。ミセスとして過ごしていく中でそう思ってたんだ、って。でも本当に俺はそんな事思ったことない。引っ張ってるなんて今までで一度も。」
俺は涼ちゃんを真っ直ぐ見つめて言った。
涼ちゃんも静かに口を開く。
「俺、必死なんだ。元貴も、若井も、もちろんサポートメンバーも。皆どんどん上達していく。だから置いてかれないようにしなきゃって。やらなきゃ、無理矢理にでもって。だけど若井にも言われた。そんな事しても元貴は喜ばないって。分かってる。分かってるけど。俺はミセスでいたい。ずっと。 」
涼ちゃんはそう言った。
こんなにも想っていてくれた。ミセスの事を。
いつもしれっとこなしてくるから何も知らなかったが。
涼ちゃんはそのまま続けて言う。
「元貴、言ったよね、いつも口で言わないだろって。本当にその通りだった。俺、弱音吐くのが怖くて。押し殺してた。でもこのままじゃダメだなって昨日思って。これから曲が完成しても無理矢理向き合って作った曲になっちゃう。それは嫌だなって。」
俺は黙って聞く。初めて涼ちゃんから伝えてくれた、その想いを。
「ね、元貴。俺の事、見捨てないで…。ちゃんと伝える。これから…。どうしたらいい?って素直な感想も。だから…っ」
そんな事する訳ないだろう。俺も若井も。
もちろんミセスに関わってくれている全てのスタッフだってそう思っている。
俺は涼ちゃんの首元にそっと手をやった。
「そんな事絶対にしない。一生。これは涼ちゃんじゃなきゃダメだから。涼ちゃん、話してくれてありがとう。いっぱいいっぱいになっちゃったらちゃんと伝えて。俺が支える。」
涼ちゃんはポロッと涙を零して
「うんっ…。元貴、ごめんねっ。ありがとうっ…。」と俺の腕をそっと掴んだ。
「こちらこそ。ありがとう、涼ちゃん。」
1日かけてようやく涼ちゃんと元に戻ることが出来た。
数日後、もう完成間近、という所まで来た。
「いいんじゃない!?」
と皆盛り上がっている。
「涼ちゃんめっちゃいいじゃん!頑張ったね!」
若井が涼ちゃんの方へ声を張った。
涼ちゃんも若井へ答える。
「ありがと!若井もよくそんな難しいのこなせるよ!本当に凄いね!」と。
「元貴も、一番のプレッシャーなのに、本当に凄い。」そう付け足した。
凄いのは皆だよ。俺はあくまでもこうしたら良くなるというのをみんなにぶつけてるだけ。
そう思いながらありがとう、と伝えた。
「良かったな、元貴。」
若井に終わり際声をかけられた。
若井のおかげでもある。
「さんきゅ、若井。」
素直に感謝を伝えた。
「貸1、な。」
若井は嬉しそうに帰ろー!じゃあねー!と荷物を持って。
「元貴。」
後ろから涼ちゃんに呼ばれる。
その顔は昨日とは違う、晴れ晴れとした顔だった。
「帰ろう。一緒に。」
そう笑顔で言った。
涼ちゃんともう少し、話したい。
だが帰り道はマネージャーもいるし2人で話せる時間は家くらい。
「うん。ね、今日は泊まってこ?」
だから誘ってみた。
涼ちゃんは嬉しそうにうん、と返事をする。
家にあがり2人で座る。
「涼ちゃん、頑張ったね。本当に。ありがとう。着いてきてくれて。」
涼ちゃんの頭を撫でてそう伝えた。
「ううん、俺のためでもあるし。みんなが支えてくれたから。ありがとうは俺の方だよ。」
笑ってそう答える。
あの日気持ちを伝えた涼ちゃんはどうしたいいのか、今こう思ってる、そういうのを伝えるようになってくれた。
愛おしい、あまりにも。
「涼ちゃん、大好き。好き。」
涼ちゃんにぎゅっとして最大限になった気持ちを吐き出した。
「ええ…?なーに、いきなり…。うん。俺も…大好きだよ。元貴。 」
一瞬困ったようにしていたが俺を抱き締め返してそう言った。
俺は涼ちゃんを撫でる。
ずっと、涼ちゃんと若井と3人で歩いていけますように。そう願って。
ー喧嘩ー
リクエストありがとうございました!
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