「この液体……ど、どうしよう……触ったら…危ない‥よね」
「ええ、毒性の成分濃度が濃く、強いなら…それに尚更普通の人間にとっては危ないヨ、だから下手に触れない方が良い」
ビターギグルはそう忠告の言葉を言った。「そ、そうだよね、やっぱり……触ったら駄目な液体…だよね、これ…」「ああ、しかも恐らくジバニウムよりも毒自体の毒性成分濃度が高い…中毒症症状を起こしてしまわないように触らないでそっとしておこう」
と、バンバンはとりあえず雨漏りした雨水のようにポタポタと、落ちてくる毒液を受け止める為のバケツ的なものを配置し、この天井の材料にどれ程の毒液を浸透させているのかを確認して見る事に。
「かなりあるね、しかも多分これなら‥何処かに‥いやこのエリアの至る所に毒液を流し込めるような細工を施してあってもおかしくない。彼らの事だ、それくらい巧妙な罠を仕掛ける事だってきっとお手のものだろうね」そうバンバンは言った。
流石は此処のマスコットモンスター…あの研究者らとは長い月日を共に過ごしてきており、実際の関わりと言っても、多少実験の際に多少対話したぐらいだろうが、それでも面識、面会共に回数は地下層にいるマスコットモンスターに限っての話にはなるが、相当なものだろうし、だからこそ彼らが考えている事も大体なら筒抜けて、手に取るように…とまではいかなくても、おおよその思考回路は把握している。
「とりあえず、ある程度これ以上この部屋に進水してこないように何かで浸水元を塞いだ方が良いんじゃないか?」そうトードスターは提案した。
万が一、ふとした時にもしかしたら不意にレイラがこの毒液に触れてしまう懸念点も有り、なるべくこの毒液の進水は防いだ方が良いと考え、この部屋に液体を吸収できて防げるような布製のものがないかを探し始めた。「そうだね、万が一彼女に何かあったらいけないし、保安官の提案通りそうした方が良さそうだね」バンバン達は協力して液体の侵入を防せぐ為の物探しを全員でやる事に。
「それにしても、彼女が小さい子供だって理解してる上でこんなのを態々仕込むなんて彼らはもう少しまともな心を持っていないものなの…?何だか彼女と、彼らが同じ人間という種にいるのが驚きだわ」バンバリーナはそう言いながらも、周囲を捜索。何だかんだで探している事数分後、何だかそれっぽい事に使えそうなものが見つかり、早速敷いた。
と、此処で気になったのが、此処の他にもこの幼稚園中全てにこのような巧妙な方法で密かに忍ばせているのではないか?と、いう事。ガスだけに留まらず、液体を撒き散らしていたり‥何としてでも、彼女に触れさせて、身体に微量だろうが入れ込ませ‥更にそれで中毒症状を引き起こさせ、弱った頃合いを見計らって完全新型タイプのジバニウムと猛毒性が極めて高い猛毒性物質を複合して作るジバニウムのジバニウム実験の‥‥その前の治験を一度行う思惑も十分に考えられる事から、余計に何時もより慎重にこの場で過ごしていく必要がありそうだ。
「此処にずっと居るの、何だかつまらないし、何処かに遊べるような遊び場のエリアないかな、此処‥一応幼稚園なんだし……何処かにはそういう場所もきっとあるよね」
「ああ、まああるにはあるけど、そこにも変な小細工を施してある可能性があるし、だからあまり気軽には行けなそうだ、それに此処の幼稚園エリアの遊具施設の一部は不慮の崩落事故によって壊れてるんだ、だから下手したら、命を落としかねない 」
バンバンはそう説明した。
そうバンバンが言ったようにこの幼稚園は怪しい実験をしているだけに終わらず、その関係か遊具施設に置いてあったボールプールが園児達が遊べている最中、突然落下…大きな悲鳴と共にその当時の園児達は…………奈落の底へ落ちていってしまった…。
「そういえば、そんな話前にしてたね。じゃあ安全に遊べそうな遊具はもう、無いのかな
「いえ、ない事はない筈よ、だって事故があったのはあのボールプールでしょ?その他の遊具なら問題ないんじゃないの…?まあ、どれも子供用の遊具として設計されたとは思えない程に、一歩間違えれば子供なんてすぐに死んじゃう設計の物ばかりだから、何ともだけど」
バンバリーナは不安感に止めを刺すように恐ろしい事を暴露した。
前提として、この幼稚園があからさまにおかしいのは、目覚めて迷い込んだあの時からうっすらと分かってはいたが…。
部屋数も異常で、エリアが中には区分別に分けられていたり、カードキーやドローンを用いてじゃないと入れないようなシステムになっていたりと、考えれば考える程にこの幼稚園は……『何かがおかしい』幼稚園という事には気付いてはいたけど…
「とりあえず、君の退屈しのぎになりそうな遊び場エリアがないかを探してみよう、正直あちこち行きすぎて逆に此処のマップ構造なんてあまり覚えてないけど…まあそのうち思い出すよ」
バンバンはそう言って、レイラの為に、とちょっとでも退屈しのぎになりそうな、玩具や遊具がいっぱいあって幼い子供が満足に遊べるような遊び場エリア探しを次はやってみる事に。
「行ってみるのは良いけど、またあの人達に見つかってしまったりしないカナ、正直次見つかったら多分…レイラさん、間違いなく恐ろしい目に遭わされると思ウ、多分だけど入念に、万全な状態で彼らは実験を実践するだろうし、だからその前の治験って意味でも…」
「それは十分に理解してるよ、けど彼女はまだ幼い子供だ、子供なんて退屈や疲れ、単純な事でもストレスに繋がってしまうケースが殆どだ、だからそのためにも、しかし正直なところ、彼女は宮廷道化師…君の事を随分気に入ってるみたいだから、彼女にとっては君という存在がいるだけでも十分に満足なんだろうけど」
「そうなんダ……けどこんなにも人間の子供に気に入られるなんて何だかとても嬉しイ、王国に居た頃はこんな気持ち、滅多に経験した事がなイ 」
ビターギグルは照れ恥ずかしそうにして言った。
「戯れてないで早く行かないか‥?我々にとっては永遠でも、その人間の少女にとっては有限でしかない、無駄な時間を浪費しないでくれ」
スティンガーフリンはそう言って、バンバン達はまた歩き始めた。
「ねえねえ、そういえば遊び場エリアって何処にあるの…?」
「ああ、そう言ってもそんなに遠い距離じゃなかった筈だからすぐに着くと思うよ、けど立ち入り禁止や施錠してあったりして入られないように細工してあるなら、話が変わってくる…少なくとも彼らだって君がまた心身共に幼い子供だって事ぐらい分かってるだろうし、そんな変な真似はしてないと信じたいが‥それでも彼らならそのような事を平気でやりかねないという可能性が有り得てしまうのがまさに恐ろしい…」
「人間の子供にとって遊びというのは大切な教育の一部…それなのにそんな事されてたら台無しよ、それが本当ならあの人間達はほんとに人間の皮を被った邪道者…」バンバリーナは何やら研究者らに対して批難の一言。
そんなこんなのコミュケーションをしながら、足を進める。
「あ、あった、此処だ」
「特に施錠とかはされてないみたいだネ、安心ダ」
「此処で思う存分遊んで抱えている悩みやストレスを解消して終わりのない永遠をこの幼稚園で生きる…それが君に与えられた役目だからな」トードスターはそう言い、その一方で開かれたこの空間で、自由に遊べる子供にとってはワクワクとウキウキが止まらない、まさに夢のような場所と言っても過言ではない。
「ねえねえ、ギグル!一緒に遊ぼ!」
「え‥…?私で…良いのですカ‥? 」
「うん!だってギグルと一緒に遊んでると凄く楽しいって思えるもん!」
彼女は微笑んでビターギグルを遊びに誘う。お気に入り以上の存在になってきたのか、彼女は何かとビターギグルにべったりの事がもはや日常茶飯事になりつつある。
それを、また羨ましいと言いたそうな表情で眺めているバンバン達。
「王国ではあんなに奴が機嫌良さそうに笑っている事など滅多になかったが、こっちでは随分ニコニコ笑顔だ、女王様にも今のギグルの幸せそうな顔を見せてやりたいぐらいだ」
「そうだね、けどあの女王様は笑う事は一切の厳禁事項だから、彼の事を話すにしても気まずいんじゃないか‥?」
「ああ、それも間違いない…女王様自身もその事については不自由だと感じられてる、女王様も笑って良い性質のお方だったなら、ギグルが言う自慢のジョークも沢山聞かせて欲しいと頼んだりしてたところだが、現実はそうもいかないようだ‥」
そうして、バンバンとトードスターが話している間にもレイラはビターギグルと一緒にこの部屋沢山に広がる遊具で心置きなく遊ぶ。
「ふふっ!、はははっ!!」
楽しそうな笑い声が聞こえてきた。ずっと閉じ込められていたり異常事態の連続に見舞われてずっと気持ち的にも憂鬱な状態が続いていた為にこうやって皆んなが傍に居て、そして何より出せる空間に居られる事の喜びを噛み締める。
「それにしてもグリーンゴリラまで居て、良くこの部屋は崩壊しないな、上のエリアなんてそこまで厳重な構造で作っていない、ただの…幼稚園で人間の子供が過ごす為のスペースの筈だが… 」
トードスターはぐっーと上を見上げ、巨体のマスコットモンスター、ジャンボジョシュを見てそう言った。
普通なら壊れてもおかしくないぐらいに、そこそこの巨体を持つ彼がいても、この部屋はビクともしていない。
正直、こんなにも頑丈なら驚くのも無理はない。
「と言うか、ジョシュもついてきてたんだ…全然気付かなかった」レイラはビターギグルとの遊び
タイムに夢中になり過ぎて、他のマスコットモンスターには目もくれてなかったが、ふと思い出したかのように見てポツリ。
「ああ、きっと気配を消してたんだね、まあそれよりも君が元気に笑って楽しい時間を堪能できているようでこの部屋に案内した甲斐があったよ」バンバンはレイラに視線を向けて話した。すると、彼女はニッコリと微笑み、嬉しそうに頷いた。
そうして、楽しい時間のひと時を過ごし、「ふふっ、わあーい!あははっ!ははっ!、楽しい!」
「そうか、それなら良かった。けど、もしかしたら彼らが俺たちを探してるかもしれないから、もう暫く遊んだら一旦部屋に戻るとしよう」
「うん!分かった!」レイラはそうしてもう暫くの楽しい遊びの時間を過ごしてレイラは大好きなビターギグルと一緒に遊べてご満悦のようで、思わずにっこり笑顔。
「そろそろ戻った方が良いんじゃないか?」
「そうだね、この辺で一度戻った方が良さそうだね、それからゆっくりしよう」
「せっかく此処の部屋に来たんだ、あっちの部屋でも退屈な気持ちを少しでも減らせるように、幾つか玩具を選んで持っていっても怒られはしないだろう」
「うん…ほんとはそうしたいけど、此処には沢山玩具いっぱいあるし、けどそんなに遠くない距離ならまた来て遊ぶ、今はまだ大人しくしておく時だから……」レイラは我慢すると言って、とりあえずは気晴らしの遊びの時間は終了してこのエリアを後にし、
「そういえば、この幼稚園には勿論、身体を動かして遊ぶものもあるんだ、色んなものがあるから、少しやってみないかい?」
そうバンバンから提案された。
「わあ!、そうなの!?、うん!やってみたい!でも、それっぽいのさっきの部屋にもなかったっけ?」
「ああ、あっちは玩具がメインでもう一つ、子供の運動遊びがメインのエリアもあってね、君が此処に連れ込まれる以前まではそんな施設さえもなかったんだけど、急に大幅改良した施設にして、ちょっとでも、子供が今も尚居る幼稚園‥…と言う事にしたいんだろう」
「バンバン…なんか色んな事知ってるんだね、それに意思疎通が出来るマスコットは何だか賢いタイプの子達が多いし」
「まあ、ゲノム素材の関係で知能の有無が変わるからね、けど人間の知能だって十分に素晴らしいんだ」バンバンはそう言ってバンバンを見つめる。
そんな話をしながら、軽く今度は身体を使って遊び、遊びながら運動も同時にできる、そのような遊具がある場所へ‥‥と、後ろから突然人影の気配がして…
「あ、あれ‥…?今なんか気配が……したような‥私の勘違い‥かな 」
「私達は特にはそのような気配なんて感じなかったけど、人間の子供は色んな事に敏感なのかもネ、だから間違いじゃないと思ウ」ビターギグルはレイラに否定せず彼女に寄り添った。その事からビターギグルはあまり人間の子供に対して信用の心を持っているのが伺える。
その一方で、彼女が子供だからこそ信用しているが、大人の人間には容赦なく牙を向くとされるのが約二名……。
訪れた人間の見た目が大人か、子供かであからさまに態度を変えるのは、彼らなりにところがあるからこそだ。
「まさかとは思うが、あの人間達か…? 」
「そうね、その可能性もないとは言えないわね」
「勝手に行動してるのが、バレちゃったって事だよね、怒られちゃわないかな……」
バンバン達はレイラが感じたという人影の気配の正体が、あの研究者である可能性が高いと思ったバンバンらは急いで部屋に戻ろうとした矢先、それは……間に合わなかった。
「…………まさか、こんなところに遊びにきていたとは…それもそうか、幼い子供には同じ空間 にずっと居続けるというのは苦痛、だから散歩して気晴らしをしていたのか‥‥」とやってきたのは、もう此処で態々正体を挙げる必要も、もうないだろうがあの研究者らだ、何ともタイミングが悪い。
「え……えっと……その……」
「良いんだよ、君はまだ子供何だ。退屈なんてずっと耐えられる訳がない、何時かは我慢の限界が来るだろうとは思っていたが、思いの外早かった…ただそれだけの事さ」
「…………ごめんなさい……」
何とも妙にまずいこの事態に、ビターギグルが後ろから【こっちにおいで】と言うように手振りをしてレイラを守るようにして抱き寄せる。
「まあ良い。ああ、そうだ、君を探していたのにはちょっと訳があってね、我々が開発に尽力している完全新型の…複合型ジバニウムの治験用の物が完成してね、それで君を探していた訳だ」
そう研究者は告げた。
「や、やっぱり‥…本命の実験の前準備の…バンバン達が予測してた通りだ…、………っ」
怖くなって、レイラはビターギグルにぎゅーっと抱きついて後ろの方にそっと逃げ込んだ。
「やあ、君達も相変わらず元気そうで良かったよ、地上階のでの暮らしはどうだ?まあ、調子なんてものないと思うが……」
研究者は言った。
しかも、バンバン達のメンツの中には研究者、つまり運営側の人間の身勝手な都合で地下の方へ没落させられたのも含まれており、スティンガーフリン、トードスターの二者に至っては研究者を憎み恨んでるような、険しい顔で睨みつけた。
「まあまあ、良いじゃないか。今はこうして全員同じ階でファミリーが揃って、この幼稚園内で居られている訳だ」
「一体何処が良いんだ‥?所詮それはお前達人間の都合だろう、それにこの少女の事を優先し、その都合に合わせて我々は上げられただけ、でなければお前達人間は、我々の事などとっくに範疇にすらない、違うか?」
スティンガーフリンは研究者に圧をかけるような威圧感のある言い方でそう言った。
この言動を聞く限り、やっぱり人間に対して相当の根を持っていた事は間違いないようだ。しかも、目の前に居るのは、そんな自分達を奈落の底に突き落とした当事者のために、二人からすると余計に腹立たしい、という感情を多く抱いている様子。
「まあ、そんな事はどうでも良いんだ、時間は有限……、とりあえずどんな結果が取れるかだけも早いとこ、テストしておきたい、さあこっちへ来なさい」
研究者がそう言って、レイラに呼びかけるも、彼女はビターギグルの後ろに隠れたまま、怖くてビクビクと震えて、首を横に振って全力で拒絶。
「彼女が怖がっている、これは…罪に値しそうだ、逮捕される覚悟の準備をしておいた方が良いぞ、頭のおかしい人間共……」トードスターは保安官としての役割を発揮し、そう告げた。
「そうか…、あの人が見せた西部劇の影響で、保安官気取りの癖が抜けておらず、後遺症のように残ってるという話はほんとだったか、けど我々の功績の中で最もの最高傑作が出来上がろうとしているんだ、君らに邪魔される訳にはいかないんだ」
とその研究者は白衣にあるポケットから、注射器を出してそっと近づき、
「いや‥‥嫌だよ、痛いの…嫌だ…」レイラは怯え、それでも研究者は足を止める事なく、「奴らは俺が相手するよ、その隙に君は宮廷道化師達と一緒に逃げるんだ」
バンバンは今回もまたも足止め役を引き受けようと心強いことを言ってくれたが、
「で、でも……バンバン、これ以上バンバンだけに任せっきりなのは……嫌だよ」
「そんな事を言っている場合ではない、彼らは君にジバニウムの新薬を投与させて地獄の苦痛に陥れるつもりだ、少し前にも話しただろう…?今回のこれは、治験…それが事を上手く事を運んだら、今回以上の地獄の苦痛のみが待ち受ける…歯向かおうとすれば、尚更だ」
トードスターは今此処で刃向かい、逆らったとしてもその先に待っている事は変わらないし、逃れられもしない…と。
しかも、次の瞬間レイラにこう脅すような事を言い放った。
「良いのかい…?そんなに抵抗するなら、先ずは…『君のお気に入り』にこの液を入れないといけなくなるが…」研究者はまさかの、まるでビターギグルを人質にとって脅迫の手に出た。
彼女の園内での日々の様子をずっと、四六時中監視し続けている研究者はその中で当然、レイラとビターギグルとの築かれた関係性の事についても、把握しており、言う事を聞かない場合はビターギグルを引き合いに出せば良いと言うある意味、悪手を思い付いた。
「嫌……やめてよ…!!」
「本当に、穢いやり方をするね、君らは」
バンバンはそう言って彼らを笑うような言葉を溢した。「時間がないんだ、早く治験の結果を成さないと次の段階へ進めない、我々の計画はずっと止まったままになる、それに子供を使おうにも、中々捕まらない、そんな中でやっとの事で君を…貴重な子供を連れて来られたんだ……」
研究者はそんな言葉を溢しながら、そっとまた足を止める事なく、レイラ達の方へ歩み始めた。
「ちょっと最初痛むだけさ、まあその痛みに慣れるのは至難の業、終わりがない苦痛にの地獄はまだ始まってすらないが……」
「‥‥……、!!」
彼女は怯え震える身体で、そっと後退りして逃げる態勢を整え、そしてビターギグル達と共に、逃げようとするも、それすらももう遅かった……。
「ああ、残念だけど、もう何処にも安全な逃げ場なんてものはないよ、逃げ隠れできないように我々の方でありとあらゆる場所の部屋の鍵を封鎖させてもらったよ、だから何処にも逃げられない……」
「何で…何で、こんな事ばかりするの……貴方は達は…、私にどうなって欲しいの…?」彼女は恐怖心が湧き上がり、その感情が高ぶって涙がポツリと流れた。
「今はまだ…そんな事を知る必要はない、さあ…もう何処にも逃げ場などない」
「………!!」
彼女は恐怖の絶頂のあまり、一目散に逃げるように走る。けど、気づけば壁際に追い込まれていた、更にガシっと掴まれ、
「離して……っ!!」
「レイラさん……!?」
ビターギグルは彼女が掴まれて、注射されようとしてるのを阻止しようと駆け寄る。
「ギグルっ……!!、助けて…! 」
バタバタと暴れ、必死に抵抗の意思を表明するレイラ。
「あまり暴れられたら投与が上手く出来ないだろう…?大丈夫だ、最初のうちは痛みも軽い……まあそれも何れは地獄に変わるが……この治験が上手くいけば、将来的には、君は永遠の命の中で【君のお気に入り】と共にも終わらない永遠を過ごせるんだ、こんなに最高なことはないだろう…?さあ、良い子にして言う事を聞きなさい」と研究者はそう彼女に告げた。
「嫌だ…!!、離してっ!」
レイラは暴れて、抵抗するが、そんな抵抗も虚しく、その『液』は彼女の首元から身体へ注がれた。
「っ……!!、痛いっ!、っ!」
「また避余計に暴れられたら、今度は奥の手を出すつもりだったが、無事に終えられたから、それは止しとしよう」
「じゃあ、どんなデータが出るか、楽しみにしているよ、ほんとなら君を手術台に寝かせて大人しくしているところに打つ予定だったが、君らが部屋から出て出歩いている様子を見つけてね、態々連れていくよりも楽で助かったよ」
「…………あ……」
レイラは投与されたジバニウムによる痛みの反動で、意識を失った。そうして、次に目を覚ましたら、どうやら経過観察用の思わしき部屋に居た。
「……………んん……」レイラはゆっくりと目を開けた。此処は…?
「目を覚ましたんだね、良かった……」
「……バンバン……」
「レイラさん……良かっタ、気が付いたんだネ」
「皆んな……」
彼女が目を覚ましたのは、何やら病院にある病室…?のような場所だった。
「此処は……?」
「多分、実験に使用する実験体を監視兼、療養させる病室的な場所に思えるね、この階から下に降りた先に此処と似たような設備が整ってる部屋場所は幾つかあったのは覚えてるけど、此処にもあるなんて驚きだ……」
「君を休ませる為の部屋を探していたら、此処があったから運んできたが、此処は此処で奇妙だ」トードスターはそう言い、辺りを見渡す。一面に広がる白い部屋、本当に病室みたいな場所で、ジバニウムを保管する為と思われるビーカーもあった。
「っ……!!?、いっ……痛いっ…!!」
彼女はまた激痛に襲われ、悶え苦しみ出した。ビターギグルは即座に彼女の傍につき、「だ、大丈夫…!?、レイラさん…!? 」
「はあ‥……はあ…はあ……っ…!!、痛いっ…!、痛いっ…!」彼女は身体をぎゅーっと埋め、ジバニウムと猛毒が結合された新型ジバニウムの作用で、発生している激痛に悶絶する。
「ど、どうしよう……、えっと……」
「ジバニウムを抜き取ろうにも、もう身体の中に溶け込み始めるだろうから、どのみち…‥抜き取るのは不可能に近い、解毒剤のようなものでもあれば良いが‥‥ 」バンバンは周囲を見渡すも、それらしき物は何もなかった。
「え、じゃあどうするの…?このままでは…彼女は死んでしまうかもしれないって事だよネ、ジバニウムが血液や、人間に細胞に適合するとも限らなイ、一歩でも誤ったら…」
ビターギグルはかなり危機的な状況である事を悟り、取り乱す。
「最悪、時間はかかるかもしれないけど、【外科医】を探しに行くのも視野に入れておく必要がありそうだ、彼ならそういった手術だってお手のものだ、けど何処にいるのか…」
「そんな時間があるとは思えないが、とりあえず様子見で暫く診て、それで駄目だと判断した場合はまた考えよう」
トードスターとバンバンはそう話し合った。「はあ‥‥はあ‥…はあ…はあ……」
悶え、苦しむ声を漏らすレイラ。
しかし……これはまだ序の口、ジバニウムの激痛は、更に痛みは増す事になる。完全に、この複合型の新型ジバニウムが彼女の中に流れる血液と結合すれば、多少の痛みは緩和されるが‥‥その代わりに血液に置き換えられる為に、万が一ジバニウムが枯渇すると危険。
だが、『寿命』という概念が無くなり、彼女は本当の意味でこれからの一生えビターギグル達と過ごせるようになった……。
けど、それと同時にこれは終わりのない痛みの始まりでもある……ずっと残り続ける、痛みの始まり………。
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