「はあ……はあ……はあ……はあ……」
「大丈夫…‥かな」
ビターギグル達は心配そうにレイラを見つめる。
「……うう………痛い……っ…… 」
「取り除くにも、もう直彼女の体内で、血液として循環する事になるから、手遅れ‥どうにも出来なくなる」
「え…………じゃあほんとにどうすれば良いの…?」
「面倒になるが、痛みがこれ以上激しく、強くなってしまう前に一刻も早く外科医を探しにいく必要がありそうだ」
バンバンはそう言った。
外科医とは、前回のChapterでも話が出たもう一人の医者の存在の事で、しかしながら彼が一体今何処に居るのかまではバンバンたりでさえ、良く分かっていない。
「非常に手間はかかるが、彼も恐らく地下に落とされているのは間違いないだろうし、それに何やら彼が市長を務める街が作られたらしい、そこに行ってみるのが一人の手段になるかな」
「街……ですカ、けどそうなるとまた地下に降りなきゃいけない………面倒な事に巻き込まれるかも……妙に凶暴化した彼らが彷徨いているってなると、危険って事は避けられなイ……」
「ああ、だからそのリスクも考えて彼を探すのは私と保安官のみで行くよ。俺たちであれば、彼との親交もまあそこそこにあるから、話を聞いてくれるかもしれない、それにそもそも彼が統治するあの街は人間の立ち入りを強く禁じられていて、君が共に来た処で簡単にはきっと通してくれない」
バンバンはそう言い、『外科医探し』はバンバンとトードスターと……そうして残りのビターギグル達は、レイラの傍にいる事に。
大勢で行った場合、また彼らに目をつけられて見つかってしまう可能性が非常に高い事を踏まえると、バンバンの提案が最適解だと言える。
「しかし、問題はお前達二人が外科医を探して連れ帰ってくるまでの間、その少女が…注入された新薬ジバニウム作用で出る絶え間ない痛みに持ち堪えられるか、それが心配だ」スティンガーフリンはそんな懸念を漏らす。
その心配が出るのも無理はない。何せまだレイラは幼い子供、園児という程にまでは幼くないにしても、小さな子供である事には変わりはない。
その為に痛みに抗う抗力もそこまで成長している訳でもない為に、長時間ジバニウムの痛みに苛まれていくこれからの事を思うと、その不安が出るのは当然の事だ。それに、ジバニウムを生身の人間に直接注入して行った実験事例についても、彼女が初号となっており、前例が全くない異例のケースが行われた。
濃度も多少は薄めて調合してあるのだろうが、ゲノムクロイ現象のケースと異なっていて、更には最も異例な事は濃い濃度で、ジバニウム溶液+猛毒質の液体物質…本来のジバニウム液に加え、猛毒液が掛け合わさった事で、バンバン達の時よりも遥かに強い激痛の地獄に陥る事が予想され、最悪の事態さえ、回避不可能になってしまった。
「ああ、何とか持ち堪えられると良いが、けど手術が出来る程の技量を持っているのは彼くらいだし、どのみちどうしたって彼を探しに向かわなければならない事には変わりはない」
「迅速にあの外科医の元へ向かえるように裏道のような…そんな秘密の場所があると時間を掛けないで済むのだが、まあそう簡単にはいかないか」トードスターは周囲を見てみるも、此処は言わば入院や休養する病室のような場所で、あるのは手術の際に使用すると思われる道具や備品ばかりで。
「スポイトや、管がある…これで微量でも良いから、彼女の中から摘出出来れば、少しくらいは、希望が持てるけど、もう……そうやったところで、もう手遅れなんだよネ…?」
ビターギグルは、スポイトを手に取ってバンバン達をそっと見つめながら、そう言った。
「ああ、もうとっくに彼女の体を循環し始めている筈だから、どう足掻いても取り出すのはほぼ不可能に近いと思った方が良い、それに液が彼女の中に液が注入されて数時間は経過している」
「じゃあ、尚更どうするの?この子、下手したら死んじゃうかもしれない、それなら何か一時的にでも良いから、痛みを和らげてあげるのが最適じゃない?」
バンバリーナはそう話す。
そうして、とにかく何とかしてでもレイラに射入された複合型の猛毒ジバニウム液による激痛を和らげてあげる事ができないか、模索するバンバン達であったが、実を言えばバンバン達も本当は一生消える事のないジバニウムの痛みに付き纏われているのは、同じでだからこそ、レイラの事を少しでも助けられるように、力になりたいとバンバン達は積極的に尽力しようとしているのだ、痛みの苦しみを痛い程に痛感してきた彼らだからこそ。
「一度、少量の液を抽出してみよう、その後に人間に元々存在する細胞や血液と彼女に注入された猛毒性のジバニウムとの結合割合を検査して、どれ程結合に成功しているかを。まずは現状を確認してみないとね」
バンバンはそう言葉を投げかけ、試しに採取してみて、今の血液状態を皆んなで確かめてみる。
「じゃあ、宮廷道化師。君は彼女の身体を支えるように後ろから持って座った状況を採取が完了するまでの間なるべく保持出来るように頼むよ」
バンバンはそう指示し、レイラの体内から微量の血液を抜き出した。
その後、調べてみた結果、「ジバニウムとの遺伝子組織との結合が随分と早いね、奇跡的に相性が良かったのか、それとも単純に人間の細胞組織や粒子、血液がジバニウムの力に圧し負けたのか……この調子であれば、身体全体に行き渡って、新薬ジバニウムの溶液が、適合し、元々在った人間の細胞と適合……合わさるのもそう遅くないかもね」バンバンはそう言った。
試験管に入ったその『液』は、鮮血の血の中にジバニウム色や毒性の液体色も混ざっており、完全には全ての血液がジバニウムや猛毒液のものに成り変わった段階ではまだなかったが、何は…。
「レイラ、あれから痛みはどうなんだ?」スティンガーフリンはベットに横たわる彼女をじっと見ながら、そう質問を投げかけた。
「…………痛い………凄く……苦しいくらいに……痛みが‥……ずっと……絶え間なく……ずっと来るの…………」レイラは表情が曇り、痛みが止む事なく永遠と襲ってくるという苦痛の声を話した。
だが、それがジバニウムの最も恐ろしいところで、状態……容姿変貌、それよりも苦痛となるのが、ジバニウムの副作用である止まない激痛。
バンバンやスティンガーフリンは時に悩まされており、また鎮痛薬は愚か、痛みを和らげる事はほぼ不可能な為に一度、ジバニウムを注入されたら最後…、痛みからは解放される事などなく、悶える事となる。
「私と保安官が、あの外科医を探しに行って彼を連れて来るその間だけで良い、そのジバニウムの副作用の痛みに耐える事は出来るかい……?」
バンバンはそう優しい声のトーンで、そうレイラに聞いた。「バンバン……また何処かに行っちゃうの…? 」
「ああ、もしかしたら話聞こえてたかもしれないけど、ちょっと外科医を探しにね。君のその痛みを少しでも楽にしてあげたいって思って、その外科医は手術や治療もかなり優秀でね、君の助けにそれでなれば良いなと思ったんだ」
「バンバン……ありがとう…ギグルは……ギグルも………行っちゃうの‥?」
レイラはそうポツリとぼやいた。バンバンは良くても、ビターギグルにまで傍を離れられるのはレイラにとって寂しさが耐えきれないようで、思わずこの言葉を溢した。
ビターギグルはレイラに近寄って、ぎゅっと手を握り、「大丈夫ですヨ、私は此処から離れませんから、安心して良いですヨ」
「ギグルの手………、やっぱり不思議な感触するね…、気持ち良い…」
「君のお気に入りが傍に居てくれるなら、そんなに心配しなくても大丈夫そうだね」
「けど、本当に良いのか…?、またあの人間達に見つかったら今度こそ面倒な事になりそうだ、まあ次の段階に移行するまでは何処かで監視の目を置いてるだけだろうが、どのみち、もうあの人間達からは逃れようとするのは潔く諦めた方がマシか……」トードスターはそうぼやいた。
「ああ、その通り。下手にもう動きたくないのが本音だけど、今は彼女の命に関わる事態に俺達は直面してるからね。幼い子供の体にジバニウムが投与されたとなるとあまりに荷が重過ぎるからね、それに最悪の場合も……想定も想像もしたくないけど、だから彼に会わない事には解決の一歩も踏み出せないのは確かな事だ」
バンバンはをそう言い、とにかく彼らの監視の目から遠退いた今、行動を起こすなら今が絶好の機会だと確信したようだ。
そうして、トードスターとバンバンはレイラを救う為にビターギグル達を残して、『外科医探し』に向かった。
「行っちゃったわね、あの二人…無事に戻って来れると良いけど、どうかしらね」
バンバリーナはいきなりまた不安な事を言った。
凶悪なマスコットモンスターがこの幼稚園を徘徊、横行し以前からいたバンバリーナから見ても、今のこの『バンバン幼稚園』は、環境そのものが以前とは打って変わって、あの人間達から生み出されたあの新たなマスコットモンスターの存在も…だからそう以前のようには一筋縄ではいかない。
「そんな心配はあの悪魔と保安官には不要だろう、簡単にくたばる程ヤワな性質ではない……脳無しと違って、あの二人にも知能がある、教師あんたにもあるだろう?生死、寿命…それらの概念も消失した……それにもし、貧弱な者であるなら、とっくに息絶えてる筈だ」スティンガーフリンはそうバンバリーナに告げた後、レイラを見つめた。
そうして、バンバンとトードスターが不在の中、ビターギグル達は、レイラの状態を傍で見守る。
「っ‥‥!!?、痛いっ…!痛い……痛いっ…! 」
レイラは悶絶し、苦しみの声を上げた。
刺さり来るような激痛をぐっと抑えるように身体を埋まらせる。
「また強い痛みの波が来たみたいだネ、えっと…でも痛みを抑えられるような薬も此処には無いんだよね……えっと……どうしたら…」
ビターギグルはレイラが悶え苦しむ彼女を見つめて、心配な心が増し…動揺して思うように行動に移せない。
この地獄のような絶え間ない痛みには波があるようだ。それに痛み以外にも現状の最中レイラに襲うと思われる現象、というのがジバニウムの作用によって身体が急激に成長し…最果てにはバンバン達同様に、人間ではなくなり、未知なる新たな新種タイプのマスコットモンスターへと姿が変貌してしまうという事。
それも、バンバンやビターギグル達が後々の事で懸念視している事で、そうなってしまえばもう人間の姿が跡形も面影すらも消えるのは明白で、でもそれとは逆に人間の面影が残り、ヒト型の新たなジバニウム生体となり、ハーフのような人間に概念に成り変わる…というのも可能性としてはゼロではない。
「痛みを一時的でも良い、和らげられるものがあれば…救いがあっただろうに…」
諦めたようにそうぼやいたスティンガーフリン。
「人間の子供に‥‥しかも直接体に流し込んで、苦痛がない訳がないわ、前例もない方法でやるなんて彼らは何を考えてるの…? 」バンバリーナは研究者らの行為に呆れ果てているようだ、此処まで人間の子供に対しても、非道的な事を仕出かすとは想像もしてなかったのだろう。
「此処で、何もせずただ大人しくあの二人が帰ってくる待っていたら、彼女の容態が悪化してしまうだろう、ジバニウムが身体全体に循環して、流れゆく速さはかなり早い、痛みも何時強い波が来るかわからない、そうなると此方の方でも何かしらの行動はしておくべきかもな」スティンガーフリンは彼女が痛みに悶え苦しんでいる姿を身近で眺めていて、流石に見ていられなくなったのか、待機しているだけではなく、彼女の痛みを和らげる方法を自分達だけでも何かやれる事がないか、そう思い起こした。
「で、でも…何をすれば良いの?もう液を抜き出すにしても不可能だし、ましてや彼女を苦しめる痛みを緩和出来るような薬だって、此処には何一つ無いし 」
ビターギグルは焦りを止められない模様で、困惑状態から中々戻れないようだ。
ビターギグルはレイラの為にと、何かやれる事がないかと必死になって、方法を考えようとするも、いざ苦しんでいる彼女を目の前にすると、立ち止まってただ…傍に。
これが、唯一自分がして彼女にしてあげられる事だと。
「ギグル……ありがとう…傍にきて…くれて…… 」
レイラは絶え間なく襲い来るジバニウムの激痛に悶絶し、苦痛を長らえて、激痛の痛みにさえも向き合い、だけれど完全に身体の体が猛毒性ジバニウムに適応している訳ではなく、彼女の身体の細胞や血液が起こした拒絶反応も相まってジバニウムの副反応で巻き起こる‥‥そうなる事で、彼女に襲う痛みも必然的に……、「痛いっ…!、痛いっ…!!」悶える苦し声も止まない。
ただでさえ、耐え難いこの状況…だが、忘れてはならないのが、これはまだ『治験』の段階に在るという事。
まだ、本題前のテスト段階…つまり本命の実験の刻には、今以上の苦しみを抱えてしまう事になるという残酷な現実がこの先も待っているという悲情…。
「ねえ、これでまだ準備段階ってほんと?これ以上の痛みを彼女は抱える事になってるなんて、ほんと、あの人間こそ、人間の皮を被った化け物ね…なんて醜い」バンバリーナはそう言った。
「ああ、それにその後の過程となる計画実験もあるとなると…この少女が抱える苦痛はこれからも永遠と続き、そして今はまだ序の口と言って良いだろう、幼き子供にジバニウムの痛みを背負わせるのは、あまりにも荷が重過ぎるものだ 」スティンガーフリンはそう言い、レイラにゆっくり目をやった。
「あのお二人、無事に帰ってこれると良いけど……それにレイラさんの痛みも心配… 」
ビターギグルは常に絶え間ない激痛に苛まれる身となったレイラを見つめ、そった髪に触れた。すると、ビターギグルから触れられた事を感じ取り、和かに微笑んだ。
「ふふ、ギグル……ありがとう……ギグルが……こうして傍に居てくれてるだけでね…私…凄く幸せだよ…嬉しい‥‥の、ありがとう…ギグル」レイラは永続的に襲い来る激痛で、この短時間だけでも疲れ切ったような顔で、『たった一人だけのお気に入り』を見つめた。
バンバンとトードスターは無事に地下へ辿り着き、あの外科医を探す事が出来ているんだろうか、あの二人なら、きっと大丈夫…そう信じて待つ。
それからと言うもの‥‥、何時間もの時が流れても、それでもそう直ぐには彼ら二人が帰って来る事はなかった。
「ウスマンさん達、遅いネ…よっぽど深い地下の方にその外科医とやらは居るのかナ」
ビターギグルは彼らがこの部屋を出で、もうかれこれ数時間以上は経っており、それもあってか段々と不安な気持ちになってきた。
しかも、最悪な事にレイラに襲い来る激痛も、次第にどんどん激化していき、「痛いっ!、痛いっ!!、痛いっ…!」
ベッドの上でのたうち回り、悶絶の地獄に陥ってしまい、「ど、どうしよう…また痛みが数時間前より強くなってる…!?」
幼い子供の、耐えられる範疇を超える程に絶する痛み…「彼らが戻ってくる間だけでも良いから、何か一時的にでも痛みを抑えられるような薬がないか、探して試してみましょ」
バンバリーナはそう提案したが、あったとしてもどうしても残る不安が……、「しかし、それが人間の身体に適応するかどうか…鎮痛薬と言ってもそれはあくまで我々の生体に合わせて調合された物…下手に生身の人間の体に注入したところで、上手く作用するかの保証もない…」スティンガーフリンは無闇やたらにしようとするのは止めた方が良いと言う。
この緊急事態で、対処する方法さえ思いつかない。けど、何かしらの処置だけでもしておかなければ、ジバニウムの副反応の効力に負けてレイラは………なんて最悪の事態になる事だって十分にあり得る。
そうなってしまう前に、だがだからと言って無闇やたらに投与したりしても、人間とジバニウムモンスターとでは投与した際の効力や作用が異なるのもまた事実。
「ギグル……ギ……グル……」
激化する痛みに悶えながらも尚、ビターギグルの存在を求めている様子のレイラ。どうやら、レイラにとって彼は『お気に入り』を通り越して、ビターギグルじゃないと安心感でさえも得られなくなっている程に溺愛し始めて来ている模様。
「っ‥…!、痛い……っ!、痛いっ…!」
激痛は治まる事なく、永続的に……。
「薬がない以上……、何も出来る事ないヨ…それに、こんな状況の中じゃ…自慢のジョークだって、言う気分になれないヨ‥‥」ビターギグルはしょんぼりとした様子で、けど手はレイラの手を握ったままに。
「あの悪魔と保安官が言っていた外科医とやらはよっぽど地下の方に街を築いているようだな、随分と遅いが‥…」スティンガーフリンはほんとに長時間じっと待っているのが嫌いなようで痺れを切らして来ている。
「うん、そのようだネ。あれから…何時間が過ぎ去ったか分からないけド、全然帰ってこないネ」
「妙な事にまた巻き込まれてないと良いけど……」
その頃、バンバンとトードスターは地下に順調に降りて行き、後もう少しで探し求めている『外科医』が居ると思われるところのエリア地帯は幼稚園内設備があるあの地上階からすると、地下四階相当に相当する。
「彼が居るとするなら、この更に下のエリアか、あの街のどちらか…だろうね」バンバンはそう言いながら、今から更に降下で行くエリアを眺める。
「それにしても、無事に彼を見つけられたとしても問題は協力してくれるかどうか…」
「分からない。それに彼奴も私と一緒で人間に対しては嫌悪感を抱いてる、ふざけた人間の身勝手なる思想には呆れるし、疲れるよ、挙げ句の果てには我々を突き放し、見捨てた…」
トードスターはポツリと愚痴を溢した。
前に話したと思うが、トードスターは人間達の身勝手な都合で、見捨てられ地下のエリアに落とされて絶望に立っていたところを現在の王国の女王から拾われた…と言うのが、トードスターが経験した過去。
だからか、トードスターは人間に対してあまり信用や信頼を置いていない訳だ。
「スティンガーも大概だけど、君も人間に対してあまり良い記憶がないか…」バンバンはそういった話を交わしつつ、足を進める。
「やけにこの辺は静かだな、この辺にはあの者達は住処を広げられていないのか…」
「少し前にまで閉じ込められていたあの異常な程に厳重なエリアだけで留めてるのかもね、下手に地下エリアまで領域を増やされたら余計に手がつけられなくなってしまう…まあ、多少なりとも彼らの策…なんだろう、彼処は特別、セプター区分もされてあった感じではなかったしね」
と、それからも順調に進んで行く二人。「さて、もう少しだろう、まあ無事に会えたところで、あの外科医と会えたところで、あの外科医が快く協力してくれるかどうか、そこが不安なところだが…」
「それは確かに懸念しなければならない重要な問題だ、彼は君と同じで人間に対して反抗的な態度をと取るし、だから人間立ち入り禁止という文言まで引っ提げたあの街を作った、しかしだからってあの少女の事を思うと、そう時間もかける訳にもいかない、なるべく早く協力に応じてくれると良いが……」
そんな不安を抱えながら、歩き進める。と、「……もうすぐだ、この通りを抜けて閉ざされた部屋に彼が居るに違いない…」
バンバンはそう言い、外科医との面会に、多少の不安を混じらせながらも、着実に進みゆく。
そうして、「此処だ」
そう言って、目の前に在る扉を叩いた。果たして、この中に居るのは本当に【外科医】と称されているそのマスコットモンスターなのか。
「返事がないな、作業でもしてるのか?」
「とりあえず入ってみよう」
バンバン達は扉を開けて、「やあ、ドクター」と外科医と称されているそのマスコットモンスターに話しかけた。
(これから登場する外科医、医者マスコットの名前などの詳細は明かさず次回のChapterにて紹介を入れる予定だ。だから今回のChapterでは外科医などでの敬称で話を進める)
「何だ?ウスマンに王国の…保安官とは珍しい組み合わせだな、ちょっと今は助手の調整に忙しくて、すまないが君らの話し相手をして居る場合ではない」
その外科医はそういうので、バンバンが、「此処に態々来たのには、ちょっと緊急の事情が出来ちゃってね、ドクターはこの幼稚園に一人人間の子供が永住する事になったのは‥知ってる?」バンバンはまず、外科医がレイラの事を認知して居るかの確認を行った。
「人間の子供……ああ、それなら知ってるよ。連れて来たのもそもそも最初から彼女に本当の、欠ける事のない永遠の家族を構築させる為、それと人間とジバニウムの混血のようなハイブリッドの存在に作り変える事で永遠の命を実現させる…そうあの忌々しい人間共から説明されたよ」
「なんだ…知っていたのか 」
「ああ、しかしそれにはジバニウム生体に先ず根本を作り変える必要がある、だからその為に実験を企画した…まああの人間の言う事など虚実の可能性も在る、そんな事を考え出したらキリがないがな‥」
「知ってるなら話が早い、それに君があの人間達から仕入れたというその話にも此方としては興味深い、それよりも先ずは外科医、俺達と一緒に来てくれないか?緊急事態なんだ、下手したら彼女が危ない」
「人間は苦手だ、それに言う通りにだけ従い続けるのもつまらない…馬鹿げた人間達だ、人間という種には呆れるよ」
やはり、この言動、二人が推測していたようにこの【外科医】はかなり人間そのものを嫌悪している様子で、協力してくれそうもない。
「それはそうかもしれないが、人間の事が相当嫌いじゃなきゃあんな掟を定めた街なんて作る訳がないし、けど今回はこれまでの実験事例とは違って異例のケースなんだ、だからちょっと治療してくれるだけでも良い」
「ウスマン、お前だって医者の知識を持っている筈だが…?治療する意味もない、だって最初から企てられていた事が実行されただけに過ぎない……」
「頼む、ちょっと診察と治療をしてもらいたいだけなんだ、状態の詳細を医者のあんたの方からも診て欲しいんだ、腕利きの良い医者はあんたぐらいなんだ」
バンバンとトードスターは何とかしてでもこの外科医を説得してレイラの治療を懇願し続け、その甲斐もあり、やっと応じてくれる気になり、外科医は溜息をつきながら「‥‥はあ、分かった。協力しよう、その患者となっている人間のところへ案内してくれ、ああ…ちょっと待て、道具の準備がまだだった…」
そう言って、外科医はせっせと手術道具、治療や診察道具等を複数生えている器具のような手で器用に持ち、「さて、待たせたな」
「じゃあ行こう」
こうして、バンバンとトードスターは外科医を無事に見つけられ。レイラ達の元へ連れ戻る為に歩み行くのだった。
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