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「なあ、初兎」
いふはゆっくりとベッドに腰を下ろす。真っ赤な顔で突っ伏す初兎の背中を、優しくぽんぽんと叩いた。
「……ちょっと顔あげて?」
「無理……しぬ……」
「死なないで。告白されて死ぬのはこっちのほうなんだけど」
「まろちゃんはそういう冗談がうまいよね……やめてよ……」
小さな声でそう呟く初兎に、いふはふっと笑う。
「ほんとに、全部本音だったんだ?」
「……うん……ごまかせないんだ。0時から1時間くらい、本音しか出てこなくなる。前に変な薬くらって、それ以来……副作用?みたいな」
「そっか。でも……俺はちょっとラッキーだったな」
「……へ?」
「だって、普段だったら初兎、絶対好きって言ってくれなかったでしょ?」
「う……それは……!」
図星だった。
自分がいふを好きなことは、ずっと胸に秘めていた。
優しくて、頼れて、ちょっとズルくて……でも、誰よりも人を想ってるところ。
どんどん惹かれていったけど、バレたら今みたいに照れ死ぬのは目に見えていた。それに引かれたり、活動出来なくなったりするのが怖かった。
「……言うわけないじゃん、恥ずかしいし……」
「じゃあ、今のうちにもっと言って?」
「は!?」
「今なら、嘘つけないんでしょ?」
いふは楽しそうに笑って、ぐっと初兎に顔を近づける。
その距離は、触れられるほど近い。
「……っ、やだ……ほんとに……恥ずかしい……」
「じゃ、言わせて?」
いふの手が初兎の頬に触れる。
ゆっくりと、まるで確かめるように。
「俺、初兎のそういうとこ全部好きだよ。頑張り屋で、人のこと優先して、ちょっと抜けてて、でも可愛くて」
「…………ほんとに、好き?」
「ほんとに。マジで」
静かに目を伏せた初兎の睫毛が震える。
それから、小さく頷いた。
「……好き。ほんとに、まろちゃんが、好き……」
「……うん。俺も」
「ね、キスして良い?」
ぎゅ、と。
いふが初兎を抱きしめたあと、囁く。
「俺も、したい…」
初兎が顔を真っ赤にしながら呟いた。
夜は静かに、更けていく。
この時間だけは、本当の想いが、誰にも隠せない。
でもそれはもう、呪いなんかじゃない。
本音で繋がれた恋の始まり。
翌朝——
「うわあああああああああああ!!!!!」
自分の言動を思い出して絶叫する初兎の声が、寮中に響き渡ったのだった。
そして、廊下でニヤニヤしているいふの姿が、それをより一層恥ずかしいものにしていた。