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あの後、なんとか快諾を貰った僕は彼に椅子に座って話す事を提案したのだが、それには是を貰えず。


僕は椅子に座り、彼は窓のすぐ横に背を預けて立っている状態。

警戒されてるなあ、と心の中で少し苦笑する。



「まずお前から名乗れ」

「分かりました。先程も言いましたが、僕の名前はカナエ。一応、此処の神父をしています」

「……お前、姓は?」

「あぁ、名字ですか。…その、お恥ずかしながら実は僕、記憶喪失者でして。幼い頃、捨て子だった何も分からない僕をこの教会の前神父が拾ってくれたんです。それからは成り行きで、僕は今神父になって、まだ此処にいるんです」



個人的に関わる人数自体が少ない為、僕の記憶喪失についてこんな風に誰かに話すのは前神父以来だった。


僕は正直、神を信仰してる訳でも、前神父に強く恩義を感じている訳でもない。

そんな僕が何故神父の座を引き継いでいるのかは、本当に、成り行きだとかなんとなくだとか。そう言うニュアンスでの説明しか出来ない。


だから僕は、”一応”神父なのだ。


そしてどうやらそれらの理由を、目の前の彼は察したらしい。



「ふぅん……だから”一応”、か」

「はは。まぁ、はい。そうですね。多分貴方の想像通りですよ」



【神父と人外】     退屈とは遠い場所で

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