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白い天井。
目を開けた瞬間、全てがぼやけていた。
見える景色も、体の感覚も、少しの記憶でさえも。
吉田💛「ここ…どこ……?」
声が自分のものじゃないみたいに遠く感じた。
佐野💟「仁人……?」
目の前にいる人が俺を呼んでいる。
でも…
吉田💛「…誰……?」
思い出せないまま放った俺の言葉に、その人の表情は一瞬で曇っていった。
なんでそんな顔するの。
何も思い出せない。
そんな自分に腹が立ってくる。
佐野💟「え、ちょっと待って。」
佐野💟「俺、分かる?」
必死な声。
でも本当に分からない。
吉田💛「ごめん…分からないです…。」
それしか返すことは出来なかった。
佐野💟「嘘……だろ?」
その人は絶望したような、そんな顔をしていた。
その後医者に色々説明された。
事故とか、記憶とか。
でも全然頭に入ってこない。
ただ1つだけあの人(佐野勇斗と言うらしい)の表情だけが喉の奥にずっと引っかかっていた。
吉田💛「佐野くん。」
そう呼びかけると少しだけ寂しそうな顔をする。
佐野💟「勇斗でいいよ。」
吉田💛「いや…なんか申し訳ないし。」
少し笑ってみせる。
それなのに佐野くんは傷ついたかのような顔をしていた。
俺、何か間違ってるのかな…。
吉田💛「ごめんね…覚えてなくて。」
佐野💟「謝ることじゃないよ。」
佐野くんは必死に笑おうとしている…そんな気がした。
それから数日間。
一緒に居る時間は増えていく。
佐野くんは話して、笑って、優しくしてくれる。
でもどこか距離がある。
俺が記憶を失う前はこんな距離ではなかったのかな。
理由は分からない。
だけど心の奥底には佐野くんとの距離を思い出そうとしている俺が居た。
ふとした瞬間、視線が合うとすぐ逸らされる。
佐野くんから触れられそうで、触れられない距離。
なんでだよ………。
ある日の夕方、
吉田💛「佐野くん……。」
俺はぽつり呟く。
佐野💟「どうした?」
吉田💛「俺、」
吉田💛「なんか大切な人、忘れてる気がする。」
言った瞬間、佐野くんの呼吸が止まったような。
佐野💟「それ、もしかして…俺?」
そうだといい。
だけど 分からない から…
吉田💛「分からない。」
小さく首を振る。
佐野💟「そっか…。」
佐野くんはやはり、悲しそうな顔をしていた。
その日の夜。
佐野💟「じゃあ、また明日。」
そう言って佐野くんは帰ろうとする。
その背中を見て俺は、
このままでいいのか?
自分に問いかける。
答えを導き出す間もなく、俺は口を開いていた。
吉田💛「…勇斗。」
初めて、そう呼んだ。
佐野くん…いや、勇斗が振り向く。
目が合ったその瞬間、何かが繋がる。
吉田💛「………なんで。」
吉田💛「なんでこんなに落ち着くんだろう。」
勇斗が一歩近づいてくる。
佐野💟「……仁人?」
ああ、全て思い出した。
吉田💛「なんかさ、」
吉田💛「思い出したかも。」
佐野💟「え?」
吉田💛「俺、勇斗のこと好きだった。」
俺の言葉に勇斗の目には涙が溢れる。
佐野💟「だった、じゃなくていいだろ。」
勇斗は声を震わせながら言う。
俺は少し驚いたが、
吉田💛「うん…!」
素直に返す。
吉田💛「今も、好き。」
はっきり言う。
そのまま勇斗に強く抱きしめられる。
勇斗は俺を抱きしめ、安堵したようでひたすら泣いていた。
吉田💛「ごめん。」
佐野💟「いいよ。だって全部思い出したんだろ?」
吉田💛「うん。」
それで分かった。
勇斗は俺が忘れている間も。
俺を愛してくれていたんだ、と。
佐野💟「もう忘れんなよ。」
それだけ言って、勇斗は俺を優しく抱きしめた。
______さのじん『君との記憶』End_____
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