「…ねぇ」
「…………なに」
若井を後ろから抱き締めたまま、くぐもった声で小さく返す。
「そろそろこっち来てよ」
「無理。」
「即答…」
そりゃそっち行きたいよ。
顔見て話したいよ。
でも無理。この流れに耐えられる訳が無い。
数十分この部屋に2人きりで。
マネージャー達含め誰も来なかったからさ。
ずっと伝えたかったこと、伝えられるかな
って思って。
他愛もない会話して、笑って、良い雰囲気だったし。
若井に「好きだよ」って言おうとしたの。
言うとしたんだけど。
それ言うと同時に涼ちゃん入ってきた。
え、なに。俺なんかしたっけ。
10分以上誰も来なかった部屋にそんなベストタイミングで来ることある?
1番いい所で。
好き、って言葉に被ってドアの開く音。
荷物取りに来たらしいから事故なんだけど。
事故なんだけど、あれ絶対気付いてる。
去り際にグッドサインするんじゃないよ。
恥ずかしいの俺だから。
ほんっっっと最悪すぎる。
もしかしたらまだ気付いてないかも、って思うじゃん。
前置きしてるからね。しっかり。
「言いたいことがあってさ。
上手く言えるかは分かんないけど、とりあえず聞いて欲しい。」
ここまで言われて気付かなかったら余程の
馬鹿だと思う。
「そういえばさっきなんて言おうとしたの?」
こんな恋愛漫画の鈍感ヒロインみたいな反応が返ってくるはずもなく。
酷すぎる状況と絶妙な空気感に耐えられず、 今に至ります。
もう無理。恥ずかしすぎて死にそう。
メンバーに告白する所をメンバーに見られた挙句、言葉にする前に何となくでバレた。
余りにも完璧な流れ。
失態を思い返していると、後ろから回した腕を若井に優しく叩かれて。
「あと何分待てばいいんですか」
顔を埋めたまま3時間、と返す。
3時間どころじゃ済まないかもしれないけど。
「別に何も気にしてないのに」
若井の態度から断られる訳じゃない、って事は分かるけど。
状況が状況だから素直に喜べない。
いや、嬉しいよ。勿論嬉しいんだけど、
余りにも別の感情が割合を占めすぎてて。
「…………こっちが耐えられないんですよ」
これ以上の地獄はないんじゃないかって思うぐらいにはキツイ。
「ほんとに何も思ってないよ」
少しの間があって、もう一度そんな事を言ってくれる。
「…………うん」
きっとそれは本心なんだろうけど、どうしても続きを言葉に出来なくて。
時間が経てば経つだけ言い辛くなるのは分かっていても思いは揺らぐ。
「あ、やっぱ嘘。」
ぐるぐると巡る思考を遮るように若井が呟いた。
嘘、って。
「嬉しい、とは思った」
優しい声色に、その言葉に、心臓が鳴った。
胸が苦しくなる程の甘さ。
やっぱり、どれだけ経っても何をしても
俺は若井が好きなんだろうな。
だってこの感情、10年前から変わってない。
こんなでも嬉しいって言ってくれるなら。
目、見てちゃんと言葉にするよ。
頬に感じる熱を冷ますように息を吸って、そっと身体を離した。
コメント
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え?ちょ、……何、何が起きました?え? 私、今日は壁なんですけど……なんかすっごい事が起きた気がするんですけど……見て……良かった……ですかね?この甘い雰囲気に鼻血が出そうなんですけど、壁から急に血が流れたら雰囲気壊しますよね?だ、誰かっ!ティッシュくださぁぁぁいっ!! 以上。今日の感想は以上です。
あっまーー!!甘すぎる!!虫歯めっちゃできちゃうくらい甘いです...!言葉に言い表せないほど甘い!!上手くいかず顔も合わせれずに背中にずっと張り付いている❤️さん好きすぎる。💙さんのイケメン感やばすぎ...💙さんがほんとにイケメンすぎる。「なんとも思ってないよ」からの「嬉しいとは思った」って、❤️さんの心は完璧に射抜かれましたねこりゃ😣🫵 💛さんの︎︎👍も好きです!!とにかく最高!!