水路の入り口に近付くと、モロコやメダカが集まっている姿が見える。
整然と並びまるで何かを待っているようだ。
泳いで近寄りながらサニーはナッキに話しかける。
「ギンブナやウグイは居ないみたいだね、皆、じっとしているけど卵運びは終わったって事なのかな?」
ナッキも首を傾げながら答える。
「そうかも知れないね、あ、ほらサニー、水路から皆が出てきたよ」
ナッキの言う通り、水路からギンブナやウグイが次々と姿を現したが、何故か揃って口を真一文字に結び、一言も発していなかった。
一見して深刻な事態に感じられる様子にナッキが目を見張っていると、一際大きな体のヒットと横に並んだオーリの姿が見えた為、慌てて声を掛ける。
「ヒット、オーリ、何か有ったの? ま、まさか卵たちに深刻な被害が……」
「「…………」」
「え、そ、そうなの……」
「「…………」」
呼び掛けた声に答える事無く、チラリと視線を向けただけで無言のまま通り過ぎるヒットとオーリ。
ナッキとサニーはそれだけで察する事が出来てしまった。
卵の救出は失敗に終わってしまったのだろう、と……
「おおナッキの王様! 戻って来たんだな、おかえり! 首尾はどうだったい?」
突然投げ掛けられた声のした方を見ると、ティガが笑顔でこちらを見ていたが、その口からは幾つもの卵が|零《こぼ》れ落ち、池の底に向かって落下していくのが見えた。
「ああ、もうっ、皆が待っている場所まで口を開けないでってあれ程言ったっていうのにぃ! 全く毎回毎回……」
ブツブツと、憎々しげに言いながらモロコの衛兵が数匹、落ちて行った卵を拾いに潜って行く。
そのやり取りを見て、ナッキは先程無言で通り過ぎていった、ヒット達の姿を目で追うのであった。
メダカやモロコ達が並んだ場所のやや上部で、口を開け、そっと卵を吐き出しているギンブナ達。
丁寧に受け取った卵を下の池の砦に運び出す、モロコとメダカも真剣そのものである。
視線を元に戻したナッキには、目の前で笑顔を見せるウグイがどうしようもない馬鹿に見えた。
「首尾? あーまあね、上手くいったよ…… ティガは手が空いてるんだよね、というか使えないっぽいし…… カエル達を応援に行くから付いて来て……」
「お、おう! 行こうぜ! 俺的にはそういう仕事が向いているんだよな、ほら、俺って豪快じゃん? 細かい仕事とかガラじゃなくてよ!」
「いいから行くよ、ほら、ナッキに付いてくっ!」
「お、おう」
ナッキだけでなく、サニーにも呆れられながら、水路を上がっていく二匹を追うティガであった。
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