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鷹槻れん

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鷹槻れん

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#恋愛
水無月 京
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#オフィスラブ
草原草原

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一週間の始まりである月曜日、会社で何度も集中力を欠きながらも、なんとか一日の業務を終えた。
私がぼんやりとしている理由は土曜日のあのことに起因している。
キャンピングカーに乗せてもらい、社長と綺麗な川のほとりで過ごして……そのあとキスをされたから。
なにが起こったのか、二日経った今でも私はよくわかっていない。
考えても答えは出ないのに、あの出来事が頭から離れなくて、今日はずっとぼうっとしがちだった。
集中できないなら早めに仕事を切り上げるほうがいい。そう判断して急ぎではない仕事は明日に回した。
こんなにも仕事が手に付かないのは初めてだ。気を抜くとすぐに眉目秀麗な社長の顔が頭に浮かんでくる。
特にあのときの社長は全身から色気があふれ出ていて、私はすっかり骨抜きにされてしまった。
今思い出してもドキドキと鼓動が早まってくる。一階に向かうエレベーターの中で自分の唇にそっと触れ、誰もいないのをいいことに悶えそうになった。
もしかしたら都合のいい夢でも見たのだろうか。
たとえそうなのだとしても、胸がキュンとして最高に幸せだったのだからそれでもいいとすら思えてくる。
「香椎!」
会社の外に出ようとしたらロビーで後ろから名前を呼ばれ、振り返ると氷室くんが走り寄ってくるのが見えた。
「お疲れ様。氷室くんももう帰るの?」
「ああ。香椎こそ今日は上がるのが早いな。というか顔が赤いけどどうした? 体調悪い?」
指摘を受けた私は即座に自分の両頬に手をやり、「大丈夫」と言いつつふるふると首を横に振った。
顔が赤い原因はおとといのキスシーンを回想していたせいだ。その自覚があるため、恥ずかしくて氷室くんの顔をまともに見られなくなった。
「元気ならよかったよ。心配してたんだ」
「え?」
「始末書の件で落ち込んでただろ?」
氷室くんがやわらかい笑みを浮かべて私の顔色をうかがう。
気遣いができてやさしい人だなと感心しながら「ご心配をおかけしました」と返事をした。
「なぁ、今から飲みに行かないか? 本当は先週の金曜に誘おうと思ってたんだけど、伊地知部長に先を越された」
「私はお酒はあんまり飲めないから……」
「駅の向こう側に新しくできた焼き鳥の店、うまいらしいよ」
お酒が弱い私が相手では楽しめないだろう。それならほかの同僚も誘って何人かで行ったほうがいい。
「ふたりでだと氷室くんはつまんないでしょ。うちの部署、誰かまだ残ってたよね。声をかけてこようか」
「香椎」
踵を返してオフィスに戻ろうとしたら、氷室くんが私の手首を掴んで引き留めた。
行かなくていいという意味なのはわかったけれど、彼の表情は真剣そのもので、不自然にピンと張り詰めていた。
「つまらなくない。飲みに誘ったのだって口実だから」
「口実?」
「俺、香椎に話がある」
彼はなにか悩みごとを抱えていて私に相談したかったのだと気付いたら、自分の勘の悪さがほとほと嫌になった。
いつも氷室くんには仕事で助けてもらっているのだから、きちんと彼の話を聞いてあげたい。
「いろいろ作戦を練っても香椎に逃げられたら意味がないから……もうここで言う」
「ちょ、ちょっと待って。ここではまずいよ」
どうして早く話してしまわないと私が逃げると思っているのかはわからないけれど、この場で暴露しようとする氷室くんの腕を引っ張ってロビーの隅に移動した。
話の内容が会社や仕事に対する不満なのだとしたら、ほかの誰かに聞かれるのはまずい。そのため、せめて人目につきにくいところでと私なりに気を利かせたのだ。
「ちゃんと聞くよ。逃げたりしない」
彼が本当に話したいことはまだわからないけれど、少なくとも私を頼ろうとしてくれているのだと思うと、きちんと向き合おうという気持ちが強くなる。
「そっか。よかった」
「私たち同期だし、なんでも言って?」
神妙な面持ちでかしこまる氷室くんの顔を下から見上げると、フイッと視線を逸らされた。
なぜかそのあとみるみるうちに彼の顔が真っ赤に染まっていく。
「無意識なんだろうけど、そういうことするなよ。調子が狂う」
コメント
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夏目若葉さん、第43話読ませていただきました! 香椎さんの、社長とのキスを思い出してぼんやりしちゃう感じ、すごく共感できます…!あの日の余韻が仕事にまで影響するほど強烈だったんですね。そして最後の氷室くんの「調子が狂う」のセリフ、彼の真剣さと照れが混ざった感情がじんわり伝わってきて、胸がときめきました。二人の距離感が変わっていきそうな予感に、続きがますます楽しみです😊