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「キャラ…キャラ!!」
キャラは深い眠りにつくように、息を引き取ってしまった。
お父さんもお母さんも地底にいるみんなも
キャラの死を悲しんだ。
「ねえキャラ、この前言ってたよね」
「もう一度故郷の花畑を見たいって。」
「いいよ。連れて行ってあげる。」
ニンゲン1人とモンスター1人の魂があれば、このバリアは抜けられる。
ならキャラの魂を僕が取り込んで、地上に出ればいい。
「一緒に花を見に行こう。」
そう言って僕は、キャラの魂を取り込んだ。
魂を取り込んだ僕は、膨大な力を手に入れることが出来た。
ニンゲン1人の魂だからバリアを完全に壊すことはできないけど、
僕だけでも出れるなら。
キャラを故郷に連れて行ってあげなくちゃ。
「これが…僕?」
力がみなぎってくる。
ニンゲン1人の魂でここまでの力になるのか。
「アズ。」
キャラの声が聞こえた気がした。
「私だよ。アズ。」
「どうやら、私のケツイというものは、アズのよりも強いようでね。」
「こうして肉体はなくとも、語りかけることは出来るようだ。」
キャラと話せている!
死んでしまったキャラと…
そのことがとても嬉しかった。
でもキャラは違った。
僕と話せていることにとても喜んでいるというふうには思えなかった。
「ほら、一緒に私の故郷の花畑に行こうじゃないか。」
「私が道は教える。」
「ありがとうキャラ…」
この時点で、何か嫌な予感がしていた。
大事な物を失ってしまう気がする。
「ここが…。綺麗な花畑だね。」
僕たちは地上に出た。
明るい日差し。賑わう町。
どれも僕には新鮮だった。
でも何故か、こんなに地上に行ってみたいと思っていたのに、いざ来てみると嬉しくなかった。
「ここまで連れてきてくれてありがとうな。」
「キャラのためなら何でもするよ。」
こんな会話がずっと続けば良かったのに。
「誰だ!!!」
「!!モンスター!?」
まずい。町の人に見つかってしまった。
1人僕を見つけて声を上げたら
何人か集まってきた。
「ちょっと待って!?あのモンスターが抱えてるの、ニンゲンの子供じゃない?」
「!?まさかお前が殺したのか!」
「違う!」
「絶対この化け物が殺したに決まってるわ!」
「我々の先祖様達が、貴様らみたいな奴らを苦労して地底に閉じ込めたというのに、」
そっか…そうだよね。
ニンゲンのいる地上からしたら僕は化け物。
悪いモンスターでしかない。
そんな僕の話をちゃんと聞いてくれるはずがない。
「あぁ…またこうだよ…」
「キャラ…?」
「コイツらはいつもいつも…」
「人の話を聞かずに、自分たちの意見ばかり押し付ける…」
「いいよもう。」
「こんな人達と話してたって、時間の無駄だ。」
「もう殺してしまえ。」
「!!」
「なんだ?アズ。できないのか?」
「……っ」
「結局アズも私の為には動いてくれないんだな。」
違うんだ。
キャラが大事じゃない訳じゃない。
僕がニンゲンを傷つけた化け物になってしまうことが怖いんだ。
だから僕は…
「キャラ、一旦地底に戻ろう。」
「は?」
「おい化け物!逃げるな!」
「アズ!馬鹿なことするな!コイツらに攻撃しろ!」
「全員総攻撃だ!化け物を殺せ!」
「っ…」
やばい。ニンゲンだからって甘く見た。
少し深い傷を負ってしまった。
「ざまぁみろ!」
「モンスターの分際で、地上にこようだなんて思わないことね。」
傷が痛い。呼吸をすることすら苦しい。
「アズ!!!!」
「なぜ攻撃し返さないんだ!」
「お前なら勝てるだろう?あんな奴ら。」
「出来ないよ…」
「早く!抵抗しろよ!全力で攻撃しろ!」
キャラはそう言うけれど…
「誰かを殺すだなんて…無理だよ。」
「きっとニンゲンだって、急に自分たちよりも遥かに大きいものが現れて怖かったんだ。」
「彼らにだって家族はいる。」
「彼らが死んでしまえば悲しむ人がいる。」
「そんなの…」
「アズには到底できないって?」
「ふざけんな。」
「抵抗しないとお前が死ぬ。」
「大丈夫だよ。キャラ。」
「君の身体を傷つけさせたりはしないから。」
それからずっと、ニンゲン達による攻撃が続いた。
それでも僕は攻撃し返したりしなかった。
僕はボロボロの身を削りながら…
地底への道を歩き続けた。
「アズ…!」
「しっかりしろ!!」
「キャラ…どうだった?地上の花畑は。」
「あんな綺麗なところを知ってるなんてキャラは凄いなぁ…」
「そんなことどうでもいい!」
「このままだとアズが死んでしまう!」
これで良かったんだ。
全部疲れた。楽になりたい。
大丈夫。モンスターは死ぬんじゃない。
塵になるだけだ。そしたら存在ごと無くなる。
死ぬんじゃなくて消えるだけなんだ。
時間が経過すれば、誰からも忘れられる。
「ありがとうキャラ。」
「僕と友達になってくれて。」
「アズ…?」
「大丈夫…少し休むだけだから…」
「え…?」
「アズ?アズ…?」
「アズ!ダメだ!死なないで…」
「……」
こうして僕は息を引き取った。
ニンゲンに反撃していればこうはならなかったのだろうか。
僕にはよく分からない。
けど、これで良かったんだと思う。
キャラと僕が永遠の眠りについてから、お父さんはニンゲンを憎むようになってしまった。
これから地底に落ちてきたニンゲンは1人残らず魂を奪って、
この地底のバリアを壊すのだとか。
そんなこと僕はしないで欲しいけど……
僕は…
キャラに…ニンゲンに出会えて、
とても幸せな人生だった。