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カランカラン
僕は今日も大好きなお店で働く。
昨日は久しぶりに家に帰り、一人で寝た。
一昨日までは唯月さんと一緒に寝ていた。久しぶりの一人の夜は全然眠れなくて今日は寝不足だ。
「おはよう、陽向くん」
「店長、おはようございます、」
「寝不足ですか?」
「はい、めちゃ寝不足です」
店長は何を思ったのか分からないが、何故かニヤけている。
僕は店長の考えている事が何となく分かり、赤面する。
「店長、そういう訳では無いですよ!」
「はいはい、」
そして、店は開店した。
今日も集中してコーヒーを淹れる。
…いい匂いだな
カランカラン
「いらっしゃいませ」
「陽向さん、ですよね」
僕は驚く。
なぜなら、今来たお客様は華恋さんだったからだ。
でも、今の華恋さんには少し前までの威張った感じもなく、こちらと同じ対等な態度を感じた。
それに、前に店で出会った時とは違い、仕事に適した服を着ていた。
「華恋さん、どうしましたか?」
「お昼、展望台で話せますか?」
「…はい、」
「ありがとうございます、では」
華恋さんは店から出て行った。
コーヒーを買わずにすぐに出て行ったことから、本当に焦っていたのだろう。
「陽向くん、休憩に行っておいで」
「ありがとうございます」
そして、お昼になり展望台に行く時間になった。
今日の天気は曇りで展望台の景色はあまり良くない。
「陽向さん、来てくださったんですね」
「はい、お話とは」
華恋さんは緊張した面持ちで話始める。
「私、唯月さんの事が好きでした。今はもちろん好きではありません。それに、もしかしたら元々好きじゃなかったかもしれません」
「どういうことですか?」
僕は困惑する。
好きじゃないならあのような事はしないのが普通だろう。
「私は社長の娘として大切に育てられてきました。自分で言うのもなんですが、とても幸せな生活だったと思います。でも、最近は結婚、結婚と焦らされるようになりました」
「だからですか?」
おかしいよ、おかしい
自分勝手過ぎるよ、
「そうです、きっと私は『好き』より『執着』だったんだと思います」
「そうなんですね」
「本当にすいませんでした」
華恋さんは頭を深く下げる。
とても反省していた。恨むことなんて出来ない程に。
唯月さん、僕は許してもいいの?
「もう、しませんか?」
「はい、唯月さんには…」
「唯月さんじゃなくて!」
僕は大きな声を出す。
華恋さんも僕の声に驚いていた。
「唯月さん以外にもそういう事はしませんよね?」
「…分からないです。『好き』が分からないから、また同じ事をしちゃうかもしれないです」
僕は黙る。
呆れているのかは分からない。
いや、どうすればいいのか分からないのだろう。
『好き』が分からない、
良さそうに見えてとても悲しく、寂しいものなのだろう。
「華恋さん、僕とお友達になりませんか?」
「…なんで?」
僕もなんでこの発言をしたのかは分からない。
でも、もしかしたらお友達になったら少しは『好き』が分かるようになるかもしれない、と思ったから。
「ほら、唯月さんの事が好き同士、ね?」
「だから、私は唯月さんの事は…」
「大丈夫です、きっとこれから誰かの事が好きになれます。それまでのお友達です」
僕の言葉を聞いた華恋さんは泣き出した。
安心したのだろう。
「はい、お友達です!」
華恋さんは笑って言った。
そのくしゃくしゃになった笑顔はとても可愛くて、たくさんの人を魅了出来るような程だった。
唯月さん、華恋さんと仲良くしていても許してくださいね。
ふいに外を見ると、展望台の外に綺麗な虹がかかっていた。
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