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8人はカラオケルームを出て1階へ。1階にはクレーンゲームがズラリと並んでいる。
「さてぇ〜。お次はどうしますか」
と言いながらクレーンゲームとクレーンゲームの間を歩く。
「あ」
華音が思わず立ち止まる。礼王はチラチラと後ろを見ていたので
華音が立ち止まったのもわかった。
「どうしたの?」
クレーンゲームの景品を眺める華音の視界に、クレーンゲームのアクリルガラスに写った礼王の顔が見える。
「あ。六蓋守(ムコウモリ)くん」
「これが欲しいの?」
「あ、うん…まあ」
「やってみる?」
「でも…」
と他の6人を見ると他のみんなも立ち止まっていた華音と礼王に気づいて
「なーんしてーんの?2人でコソコソとぉ〜」
ニマニマ顔でにじり寄る子那恋(しなこ)。
「抜け駆けはいかんですなぁ〜」
と指を「ノンノン」と振りながら近づく空楽王(ソラオ)。
「いや、ちょっとクレーンゲームしたくてさ。ニ宅寺(にたくじ)さんにコツを聞いてたんだよね」
と自分がクレーンゲームをしたいことにした礼王。
「クレーンゲームかぁ〜。なんかいいのあるかな」
と空楽王もクレーンゲームを物色し始める。
「お。私これやろ」
と優佳絵(ゆかえ)が某バスケ漫画のフィギュアのクレーンゲームの前で立ち止まる。
「あ。シロクマ」
真風菜(まふな)はシロクマのぬいぐるみのクレーンゲームの前で立ち止まる。
「あぁ〜!ダレモン(ヨダレモンスターの略称)だぁ〜!」
子那恋がクレーンゲームのアクリルガラスに手をついて中を眺める。
女子は全員やりたいクレーンゲームが違っていた。
「なんか勉強に役立つものないかな…」
と呟いている鏡に
「んなんねぇーよ!」
と空楽王が鏡の背中を押す。
「おぉ!っおっとっと」
と押されてたどり着いた先。
「おぉ。須木弁(スギべ)くん」
優佳絵の隣だった。鏡は振り返り、押した空楽王を見る。すると空楽王は無言で
灰水部(ハスベ)さんのためにカッコよく取ってあげろ!
とうるさいまでの顔で鏡に伝えていた。
取ってあげろって言われても…
と困る鏡。
「さぁ〜て。オレちゃんはぁ〜」
空楽王は歩き回った。だが特に欲しいものがなかった。
「誰かの茶々でも入れにいくかなぁ〜」
と歩いていると
JEWELRY BOYSのメンバー毎のブレスレット!!
あなたの推しのブレスレットをつけて、あなたも“キラキラ”
と書いてあったのを見つけた。
「お。音多木野(オトキノ)が好きなやつじゃん」
と気づいたらお金を入れていた。空楽王はJEWELRY BOYSのクレーンゲームを
真風菜はシロクマのぬいぐるみのクレーンゲームを、子那恋はダレモンのクレーンゲームを
華音は「激痛!!ピアスちゃん」のクレーンゲームを、礼王は華音のサポートを
優佳絵は某バスケ漫画のフィギュアのクレーンゲームを、鏡はそのサポートをすることになった。
真風菜はシロクマのぬいぐるみのキーホルダーにトライしていた。まずはクレーンを横に動かし
雪のように山になっているシロクマのぬいぐるみに向かって今度は奥に動かす。
特にこれといって狙うことなくクレーンを下ろす。
どれか取れて
雪崩が起きると思ったがアームが弱く、シロクマとシロクマの間に少し入り
奥まで入ることなく、シロクマが少し動いただけで、なんの収穫もなくクレーンは元の位置に戻った。
「んん〜」
再トライ。
「可愛いのか可愛くないのかわからないラインのダレモン。惹かれるんだよなぁ〜」
クレーンを操作しながら呟く子那恋。
いろいろな種類のダレモンをクレーンが動かし、なんの収穫もなくクレーンは元の位置に戻った。
「あぁん!」
再トライ。
「これどうやればいいの?」
もう2回ほどチャレンジして撃沈していた優佳絵。横で見ている鏡に聞く。
「あ。え。あぁ。うぅ〜ん。いや、わかんないですけど
基本的にクレーンゲームはアームは強くないと考えて
こういう箱型のものだと、底を掴むってよりは、その箱の」
とクレーンゲームの中の箱を指指す鏡。
「側面の隙間?そこにアームを差し込む感じがいいんじゃないかと」
「ほお。なるほどね。私にそんな芸当ができるかどうかだけど」
「頑張って、ください。灰水部(ハスベ)さんなら、できると思います」
とデクレッシェンド(次第に弱く)で言う鏡。
しかし優佳絵には聞こえており、クレーンゲームの中の景品を見つめたまま
「サンキュ。ま、買い被りすぎだと思うけど」
と言う優佳絵の横顔があまりにも綺麗すぎて見惚れる鏡。
「なんか取れた」
空楽王は2回目で奇跡的にブレスレットを獲得していた。
「才能?」
なんて呟いて3回目を始めた。
「それだよね?」
「うん。その黒髪青インナーカラーの子」
「おっけ。奥は僕がストップって言うね」
「ありがと」
と華音と礼王は協力していた。真風菜のチャレンジは5回目。すべて100円を入れていたが
5回チャレンジするなら500円入れて6回プレイにすればよかったと若干後悔しつつもプレイする。
メガネをかけたシロクマ黒髪のシロクマ、いろいろなシロクマがいたが
真風菜が取ろうとしていたのが、てるてる坊主のようなシロクマ。
なぜそれにしたか。てるてる坊主をモチーフにしているため顔はへのへのもへじなのだ。
シロクマ×へのへのもへじ
平野(への)くんじゃん
見つけた瞬間思った。そのてるてる坊主シロクマ、もといへのへのもへじシロクマを
徐々に動かし、5回目。胴体にアームが入る。
「来たっ!」
持ち上がったてるてる坊主シロクマ。
しかしクレーンが一番上についたとき、反動で落ちた。真風菜の首も落ちた。
「っ…はぁ〜…」
「取れたぁ〜!っんんっ!」
嬉しさのあまりその場で一回転する子那恋。
景品受け取り口からダレモンのぬいぐるみキーホルダーを取り出す。
「んん〜?なになにぃ〜?」
タグの部分を見る。
「日本人の綺麗に見える金髪ってただ光が反射して痛みが目立ってないだけだから。
よく見たら傷みすぎてパサパサの金髪イエロー。相変わらず名前独特ぅ〜」
ダレモンのぬいぐるみキーホルダーをむぎゅむぎゅしながら
嬉しさでバレリーナのようの回転を挟みながら歩いていく。
「…悔しいけど…ここが引き際かな」
才能あるんじゃね?と調子に乗った空楽王だったが
結局2回目で取れたブレスレット1つだけで、その後5回プレイしたが取れなかった。
「700円で1つ…。…まあまあ…及第点じゃないっすか?」
とはいえ2回で取れているのだから、本来200円で済んだはず。
余計な500円のことをやはり認められない空楽王。
「来た?来たんじゃない?」
優佳絵からバトンタッチして鏡がプレイしており
鏡が箱のサイドの隙間にアームを入れることに成功していた。
「頼むっ」
アームが抜ける心配もあったが、ちょうどハマったらしく
そのまま箱を持ち上げ、景品受け取り口の穴の上へ。
アームが開いたが、アームが引っかかって景品が落ちなかったので店員さんを呼んで取ってもらった。
店員さんは鏡に箱を手渡して去っていった。
「じゃあ。どうぞ」
と鏡が優佳絵に箱を差し出す。
「え。いいの?」
「はい。元々灰水部(ハスベ)さんが欲しがってたやつですし」
優佳絵は鏡から箱を受け取る。
「ありがと」
と微笑む優佳絵。
「あ、え、あ、はい」
その破壊力にたじたじな鏡。
「このキャラが好きなんだ?」
「んー。作品箱推しだけど、どうせ全キャラは取れないだろうなと思って。
一番取りやすそうな子を選んだって感じかな」
「なるほどね」
協力してぬいぐるみキーホルダーを取った華音と礼王。
「来い!来い!」
ズラし、持ち上げ、落ち、ズラし、持ち上げ、落ちを繰り返していた真風菜。
またクレーンがてるてる坊主シロクマを持ち上げる。クレーンが一番上についた。その反動は
「よしっ!」
耐えた。今度は横に動く反動。今までも一番上についたときの反動は耐えたものの
横に動く反動で落ちることがあった。なので祈った。
クレーンが横に動く。てるてる坊主シロクマが反動で落ちそうになる。
またか…諦める…いや、耐えろ!
と諦めかけたが祈った。するとてるてる坊主シロクマは向きを変えただけで、反動で落ちることはなかった。
「そのまま、そのまま」
そのままクレーンは景品受け取り口の穴の上へ。
アームが開いててるてる坊主シロクマが景品受け取り口に落ちた。
「やったぁ〜」
景品受け取り口からてるてる坊主シロクマを取り出す。
てるてる坊主の胴体の部分、プリーツスカートのような
フレアスカートのような部分が首のところにあり、そのヒラヒラを触る真風菜。
「かわ…」
可愛いと言おうとして冷静に見たら
「かわ…いいか?…怖い気もするな」
と思った。全員が合流し、時間も時間ということで帰ることに。電車に揺られて和気藹々と地元の駅で降りる。
「んじゃ。オレニ宅寺(にたくじ)さん送ってから帰るから」
とサラッっと言う礼王。
「お。イケメンちゃぁ〜ん」
「そお?ありがと。じゃ、今日は楽しかったよ。皆さんもありがとうございました。また学校で」
と頭を下げてから爽やかに手を挙げる礼王。
「おう!また遊びましょうや!」
「礼王またね」
「またね」
女子陣も手を振ったり頭を下げたり。
「じゃ、華音ー!またのー!」
「華音。また学校でね」
「また」
クールに手を挙げる優佳絵。
「うん。またねみんな」
「こっち?」
礼王が聞き
「あ、うん」
と華音と一緒に帰っていく。
「あんなイケメン出されたらなぁ〜。じゃ、鏡は灰水部(ハスベ)さんを。
トッキーは大鍵芸常(タケゲツ)さんを家までお送りしたまえ」
と謎口調で言う空楽王。
「おっけ」
親指と人差し指でオッケーマークを作る時守。
「鏡も。オッケーかな?」
「お、おう。わかった」
「ま、つーことで。オレはこのじゃじゃ馬を送らねば。大変だぁ〜」
「は?別に送ってもらわなくて結構。真風菜ー優佳絵ーまた学校でのぉ〜!
平野くんも須木弁(スギべ)くんもまた学校で!」
と手を振って歩き出す子那恋。
「おい!待て!あ、じゃ、皆さん。また学校で!」
子那恋を追いかけていく空楽王。
「じゃ、鏡。また学校で」
「うん。またね」
「灰水部(ハスベ)さんも。また学校で」
「うっす。お疲れです」
「優佳絵、また学校でね」
「うん。またね」
「須木弁くんも。またね」
「はい。また」
それぞれがそれぞれ帰路につく。
「全然、送ってくれなくてもよかったのに」
「…んん〜、嫌?」
と言う礼王。
「いや…嫌じゃ…ないけど…」
「ならよかった。…ま、送るーってのは口実で、もうちょっと一緒にいたかっただけだったりして」
と笑う礼王。
「え?」
「今度全キャラ制覇しに行こうか」
「え?」
「僕もなんか制覇したくなっちゃってさ。付き合ってくれる?」
「付き合ってくれる?」という言葉にドキッっとする華音。しかし前後の文脈で冷静になり
「私で…よければ…」
と返事をする。
「よかった」
と微笑む礼王。しかし内心「私で…よかったら…」という返しにドキッっとしている礼王であった。
「んじゃ。送ってくれてありがと」
「あ。いえ」
「あとこれも」
景品の箱の入ったビニール袋を顔付近まで上げる優佳絵。
「あ。いえいえ」
「じゃ、また学校で」
「はい」
優佳絵を家の前まで送った鏡も帰路についた。
「今日楽しかったねぇ〜」
「なぁ〜。音多木野(オトキノ)はあのメンバーがいつメンな感じ?」
「まー、そーかなー。なんか気使わなくていい感じが落ち着く」
「いいねぇ〜」
「そっちこそあのメンバーがいつメンなん?」
「そうかなー。席近いと自然とそうなるよな」
「あぁ!そうか!めっちゃ忘れてた!席近いんだわ!」
「だよな?」
と盛り上がって歩いていると子那恋の家の前につく。
「んじゃ。私ここだから」
「ん」
「サンキュー。また学校でなー」
と帰ろうとする子那恋を
「あ、音多木野!」
と引き留める空楽王。
「ん?」
「これ」
バッグからブレスレットを出す。
「ん?なんこれ?」
よく見る子那恋。
「うそ!?マジ!?こんなのあったの!?」
「あ、やっぱ気づいてなかったんか」
「マジ!?マジ!?」
「マジ。うるさ。近所迷惑だろ」
「大丈夫!家(うち)の近くだから」
「どーゆー理屈だよ」
「え!?マジ!?取ってくれたん!?私のために!?」
「いや…」
首の後ろを掻きながら
「別に音多木野のためではないけど…あったから」
「マジ!?ヤバ!」
あまりの嬉しさに抱きつこうとも思った子那恋だったが、それは躊躇して空楽王の腕を掴み
ぴょんぴょんと跳ねながら空楽王の周りを回る。
「目回る目回る」
「あ、じゃあさ」
と子那恋はバッグからダレモンのぬいぐるみキーホルダーを取り出して
「お返しにこれあげる」
「ん?サンキュ」
「あ、そういえば一州茗楽(イスミラ)にピッタリなダレモンじゃん。じゃ、これ大事にするわ!ありがと!」
満面の笑みの子那恋。
「お、おう」
可愛いかよ
と思う空楽王。空楽王はもらったダレモンのぬいぐるみキーホルダーのタグに書かれた名前を見る。
「日本人の綺麗に見える金髪ってただ光が反射して痛みが目立ってないだけだから。
よく見たら傷みすぎてパサパサの金髪イエロー。…誰がピッタリだよ」
とツッコミつつも嬉しそうに帰っていく空楽王であった。
「楽しかったね」
「そうだね。平野(への)くんの歓迎会も兼ねて、みたいなね」
「ありがたいことです。余所者を」
「余所者って」
2人で話しながら歩いていると真風菜の家の前まで着く。
「送ってくれてありがと」
「いえいえ。…あ、これさ」
「ん?」
時守がバッグから猫のぬいぐるみキーホルダーを取り出し、真風菜に差し出す。
「ま、本当は違うの取りたかったんだけど」
三毛猫が小さなシロクマのぬいぐるみを持っているぬいぐるみキーホルダーだった。
「大鍵芸常(タケゲツ)さん猫のスタンプ使ってたから猫好きなのかなと思って」
「私に?」
「うん。あ、猫好きじゃなかったら全然」
引っ込めようとするが咄嗟に猫のぬいぐるみキーホルダーを掴み
「あ、猫…好きだから、もらってもいい?」
と言った。
「どうぞ」
時守の手からぬいぐるみキーホルダーを受け取る。
「可愛い」
「よかった」
「本当はどんなの取ろうとしてたの?」
「大鍵芸常さんの髪色に近い子がいてね?その子と目が合った気がして
その子を取ろうとしたんだけど、その子取ろうとしたらその子が取れた」
「へぇ〜。でも嬉しい。ありがとう」
「どういたしまして」
「あ、じゃあ」
と今度は真風菜がバッグからてるてる坊主シロクマのぬいぐるみキーホルダーを取り出す。
「お返しといってはなんですが」
差し出す。
「お。シロクマ?」
「一応シロクマ…な、はず」
「てるてる坊主なんだ?」
「だね」
「これつけてれば学校行くとき毎日晴れかな」
と笑う時守。
「じゃ、そうなるように想い込めとくね」
と両手でてるてる坊主シロクマのぬいぐるみキーホルダーを上下から挟んで祈りを込める。
「ありがと」
「じゃ、改めて。どうぞ」
差し出す。
「ありがとうございます」
受け取る時守。
「じゃ、ありがとうね。送ってくれて。あとこれも」
ぬいぐるみキーホルダーチェーンを持つ。ぷらぷらと揺れる。
「こちらこそありがと」
時守もぬいぐるみキーホルダーのチェーンを持つ。ぷらぷらと揺れる。
「また学校でね」
「うん。またね」
真風菜は家に、時守も帰路へついた。