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大吾は仕事に戻り、あかりは孔子を振り向いて言った。
「孔子ー、帰るよー」
「はっ、ごめん。
あんたをかばわなきゃいけなかったのに、筋肉と喉仏見てたわ」
話の内容は耳から入りはしたものの、そのまま通り抜けて出ていったらしい。
「……いや、いいよ。
ネーム頑張って」
ネーム段階で、筋肉と喉仏が役に立つかはわからないのだが。
まあ、やる気にはなることだろう。
そんな騒動が起こっているとも知らない青葉は、その日も普通に仕事をしていた。
だが、ようやくあの前庭の工事がはじまったと聞き、その関係の書類を見ていて気がついた。
……ん? あの店。
うちの親の持ち物なのか。
まあ、あの二人、ホリサマとやらのオシナカマ、らしいからな。
なんのことだかよくわからんが……。
まあ、それはそれとして気になる、と青葉は思っていた。
あの二人、同じミュージカル俳優のおっかけをやっているだけの間柄なんだろ?
なんで、それで、あいつの母親とうちの母親との空気があんなに微妙なんだ。
店子の親と、大家。
なにも揉める必要などない気がするんだが……。
まさか、俺と店長あかりが付き合っているとでも思っているのだろうか。
青葉が、心の中で、あかりを店長あかりと呼んでいるのは、あかりと勝手に呼び捨てにするのが恥ずかしいからだった。
だからといって、あかりさん、とか。
あかりちゃんとか言うのは、なにか違う気がする――。
何故だかわからないまま、青葉はそう思っていた。
昼休み、あかりのところに、大吾から電話がかかってきた。
「ストーカー、今日の夜はどうだ」
行動早いなあ、この人……。
「私がおごってもらういわれはありませんが」
「いや、お前が悪い女じゃなかったのなら、俺が悪いことしたことになるじゃないか。
詫びさせろ」
と大吾は言う。
なんという態度のデカい詫び方っ。
「お前を困らせて儲けた金だ。
もう残ってないがおごってやる」
「だから、残ってないのならいいですよ」
と言ったが、大吾は、
「俺と二人が嫌なら、誰か連れてこい。
おごってやる」
と言う。
なにかおごってもらわないと、この人の気がすまない感じだな。
じゃあ、とりあえず、おごってもらって、今度お礼しよう、とあかりは思い、大吾に店を決めてもらった。
さて、誰を連れていくかな。
この間、開店してから、まだそんなに売れていないので。
あまり商品の入れ替わっていない店内を眺めながら、あかりは考える。
青葉さんはないよな……。
ここは、やっぱり、孔子だろう。
ずっと大吾さんを見ていたら、いい物が書けるに違いない。
――と思ったのだが、孔子は職場の呑みらしく、つかまらなかった。
そのあと、大吾から、
「四人の方が話すのにバランスがいいだろう。
こっちは妹がつかまったから、連れてくよ」
と言ってきたので、
妹さんか。
あの人の妹なら、すごい美人に違いない。
今、彼女がいないという、来斗でも連れてってやるか、と思い、来斗に連絡すると、
「なんだかよくわからんが、美味いもの食えるのなら行く」
とすぐに返ってきた。