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七体のフィギュアが並んだ、そのど真ん中、中央で金色の野菜の星の低級戦士から、いまや、『お前が一番だ!』とか王子様に言われてしまう程の存在になったヤツの姿に身をやつした魔界でも最強の一角、『神速(グリゴリ)』の名を冠した最高位の悪魔は言葉を発したのであった。
「オウコク、ノ、ツルギ! ピ、ピンチッ! イクゾッ! オマイ、ラッ! ツ、ツヅケェ!」 ピョンっ!
「「「「「オ、オウ!」」」」」 ピョンっ!!!!!
「はい、兄様! えと、ぴょん!」 ズデッ~!
唯一の妹、ラマシュトゥが着地を失敗してしまった様だ、だがすぐに起き上がった彼女を加え、スプラタ・マンユの弟妹(きょうだい)達は、彼等彼女の尊崇(そんすう)する兄、魔界の大公爵、オルクスの後にしっかりとついて行くのであった。
幸福寺境内に面した小上がりに姿を現したスプラタ・マンユの兄妹(きょうだい)達はその場に広がったカオスを息を飲んで見守るしかなかった。
境内の真ん中辺りで牛乳に舌鼓を売っている野獣三頭の姿、そこから少し離れた場所で欠伸(あくび)をしているトシ子婆ちゃん、境内の隅の方で憎しみを露(あらわ)にしつつ這い蹲って(はいつくばって)痺れている善悪に、ウラウラ笑顔で責め続けるニヤニヤアスタ……
ラマシュトゥがオルクスに聞く。
「兄様、これは? 一体?」
「ムウウ…… チョット、アノ、ヨウス、ヲ、ンンンン、ミテミヨ、ッカ……」
なるほど!
さしものオルクスであっても、この状態を瞬時に理解することは難しかったのであろう、納得である!
しかし……
「アレ? アイツ…… アノ、トキノ……」
モラクスが追随した。
「兄者! あれ、あの時の凶熊じゃないだろうか? 『弾喰らい』だったか? 似てるよな? い、いいや、間違い無いぞっ! 何て事だっ! あいつ諦めずにこの本拠地を探り当てて攻めてきたんだろう! ヤバいぞっ! どうする兄者? トシ子殿が押さえている今がチャンスじゃないだろうか? 殺(ヤ)るかっ?」
「ウ、ウウ~ン……、ソウ、ナンダケド…… ナンカ? イワカン、ガ……」
「違和感? それがなんだと? 兄上! 善悪様が這い蹲(つくば)っている現状を見て、只手をこまねいていると言うのか! 我らは忠誠を捧げた筈ではないか! ここで動かない手は無いであろう! 兄上っ!」
アジ・ダハーカの声が響く中、オルクスは答えないままで、シヴァが残忍そうな声色で続けるのであった。
「クフフフ、なるほど…… 混沌が現世(うつしよ)にまで蔓延り(はびこり)出した、って訳か…… 面白い、ならばこの魔神の力を今こそ解放してくれようか、胸が躍る…… 我が力、封印を解いて戦う時が訪れたと言うのか…… クフフ、ハハハ、紅蓮(ぐれん)の地獄で悔恨(かいこん)の涙を流すが良いわ! 我が前に立つ愚か者共よぉ!」
ラマシュトゥが間を置かずに言う。
「シヴァっ! 今真剣な話をしている最中でしょ! 空気読みなさいなっ! ちょっと黙ってなさい! この馬鹿っ!」
この言葉でアジ・ダハーカ、シヴァ、何も言っていないにも拘(かかわ)らず、アヴァドンの言葉は封じられてしまったのであった。
賢い方の一人パズスが、長兄たるオルクスに問うのであった。
「なあ、長兄? んでどうするんだ? あの熊、以前のように邪悪には見えないが…… 善悪様が動けなくなっている事は事実だぞ? どうする? 指示してくれ!」
「ムムム……………… ッ!」
ブンッ!
唸っていたオルクスであったが、何かに気が付いた様で次の瞬間御馴染みの大鎌、デスサイズを具現化させて一振りするのであった。
モラクスが尋ねる。
「兄者一体どうするというのだ? やはり戦うのか?」
ゴクリっ!
弟妹(きょうだい)達の喉が鳴り、緊張感が高められている事を感じる。
そりゃそうだ、前回の遭遇戦の時はコユキも一緒だったし、なにより『弾喰らい』一頭が相手であったが今回は同サイズの熊が三頭だ、勝てないとまでは言わないが苦戦は間違いないと容易に予想出来たからであろう。
ましてや敵は只大きいだけの熊ではなく、富士山麓で確かに魔力を使っていた事からも魔獣、所謂(いわゆる)動物型悪魔である事が類推されるのだ。
とは言え揃って魔王種、さらには悪魔カーストの最上位に君臨し続けてきたスプラタ・マンユである、緊張の高まりに合わせる様にそれぞれ魔力を濃密に練り上げつつ、戦意も同様に高められていくのであった。