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昼に起きた。朝までの出来事はまるで夢。そもそも未だに1年後に死ぬなんて信じられない。
それよりも信じられないのは、昨日、というより朝まで過ごしたメンバー。
そもそも東京に出てきた自分が朝まで誰かと過ごすなんて思ってもみなかった。
しかもそれが天使や悪魔。耳がアニメ、マンガ、ゲームのエルフのように尖っていて
悪魔は黒目、瞳孔と呼ばれる部分が縦長。しかもみんな美形。
今テレビに出ているアイドルを見たら、失礼ながら笑ってしまうほどの美男美女たち。
そんな面々と朝まで自分がおすすめしたホラー映画を見て過ごした。
顔を洗い、お昼ご飯を食べ終わった今でも信じられない。
真朝に来て、向かいのイスに座ったビガードンの姿を思い出しながら、イスに座りながらボーっとする。
「天使…悪魔…」
思わず呟く。
「ビガードンは…まあ、羽と角見たし、信じる…信じる?
あれは…現実か?…現実か。一回寝たもんな。バイト…行ったよな?」
謎にスマホを確認する。ビガードンが来てから1日経っている。
「現実…か」
リビングというか寝室というかの部屋へ行く。
テレビをつけてテレビを眺める。ザッピングをしてみるが面白い番組はやっていない。
ゲームをしようとパスタイム スポット 4を起動させる。古い型のパスタイム スポット 4。
起動してゲームを始めると、モーター音がウーーン。と激しくなる。
パスタイム スポット 5を買いたいのだが、正直娯楽に7万円も割けない。
中古でも4、5万円はする。そのモーター音を聞きながら
7万…5万…4万…
と考えたりもしたが
「無理無理無理」
と呟いてトップ オブ レジェンズをプレイした。
強くも弱くも、上手くも下手でもない。ランクはプラチナランク。
ルーキー、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ダイアモンド
マスター、プレデターというランクである。
言葉の意味でわかると思うがルーキーが一番下で、プレデターが一番上である。
区分の数は8。すると中間は4と5。つまりゴールド、プラチナが中間である。
そしてランクの人口で一番多いのもゴールドかプラチナ。
つまり星縁陣(せえじ)はごく一般的な実力の持ち主ということだ。
「さてと。ランクは上がるかな」
夕方のバイトの時間までランクマッチをしたが、結果から言うとプラス20ほど上がった。
もしろんランクは上がっていない。ランクの区分、たとえば星縁陣のいるプラチナでも4〜1まである。
4がプラチナ上がりたて、1になるとあと少しでダイアモンドだね!って感じである。
星縁陣はプラチナ4。もうすぐプラチナ3でもないので
たかが20ポイント上がったところでなにも変わらない。3、4時間かけて、成果はポイントプラス20。
「あのときやめてればなぁ〜」
一回あと少しでプラチナ3になるというところまで上がった。しかしそこから立て続けに負けてポイント激減。
「…これがギャンブルか」
と口にしたほどだった。そろそろバイトに向かう時間。
別に特に何も必要ないのだが、一応財布とスマホだけは持ってバイト先のコンビニへ向かう。
お客さんとして迎えられ、バックヤードに入る。
自分のロッカーで制服に着替えて、時間までスマホをいじる。
特に何もスマホをいじってすることもない。頻繁にLIMEでやり取りする友達もいない。
欠かさずチェックするSNSのアカウントもない。最後にやり取りしたのはビガードン。
その前にLIMEの通知が来たのはLIMEスタンプやソラ・オーラの公式LIMEからのメッセージ。
見ていて寂しくなるトーク一覧。血迷ってビガードンに
「元気?」
なんてメッセージを送ろうとしたがやめた。バイトの時間となったのでバイトに入る。
星縁陣(せえじ)がバイトに入り、前任人交代でバイトを上がる。店長さんはいたりいなかったり。
星縁陣(せえじ)と同じ時間に入っている人も、曜日によっていたりいなかったりする。
その日も変わらずレジに立って仕事をして
陳列棚を見て、無いもの、品薄のものがあれば、補充できるものは補充する。
「いらっしゃいませー」
特に元気良く言うわけでもなく、お客さんに聞こえても圧迫感のない
でも「いらっしゃいませ言ってなかったな!」と文句も言われないように
お客さんに届くような大きさの声で言う。夕方から夜にかけてのコンビニ。
居酒屋に行く前に寄る若者。1軒目から2軒目に行く途中で寄る人。
終電前に寄る人。潰れた人のために水を買いにくる人。
あまり客足が途切れることもないが、別段忙しくなることもない。
パッっとお客さんと目が合う。お客さんというより
「あぁ〜!市野様ぁ〜!」
ビガードンだった。抑え気味の声で
まるでインディーアイドルを街中で見かけたときのように星縁陣(せえじ)に手を振るビガードン。
「おぉ」
星縁陣も手を振り返す。ビガードンが飲むヨーグルト、シュークリームなどを持ってレジに来た。
「元からここで働かれているのは知ってましたけど、実際働いてるの見ると「お」ってなりますね」
商品のバーコードを読み込んでいく星縁陣。笑顔でそう言うビガードンを見ながら
めっちゃ人間臭いこと言うじゃん
と思った。星縁陣(せえじ)は少しビガードンに近づき
「ねえ。未だに信じられないんだけど、ビガードンって本当に悪魔なんだよね?」
とめっちゃ小声で聞いた。
「え?見せたじゃないですか。羽と角。あ、尻尾見せてなかったか。尻尾も見せましょうか?」
自分のお尻部分を見るビガードン。
「今はいい今はいい!アホか」
と小声で慌てて止める。
「さすがに今は出しませんよ」
と笑うビガードン。レジ袋有無を聞き、値段を言う星縁陣。
スマホで払うビガードン。レジ袋に商品を詰めていく。
「今日も家(うち)来ません?」
「今日も?」
「どうせなら泊まる準備して、今日は泊まってってくださいよ。あ、ま、明日になるのか。寝るのは」
「そー…ね。いいの?」
「そりゃーもお!みんな星縁陣様のこと大好きですから」
大好きではないだろ
と思う星縁陣。
「じゃあ、バイト終わったら…」
と店内の時計を見るともうすぐにバイトが終わる時間だった。
「もうすぐっすね」
笑顔のビガードン。
「図ったな?」
「さあて?なんのことか」
口笛を鳴らしはしないが、口笛を吹いて誤魔化すような顔をするビガードン。
「んじゃ、バイト終わったら1回帰って、荷物取って家行くわ」
「うっす!」
「ありがとうございましたぁ〜」
と一応言う。同じバイトの子が「知り合いに「いらっしゃいませー」とか
「ありがとうございましたー」って言うの、なんか恥ずいんすよね」って言う気持ちが
初めてわかった。バイト終了の時間までお客さん1人の対応をして、後任の人が来てから
「お疲れ様でしたー」
と言う会話を交わしバッグヤードに戻り、制服を脱いでバッグヤードを出る。
すると雑誌コーナーにビガードンがいた。
「え」
「おぉ〜お疲れ様です!」
雑誌を元の位置に戻し、軽く頭を下げるビガードン。
「帰ってたんじゃないの?」
「いやぁ〜、どうせなら一緒に行こうかなって」
「あ、そお?」
ということで一緒にコンビニを出た。
「市野様、魅惑の果実特集のある雑誌読みました?」
「ん?読んでないけど」
「読んでないかぁ〜。でも魅惑の果実自体は知ってます?」
「知ってるよ。全員悪魔のね」
「え!あ!そこまでご存知で?」
「昨日ルボちゃんから聞いたよ」
「あぁ〜デトルンボから。なるほどなるほど」
そんな話をしながら2人で星縁陣(せえじ)の家へ行った。鍵を開けて中に入り、電気をつける。
「お邪魔しまぁ〜す」
「どぞ〜。あ、テキトーに座っといて。すぐ準備するから」
「ゆっくりでいいですよ!…夜は…逃げないんで…」
めちゃくちゃカッコつけてポエミーなことを言うビガードン。
「…イジってる?」
「滅相もない!」
星縁陣が「イジってる?」と聞いた訳。
それはビガードンが言った「夜は逃げない」というセリフは
星縁陣が書いてネットに投稿している小説に出てくるセリフなのである。
しかも星縁陣もそこそこ気に入っている。
「読んだの?」
「星縁陣(せえじ)様と出会ってから読んだのではなくてですね。
事前に星縁陣様の情報を貰ったときに、一通り把握しておこうと思って読んだんです」
「あ。そうなのね。あとさ」
「はい」
「様付けやめて?くれる?」
「え」
「いや、なんか。なんだろうな。親切な死神感が抜けないし
それに他のみんなは付けてないし。なんならルボちゃんは呼び捨てだし」
「デトルンボは…例外っすよ。でも、まあ…たしかに、マンガとかアニメで
人間に寄り添う死神って様付けなイメージありますね」
「でしょ?…あとできれば敬語も」
「え。いや、でもミウォールも敬語ですよ?」
「うんー…。なんかミウォールは…そんなキャラじゃん?まだ知り合って1日も経ってないけど
なんか、そんな感じするじゃん?でもビガードンは…そもそも出会いのキッカケだしさ?」
「あぁ〜…。なるほど?それに敬語も死神のイメージ強いですよね。なんかアニメとかマンガだと」
「そう。そうなんよ」
「でもマンガとかアニメの死神像だと“リンゴ”欲するイメージです…イメージだよね?」
「お。わかる?オレも今全く同じこと思ってたわ」
「おぉ〜。以心伝心、意思疎通!」
星縁陣はしばらく使っていなかったリュックに部屋着、歯ブラシ、歯磨き粉を詰め込み
リュックの背負うための紐を片方だけ肩にかけて
「お待たせ。行こっか」
「はい!あ…う、うん!」
「ぎこちないね。仕方ないけど」
「慣れないんすよー…慣れないんだよねー」
部屋の明かりを消し、2人靴を履いて外に出る。
鍵をかけて、リュックを背負い直し、ビガードンを始めとして天使、悪魔の住む家へと向かう。
「星縁陣さー…星縁陣ー」
とんでもなくぎこちない。
「なに?」
「あのー。さっき話したじゃん?あのー魔性の果実と魅惑の果実について」
「うん。まあ。そんな深々と掘り下げてはなかったけどね」
「そうそう。だから掘り下げてみようかなって」
「ほお?」
「他にもまだまだいるんですよ」
「悪魔とか天使?」
「そう!たとえばThe circle of Angels!」
「うぅ〜ん」
「聞いたことないか。じゃあ、Goals!」
「あぁ。聞いたことある」
「アニメ主題歌もやってますからね。あとはCarve on the world forever」
「名前長っ」
「その反応は知らないと。あとはreplicests」
「あぁ〜。聞いたことあるかも」
「おぉ〜。知ってた」
「完全覆面だよね。あ、顔出ししてないって意味ね」
「そりゃそうでしょ」
と笑うビガードン。
「完全覆面で覆面マスク被ってるのダサすぎるでしょ」
星縁陣(せえじ)とビガードンは頭の中で
覆面マスクと言われて十中八九の人が思い浮かべる覆面マスクをして
めちゃくちゃカッコつけている男女を思い浮かべていた。
「ふっ」
星縁陣もつい笑う。
「ダサいね」
「めっちゃダサいっすよね」
2人で笑う。
「あ、ちなみにオレ、replicestsのメンバー、知ってるんすよ〜」
めちゃくちゃ自慢げに言うビガードン。
「ま、別に知りたい人じゃないからな」
全然興味なさそうな星縁陣。
「なんと!1人は現役高校生!」
「マジか!」
めちゃくちゃ興味津々な星縁陣。
「達磨ノ目高校って知ってます?…あ。知ってる?」
「あぁ。うん。聞いたことはある」
「あ、そっか。星縁陣ー、は青森出身だったもんね」
「そうそう。だからあんま東京の高校のこと知らんのよな」
「まいいや。そう。で、replicestsのメンバーの1人が達磨ノ目高校の現役高校生なんですよ」
「マジか。現役高校生なんだ。…てか、高校にも悪魔っているんだ」
「いるん、よー。高校の先生の中にもいるし、生徒にもいる。
顔が良すぎて、めっちゃ人気になったりするけどね」
「だろうね。…悪魔がいるってことは」
その先を察して頷くビガードン。
「天使もいまー、いる」
「まだタメ語慣れないね」
「慣れないー。でもなんか、なんかいい。うん。早く慣れたいわ」
そんな話をしているとビガードンを始めとした
天使や悪魔が住む家が入っているマンションの前にたどり着いた。