テラーノベル
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それでも、一日では何も分からない。
そう自分に言い聞かせて寝室へ戻ると……俊介さんは布団に潜り込んでいるようで、頭頂部だけがのぞいている。
―― 疲れたから、これでいい
また自分にそう言い聞かせる。そして、私も疲労に逆らうことなくすぐに寝付いた。
だけど……眠りが浅かったのか。それは新しい寝具のせいか。小さな物音で、私は目を覚ました。
暗い部屋で動かないまま、何の音かと耳をすます。
―― 俊介さん…? 寝言?
目を開けて、ぼーっと暗さに目を慣らす。そして隣の俊介さんの方を見ると、布団が小刻みに震えているようだ。
「……」
疲れて眠ったと思っていたけれど、初夜を我慢してくれていたのかもしれない。でも……今、ソレ、を覗くのは申し訳ない。気づかないフリがいいのか……
夫はその行為を隠れてやっているのだから、ここは知らないフリが正解だろう。思いもよらなかったことに思案中の私の耳に、また彼の声が聞こえた。
「ママ、ごめん……ママ、捨てないで……」
―― ママ……って言った?ナニゴト…?
小さく聞こえた泣き声のような呟き。それは俊介さん以外のものではない。信じられない気持ちと、不気味な鼓動を抱えて、私は音を立てないように体を起こす。
そして、左手を伸ばすと、俊介さんの布団をそっと……めくった。
……手が止まった。固まった、という方が正しいのかもしれない。
「……!?」
―― ナニコレ……
夫の腕の中には、お義母さんの写真が入ったフォトフレーム。彼は私の気配にも気づかない様子で、ギュッと目をつぶって震えているようだった。
―― ……これが、家族……?
初夜に広がった不安と恐怖の影は、すぐに私の前に正体を現すのだった。
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設楽理沙
#不倫
#離婚