長いし国設定じゃないし方言よくわかってなくてもいいなら読んでくださいね
まじで筆がのってしまいいつもより長いです
あんまり生かされてないけど両方とも社畜設定
蘭さんの方言もよくわかってないのでそこはすみません
「菊はさ、」
低くもなく高くもない、そんな声が自分の鼓膜を揺らす。返事の代わりにパソコンに向けていた視線を彼に向けることで、その言葉の続きをまった。
「なんで蘭のこと、すきになったの」
聞かれた問いは自分にとっては今更な質問だった。だって、もう付き合って2年弱経つもの。
でも、そういうことではないのだろう。ただ単に、なぜ好きなのかを聞くだけの世間話。カタカタと心地の良いとは思えなくなってきたキーボードの音を聞きながら少し考える。
何故。それは菊にとっては難しい質問であった。
何故好きなのかと言われれば悩むし、かといって好きじゃないと言うわけでもない。
兎に角、二人は言葉にするような仲ではないのだ。
近くにあるぬるくなった珈琲で乾き切った喉を潤した。この短時間で考えられたかと言うと、そういうわけでもない。
それでも目の前の彼は興味深そうに聞いてくるため、逃れられないと悟った。
「さぁ。お互いに何処か刺さったところがあったんじゃないですかね。」
「えーショタおね?」
「刺さったところでそれ出てくるの貴方だけですよ」
「違うってば菊がお姉さん」
「反論するところそこですか」
要約すると、蘭が私のことを好きになったのは私のお姉さん属性なるものに癖を壊されたからということだ。
…意味がわからない。そんな意味のわからない話をする彼を冷ややかな目で見ながら内心だけでなく建前でもドン引きをする。
「本当に貴方って人はエロいですよね」
思考が、と言葉を続けておく。
「真のエロは坊ちゃんでしょ?お兄さんをあんな眉毛といっしょにしないで」
気になるところはそこなのか、とまた突っ込みそうになるが、彼は昔からそういう人だ。ただ、昔に比べたらちょっと頻度が増えたかもしれないけれど。
そうですか、と軽く相槌を打ったあと先ほどの会話の前と同じく仕事を始めた。
カタカタという音は先程の会話もなかったかのようにすぐに飲み込んでいく。そうしてあいもかわらず同じことの繰り返しをしていると、先程の会話が自分の頭の中へ蘇った。
ただ世間話のように軽くした話なのに、何故かどこか心に残るものがある。
ちなみに、会話の途中以外は全て仕事中に行っているという中々高難易度のことをしていると自分でも思っている。
ま、全部この会社のせいだけど。嬉しくともなんともないので高難易度のことをしても意味がないのだけれど。
……何故、あの人は私なんかを好きに。
今日終わるはずもない書類を無理やり終わらせ、パソコンをばたん、と音を立てずに閉めた。
今日も今日とて定時すぎ、そろそろ人権を訴えるべきではないかと思う。
そうやって自身を安定させるように心の内で悪態をつきながら自身の荷物の整理をするという器用なことをしていると、目の前の自分のデスクにコトリ、と缶が一つ置かれた。
ちなみにその器用な事もこの会社で生まれたものだがそれはまた今度。
その缶を置いたであろう手から目線を伝って誰か確認しようとする。顔に到達すると同時に相手が声を出した。
「おえ、ココア。」
「どうも。ありがとうございます」
正直腕の時点で誰かわかっていたが、少し驚きだ。まだまだ暖かい様子のココアを受け取り、開けて味わった。
うん、ただのココア。
「ていうか、もう帰って寝るってときにカフェイン取らせないでくださいよ」
「ええやろ。ココア、嫌いが?」
「嫌いとは、言ってません」
「ほうけ」
…どうやら、彼は私を待ってくれているらしい。
「…私の家、来ます?」
「……ええんか。」
「いいも何も…貴方は私の恋人でしょう」
そんな私の言葉に彼は驚いたのか、目を丸くした。驚いている彼を見るのは久しぶりかもしれない。
「…ほやのう」
「ふふっ、間抜けな顔」
人との関わりは仕事をしている中ではあるが、この人は別だ。いつのまにか固くなった表情筋も柔らかくなる。
菊のその微笑みをみた蘭は、ぽつりと言葉を漏らした。
「お前は、いちゃけやね」
「…いちゃけ?」
「かわいい。」
突然言われたそんな言葉に照れたのを誤魔化すために、目を伏せ席を立った。
「いきますよ」
「…ふ、」
蘭は返事の代わりに目を細め、鼻で笑って出口へ歩いていく菊へとゆっくりとついて行った。
「お前ん家は、いつ来てもでかいの」
「そんな日替わりで家の大きさが変わるみたいな言い方」
私の言葉に、愉快そうに鼻で笑った後慣れたように私の家へと入って行った。
ガラガラと玄関の戸の音が音を立て、私が入るのを確認した後彼は優しく戸をしめる。
家の主人が帰って来たのを音で確認したらしいぽちくんは、久しぶりの来客に小さなしっぽを大きく振り、歓迎していた。
「お風呂ありますよ」
「一緒に入らんのけ」
「ばか」
「冗談やざ」
面白そうに少し目を細め、頬を少し赤く染めた私の髪をさらりと撫でてぽちくんと居間へと消えていった。
「…ずるい人」
「お風呂、上がりましたよ。」
居間にいる蘭に、未だ濡れている髪の毛をタオルで拭きながらそう伝える。なにも面白くないテレビを眺めていた蘭は菊が来たのを横目で確認した。
空いている座布団へと歩き、静かに座った。
「髪、乾かさんの」
「めんどくさいんですよ」
すると私の返答を聞いた彼は、顎で自分の目の前を示した。…これは、乾かしてやるという事だろうか。
「…貴方、そんなに世話焼きでした?」
「菊だけやよ。」
「……私のこと、照れさすの好きですよね」
さっきのような小さい笑みではなく、いつもより少し大きめに笑った後に答えた。
「ほやのう」
静かな居間に響いていたテレビの音を飲み込むようにドライヤーの音が響いていった。
「……眠いんけ」
低い心地の良い声が自分の鼓膜を揺らす。暖かなドライヤーの風が髪をさわさわと撫でているる感触が未だ残っている。
彼は兄弟がいるだけあり、手つきがとても気持ち良いのだ。
「ん、ねむくないです…」
「嘘やろ。眠そうな声しとる」
「んん、でも…らんさんおふろ、はいってないです…」
「風呂くらいええよ」
「でも、」
「ほったら俺が入っとるとき、寝ててもかまわんよ」
そんな代案を出されるが、眠気で回らない頭はその案を拒否した。
「いっしょにねて、くれないんですか…?」
言葉と共に彼の顔を見上げると、眉を顰め目を細めているのが見えた。そうして、どこか咎めるような言い方をした。
「…んなもん、どこで覚えとるがや」
「ふふ、らんさんだけです…」
温かな彼の体温を感じようと、そのまま彼のあぐらの上に座るように姿勢を変えた。
そんなことをしている私を彼はみているため、私からも彼の表情がよく見える。今日2回目の、驚きの表情だ。
「…こりゃ、一本取られたわ」
「おふとん、敷くの手伝ってくださいね」
まだまだ冷たい布団の中で、二人寄り添いながら横になっていた。結局あの後蘭さんはお風呂には入らず、寝巻きに着替えただけだった。
最近はめっぽう寒く、人肌が恋しくなるものだ。
温かな彼へと抱きつきながら目を瞑る。すると、さらりと優しく自分の髪の毛を触る感触がし、目をぱちりと開けてしまった。
「…らん、さん」
「お前の髪は、綺麗やね」
「そういうらんさんも……」
もう下がってしまっている前髪をあげ、彼の綺麗な翠と目線を合わせる。
「目、きれいですよね」
そんな私の言葉に目を細め、ちゅ、とまぶたに優しくキスを落とした。
「ほやの」
「ふふ、自分の目がきれいという自覚、あったんですね」
「…そりゃ、何回言われたと思っとるが?」
「そ、そんなに言ってます?」
「気持ち、ようけ伝わっとるわ」
私にとっては恥ずかしいようなことも、この人はさらっと言ってしまうため、毎回こっちが恥ずかしくなっている気がする。
「そう、ですか……」
なんだか恥ずかしくなり、彼は向けていた目線を下へと下げようとした時、突然唇へと柔らかな感触が伝わった。
彼の体温が私へと移ってくる。
「おえ、なんで下向くが」
「は、はずかしいからですよ!」
顔を真っ赤にし、少し大きく答えた私に面白そうに笑い、また優しく私の髪を触った。
「寝る前までお前の顔見とりたいんや」
「…ん、そんなキザなセリフ、よくいえますよね……」
「好きやろ」
「……まあ。」
そんな会話を続けている間も、彼は私の髪を触ることはやめず、触り心地を堪能しているようだった。なんだか私は、そんな感触にまたもや眠くなって来てしまった。
うつらうつらとしてしまう。
その菊の様子に気付いた蘭は、先程のようにやさしく瞼へとキスを落とし、小さな声でつぶやいた。
「好きやよ、菊。」
「……ん、わたしも、すき…です」
眠気に耐えながら答えた菊を愛おしそうに目元を緩ませ、息だけで笑ったのを確認した後、菊の視界はブラックアウトしていった。
明日も、こんな日が続くのを願って。






