テラーノベル
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震える手で手紙をしたためる。
「か、書けました」
イソトマが書いた手紙を、リリーが眺めた。
「まぁ、こんなもんで、いいか。じゃぁ、次ね」
リリーがイソトマの腕を引っ張って立ち上がらせた。
「え? 待って、ディルクに治癒魔法を……」
「イソトマがやるんだよ」
「僕が治癒魔法かけて、いいの?」
ディルクの前に座らされる。
服はボロボロで、息も絶え絶えだ。
「ディルク、今、治す……え?」
リリーがイソトマに握らせたのは、短剣だった。
「使えない護衛は、自分の手で処分するんだ。それがイソトマらしいよね」
「何、言って……るの?」
震えて剣を落としそうなイソトマの手を、リリーが握る。
「ほら、しっかり持って。心臓に目掛けて、一突きで殺すんだよ」
「や……いやだ、絶対に、いやだ」
リリーの拳が、イソトマの頬を殴った。
「さっさとしろよ、グズ」
短剣を持つイソトマの手が震える。
剣の束がカチャカチャと音を鳴らした。
(どうしよう、どうしよう……ディルクを殺したくないよ。死んでほしくないよ)
ディルクが、さりげなく腕を動かして、胸に持っていった。
胸の辺りを手枷で摩っている。
(あ……そうか。この短剣で枷を……壊せるのかな。魔術でできた枷なのに。普通の剣が通るのかな)
短剣の束を強く握る。ぼんやりと、魔力の灯りが灯った。
(あれ? 僕の魔力が、漏れてる?)
良く視ると、手枷と足枷に亀裂が入っている。
(今なら、いける……!)
「さっさとしろよ」
戸惑うイソトマの手を掴んで、振りかざせとリリーが促す。
(手枷……手枷を狙って)
イソトマが振り下ろす軌道に合わせて、ディルクが手枷を持ち上げる。
剣の先が、枷に刺さった。
その瞬間、まばゆい光が部屋中を包み込んだ。
「うわっ!」
「なんだよ、これ。おまえら、何を……」
リリーから離れたイソトマを、抱き止めた手があった。
短剣がイソトマの手脚の枷を斬り落とす。
「ディルク! 治癒魔法、かけるね」
「すまない」
手に青白い魔力を灯して、ディルクの全身を癒していく。
「なんなんだよ、この光!」
部屋の中に、目くらましの白い光が浮いている。
「もう、大丈夫だ」
ディルクが、イソトマの治癒魔法を途中で止めた。
「でも、治り切っていないのに」
「あの目くらましが効いているうちに、石の紐を引っ張れ」
「石?」
一瞬、わからなくて首を傾げた。
「居場所のわかる防犯ブザーとやらだ。恐らく、近くに誰かが来ている」
ディルクが身に付けている魔法結晶が赤く点滅している。
知り合いの誰かの魔力に反応している。
「わ、わかった!」
かんな
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寿命㌫(主) 🔮🖤ᩚ
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イソトマは防犯ブザーを取り出すと、紐を思い切り引っ張った。
ブーブーと、耳を塞ぎたくなるような大きな音が鳴り響く。
「今度は、音? さっきから、何なんだよ!」
叫びながら、リリーが剣で無鉄砲に斬り込んできた。
イソトマを庇いながら、ディルクが刃を剣で受け止める。
「ちっ……守ってくれる騎士様がいる奴は、いいよなぁ!」
大きく振りかぶるリリーの剣を、ディルクが受け止める。
ディルクがイソトマを手放した。
「下がっていろ」
壁際に下がり、イソトマは魔力で銃を練り出した。
二人の動きを目で追いながら、部屋の外にも気を向ける。
(魔力の気配がいくつかある。たどり着くまでに、リリーに逃げられないようにしないと)
リリーの動きを追いながら、足に焦点を絞る。
銃口を向けて、狙いを定めた。
「ごめんね、リリー」
魔法弾を籠めた銃の引き金を引いた。
弾は見事にリリーの右足に着弾した。
「うっわぁ!」
着弾した玉が足に吸着する。
長い紐が伸びて、リリーの足を雁字搦めにした。
地面に転がったリリーの手に向かい発砲する。同じように吸着した玉から紐が飛び出して、リリーの腕を雁字搦めにした。
「子供騙しが、ふざけんな!」
地面に転がっても、リリーの威勢は変わらない。
ディルクがリリーの口にテープを張って言葉を止めた。
「やっと、動きを封じられた」
安心して、イソトマはその場にへたり込んだ。
ディルクがイソトマの顔に手を添えた。
「あ、そうだ。治癒魔法の続きしないと!」
「俺より、イソトマだ。顔が腫れ上がっている」
そういえば、何度かリリーに殴られた。
緊張してすっかり忘れていた。ディルクの指が触れると、痛い。
「治癒魔法なら僕のほうが得意だし、自分で……」
突然、声が出せなくなった。
ディルクの唇が、イソトマの唇に重なっていたから。
その瞬間は頭が真っ白で。
(温かくて、甘い……)
それだけ、わかった。
魔力を流し込まれている。
熱くて甘くて、全身トロトロにされているみたいだ。
頬の腫れも、痛みも引いていく。
痛みが引くほどに、唇の熱が鮮明になる。
恥ずかしくて、体が逃げそうになる。
「逃げるな」
声と共に、また魔力を流し込まれた。
逃げる腰を抱き寄せられて、動けない。
「ん……ぁ」
自分のものとは思えないくらいに甘い声が出た。
ビックリして、体が跳ねた。
その頃になって、ディルクがようやく唇を離してくれた。
「ぁ……ディルク……」
ディルクの指が、イソトマの濡れた唇をなぞる。
「嫁に、なってくれるんだろう」
「……それ、五歳の時の……覚えていて、くれたんだね」
「忘れたことなど、なかったよ」
ディルクの唇がイソトマの額に吸い付いた。
「イソトマがルシアンを選ばないなら、奪いに行く。俺は、イソトマが欲しい」
「……え?」
ドクン、と心臓が壊れるんじゃないかと思うくらい跳ねた。
こんなにドキドキしたのは、きっと生まれて初めてだ。
(欲しいって、言われた。ディルクに、欲しいって)
鼓動が早くて、息ができない。
顔が熱くて、どうにかなりそうだ。
「僕……僕、は……」
「その話は、待ってもらおうか。イソトマは、私の婚約者だ」
振り返ったらルシアンが立っていた。
複数の憲兵を引き連れている。
「イソトマ、ブザーは止めて構わないよ」
ルシアンに指摘されて、気が付いた。
防犯ブザーを鳴らしっぱなしだった。
呆れ顔のルシアンと、顔色の変わらないディルクを交互に眺める。
さすがのイソトマも、慌てた心境になった。
コメント
2件
この修羅場シーン好きかもしれません!!! マジでディルク様とルシアン様がイソトマ様を巡って奪い合い…✨️ 最高すぎます!!!頑張ってください!!!作者様!!!
うわっ、第23話、めっちゃ熱かった!!🔥 イソトマがリリーに脅されて♡♡♡って言われるシーン、ヒヤヒヤしたけど、ディルクとの連携で枷を壊して逆転する流れが気持ちよかったわ。あの短剣の魔力の灯りとか、細かい伏線回収が好き。 そして最後のキスシーン…!「嫁になってくれるんだろう」って五歳の約束を覚えてたディルク、かっこよすぎるでしょ。そこにルシアン来て三角関係が加速する予感。続きが気になりすぎる!💕