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「ふ~ん……自分はリアルで呼びつけておいて、こっちの呼び出しには警戒するんだ。なかなかどうして、年頃の妹を持つってのも大変だな」
6keyの担当、というか彼女の兄から。
此方の担当にメールの返事が来た様だが……なんともまぁ、警戒されてるねぇと分かる様な文章。
こればっかりは、男女の差ってのもあるのだろうが。
まぁ仕方ないか、むしろ当然とも言える部類の話なのだろう。
少しくらいは、こっちもサプライズを用意したかった所なのだが。
「兄貴~? 今いいー?」
「ん? あぁ、良いぞ。入れ入れ」
返事を返してみれば、部屋の扉が開き……弟がヒョコッと顔を出して来た。
その手に、何やらツマミと酒を持って。
「おい、飲酒は駄目だぞ? お前くらいの歳なら、興味があるのは分かるけど」
「違うってば。お酒は父さんから兄貴へのお土産、オツマミは俺が作ったけど。味見してみてよ」
「へぇ? “現太”が料理なんて、珍しいな」
「今日ゲーム中、空いた時間に教えてもらったんだ。前に話した白川さん、覚えてる? あの子が料理めっちゃするみたいでさ。お兄さんがお酒好きらしくて、ウチもだよーって話したらお勧めのオツマミの作り方教えてもらっちゃった」
ハハッ、これはまた。
弟に関しては順調に青春している様で何よりだ。
学校で女の子と話す様になって、しかもその子と一緒にガンサバをやる事になって。
彼女をゲーム内で引率しながら、毎日楽しく一緒に遊んでいるという。
いやはや、俺の高校時代とは比べ物にならないね。
「随分と仲良くなった様で、良かったな。今日は格好良いところ見せられたのか?」
「うるっさいな、そういうのじゃないってば。あ、でも狙撃で……その、格好良かったって……言ってもらえた、かな。兄貴に教えてもらった甲斐があったよ」
「おぉ、それは何より。上手くやれよ~」
なんて笑って答えてみれば、弟は恥ずかしそうにしながらも酒とツマミを渡してくれた。
いやはやホント、多少歳の離れた兄弟ってのは可愛いものだ。
喧嘩なんぞほとんどした事も無ければ、反抗期真っ盛りだろって歳になってもこうして俺に懐いてくれる。
こういう面で考えれば、6keyの担当サポーター……まぁ兄貴側の気持ちも分かるというものだ。
ついでに言うと、弟が夢中になっている女の子から教えてもらったというオツマミは、マァジで旨かった。
キュウリを叩き割った? みたいな見た目をしているのだが、調味料やらでしっかりと味が付けられ。
更には乾燥唐辛子なんかも千切られている状態で入っていて、良い感じにピリッと来る。
だというのに、このグッと満足させる様な香りと味わいは……アレか、ごま油でも混ぜてあるのか。
すげぇな、オイ。
パッと教えただけで、普段料理しない弟でも旨い物がすぐ作れるとなると……あの子、ガチで料理上手だ。
かぁぁ……そんな妹が家に居るとは、向こうのお兄さんは羨ましいねぇ。
「ん? あれ? それガンサバのメール?」
「おぉっと、あんまり詳しく見るなよ? お前は一般プレイヤーなんだから」
「分かってるってば……でもでも、また何か“賞金首イベント”来たりする!? そこだけ教えて!」
「駄目でーす、運営情報は家族でも漏洩禁止でーす」
ちぇっとばかりに顔を顰められてしまったが、此方としてはその反応すらもククッと笑い声を洩らしてしまう。
本当に好きだなぁコイツは、ガンサバが。
スカウトされたからこそ、“仕事として”俺はあのゲームで賞金首をやっているが。
本当の意味で、弟はあの会社が作るゲームが好きだ。
どうしたって“プロ”って名の付く立場になると、そういう純粋な気持ちみたいなのが薄れてしまっていけない……とか、思っていたのだが。
仕事としてやっていても、存分に楽しんでいる奴等が出て来たのも確か。
そんでもって、別の所でも繋がりがあるプレイヤーだからこそ。
此方としては“御挨拶”の一つでもしておこうかと思ったのだが……向こうの兄が、なかなかどうして俺の事を警戒している御様子だ。
ま、仕方ないけどね。
6key以外のプレイヤーとは、こんな繋がりを持とうとはしなかったし。
そもそも顔出しNGなんて言って、前にあった会議すらすっぽかしたくらいだからな。
向こうの評価としては、あまり良くは無いのだろう。
「まぁなんだ、もしも次のイベントがあったとして。その時にお前を見つけても、撃たないでおいてやるよ」
「そういう気遣いはいらないです~! むしろ俺が兄貴を狙撃してやるし!」
「ハハッ、いいね。そしたら“9K”初のキルログはお前のモノだ、俺が使ってる狙撃銃が手に入るぞ?」
「次は絶対見つけ出すし! ていうか兄貴、前回“シックス”と組んだって本当? ネットで見かけたけど、それは流石にズルいって……賞金首二人掛かりとか、勝てる訳無いじゃん」
「抜かせ、こっちは10人で何千人って相手を任されたんだぞ? それくらいしなきゃやってられるか」
なぁんて、俺としても“繋がり”が無ければ手を貸そうなんて思わなかったが。
アイツ、6keyは……弟と一緒にゲームをやっている同級生の女の子。
シックスの担当者の名前やら、会議の様子をウチの担当から聞いて判明した事だが。
まさかまさか、こんな所でリアルの繋がりが出来てしまうとは。
青春真っ盛りな弟が、必死にアピールしている女の子だというのなら……兄貴としては、ちょっとは協力したくなるというもので。
「けどまぁ少し面白い事になって来てな。またお前にも教えられる内容が出て来たら、その都度教えてやるよ」
「約束だからね!? あぁでも……兄貴は他のゲームでも大会近いんじゃなかったっけ? だとしたら、あんまりガンサバには時間使えない?」
「他のゲームなら、結構システムアシストが強いからな。やる事はいつもとあんまり変わらないよ。スナイパーの基本、それは――」
「行動予測と全体把握、でしょ? 兄貴みたいに出来れば、俺ももう少しスパッと狙撃出来るんだけどなぁ……」
なんて、生意気にも言葉を被せて来るけども。
さてさて、どうすっかね。
この際だ、最初からネタバラしをした状態じゃないと顔合わせは無理かな?
それこそ……この先、弟がその子と付き合う事になったりした時。
家には俺が居るってのがデメリットにならないくらいには、好感度を上げたいところなんだけどねぇ。
その為には、“9K”である程度良いイメージを作っておかないと。
「しっかし、兄貴も本当に適当だよねぇ……9K。他の賞金首の名前に助けられて、ナンバーズみたいに恰好がついたけど。元々は……“方言”、だもんねぇ。父さんの実家の方の」
「現太、酒のおかわりは“無いんけぇ?”」
「ホラこれだ、もうちょっと格好付けてよ……頼むから。ハイハイ、おかわり貰ってきますよ~」
そんな事を言いながら、呆れた溜息と共に部屋を出ていく弟。
うんむ、こちらのお願いを聞いてくれる実に良い弟だ。
この歳になっても実家に住み、ゲームばかりやっている兄なんぞ世間体的には酷いものだろうが。
しかしウチの両親とアイツは、俺の仕事に理解を示してくれた。
ちゃんと稼げているのなら、問題無いと言って。
むしろ現太に関しては、俺のプレイスキルに対して尊敬の眼差しを向けてくれる程。
いやはやホント、VR様様だね。
ついでに言うと、俺のネーミングセンスが適当なのは遺伝によるモノだと思うんだ。
何と言っても弟だって、自分のキャラに“96sour”とか名前を付けているし。
まんま苗字じゃんって話だよ、俺よりヒデェよ。
なんて、思っていたのだが。
「まさかシックスの読み方が、“ムッツキー”だったとはねぇ……こっちもこっちで、名前そのまんまかよ。最近の若い子は、もう少し捻りなさいって教えないと駄目かぁ?」
などと、年寄り臭い台詞を吐きながらお酒を嗜むのであった。
いやぁしかし、シックスがウチに来るくらい弟と仲良くなったら……って言うと、あの渋いおっさんが来そうで嫌だが。
件の女の子が、弟の彼女として家に遊びに来たら……こういうツマミとか作ってくれんのかな?
それは非常に楽しみだ、ちょっと図々しい思考だけど。
でもだからこそ、俺が嫌われる訳にはいかないってなもんで。
しっかし……いいなぁ料理上手な彼女、俺も欲しいわ……。
俺が見る事が出来るのは、外見からして殺し屋のおっさんな訳だが。
そこだけは、なんとも微妙な気分になるなぁ。
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