テラーノベル
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次の日、いつも1番最初に教室に入る俺は、教室が開いていないため、職員室に鍵を取りに行く。
だが今日は靴箱に既に誰かの靴が入っていた。小さめの靴。女子か、背の低い男子か。
俺は不思議に思いつつも教室へ足を運び、ドアを開けた。その時だった。
大森が、俺の席に座って課題をしていた。いつも遅刻ギリギリで、課題をやっているところなんて見たことがない。なのに、今日はやけに真剣に課題を解いていた。
ーーでも、なんで俺の席なのか、疑問に思う。自分の席がない訳でもないのに。
滉斗『大森』
俺が大森の近くまで行って声をかけるとーー
元貴『ぅわっ!?び、びっくりした……何だよいんちょー……//』
驚いたように目を丸くし、上目遣いでこちらを見てくる。
滉斗『なんで俺の席でやってんの?』
元貴『ぁえ、えっと……その………//』
俺を待っていましたと言わんばかりに顔を赤く染めて、もじもじしながら恥ずかしそうに俯く大森。
やっぱ、めっちゃ俺のこと好きじゃん。
滉斗『俺のこと待ってたの?』
元貴『ち、ちが……っ、!別に、そんなんじゃ…!!//』
滉斗『んはっ笑 いいよ座ってて。職員室の棚にプリント取りに行くけど、一緒に行く?』
俺がそう言うと、ぱっと顔を上げて嬉しそうな顔をする。見えない尻尾をぶんぶん振ってるみたいで、可愛い。
元貴『行くっ…!』
滉斗『俺と一緒にいたいもんねっ?笑』
元貴『はぁ!?んな訳ねーだろ!!調子乗んなよ!!///』
いちいち顔を真っ赤にして言うもんだから、照れ隠ししてるのがバレバレ。
まぁそんなところも可愛いんだけどね。
1限目の授業は数学。
男子『数学やだよな〜』
男子『分かる〜てか大森いんの珍しくね?』
男子『ほんとだよな…委員長に脅されたとか?』
女子『若井くんそんなことしないって〜』
女子『でもさでもさ…大森くんちょっと怖いけど意外とかっこよくない?!』
女子『それな?顔可愛いんだよねぇ』
クラス中のあちこちで大森の名前が挙がる。そりゃそうだ。いつも授業に参加しない大森が、授業前にきちんと自分の席に座っているんだから。
チャイムがなると同時に、数学担当の先生が入ってくる。数学担当の先生は意外と怖くて、入ってくると教室の空気が一変する。みんな話すのをやめ、手元にある教科書やノートを開き始める。
先生『おはようございます。日直、号令。』
先生がそう言うと、日直である大森と隣の席の女子ーー綾華が声を出す。
大森・綾華『起立』
ハモった。
気まずそうに綾華が大森の方を見る。すると大森は“ごめん”と申し訳なさそうに口パクで伝えた。謝れるんだ、此奴。
大森『お願いします』
意外と優しく、落ち着いた声にみんなは動揺しつつも、挨拶をする。席に座った後、先生のある一言で教室内の空気がまたもや一変した。
先生『今日は教科書38ページの問題を隣の席の人と協力して解いてもらう。廊下側から順に当てていくぞ。』
先生がそう言った瞬間、みんながざわつき始めた。
大森の隣は綾華。綾華は明るくて元気な子だが、大森のことを少し苦手意識をしているらしい。無理もない。こんだけピアス開いててチャラチャラしてるんだから。
綾華『……っ、』
綾華の顔色を見ると、青ざめた顔をしていて、終わった…というような表情をしていた。
その表情に気づいた大森がーー
元貴『んと……山中、?だよね……俺数学解けないけど……大丈夫、、?』
いつもの強い口調ではなく、優しくて、安心するような声。そんな声出せるなら威圧的な態度取るなよってすごく思う。
綾華『あ、う、うん……だ、大丈夫……』
絶対大丈夫じゃない。笑顔が引き攣っている。綾華がこんなにも戸惑っているのは珍しい。
何かを察したのか大森は、廊下側の方を見て数え出した。
元貴『……10番目だから当てられるのここの問題だよね?ここだけ解けばいっか』
そう言ってシャーペンをくるくると回しながら考える大森。綾華がぽかんとした顔で大森を見ている。クラスの誰しもが無言になる。綾華がじっと大森を見ていると、
元貴『ん?ここだけじゃ駄目?』
と言い、首をこてんと傾げて口角を上げて聞く大森。その仕草に何かがはち切れそうになった俺は、思わず口元を隠した。
まずい。可愛すぎる。
俺が口元を隠していると、周りのみんなが騒ぎ出した。
男子『何あれ何あれ何あれ何あれ』
女子『待って可愛い笑顔が可愛い』
男子『うわ待って鼻血出た』
ざわざわとみんなが騒ぎ出す中、大森は口を尖らせながら問題を解いていた。シャーペンのノックする部分を唇に当てたり、少し唇を噛んだりする動作が可愛すぎる。
元貴『…山中、ここ分かんない』
そう言って綾華に顔を近づけ、分からない部分を指を指して示す大森。
綾華『ここはこれを移行して……』
綾華の分かりやすい説明に相槌を打ちながら頷いている。
元貴『分かったかも、ありがと』
すらすらと式を書き始める大森。大森の字は女子みたいに丸くて、可愛らしくて。
こんなところも可愛いのかと思ってしまう自分がいるのが、なんとも複雑な気持ちになる。
元貴『……解けたっ 答え28?』
綾華『多分合ってると思う…』
元貴『よっしゃ、ありがとっ』
そう言ってにこっと微笑むその顔があまりにも可愛くて、尊くて。周りのみんながまた騒ぎ始める。綾華まで口角を上げてニヤけている。
ーー大森の可愛いところなんて、俺だけが知ってたはずなのに。
元貴『……山中って下の名前“綾華”だよね?』
綾華『え?あ、うん…』
元貴『綾華って呼んでもいい?』
綾華『いいよ…?』
綾華がそう言うと、大森は頬杖を付いて、綾華の目をじっと見つめて、ふわりと笑ってーー
元貴『……あやか』
可愛らしい声でそう呟いた。
男子『うぉぉぉ!!!俺も名前で呼ばれてぇー!!!』
女子『今のは反則…レッドカードでしょ…』
男子『鼻血で染まったってこと?(?)』
またもやみんなが騒ぎ出す。何か注意しないのかと先生を見ると、先生も大森の可愛さに驚いて目を丸くしている。
……もう、なんなんだよ。大森の可愛いところなんて俺が1番知ってるし。
大森が1人でしてる甘い声だって、表情だって、大森の初体験だって、ファーストキスだって俺だし。
……つーかなんであんな笑顔見せてんだよ。あんな顔、俺には1回ぐらいしか見せたことないのに。
でも、なんで俺…興味ないはずなのにこんな気持ちになってんだ…?
まさか俺彼奴のこと…な訳ない、な訳ない。信じない。
俺は顔が熱くなるのを感じながら、問題に目を向けた。
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ドキドキドキドキドキ💓
動悸がドキドキ(←は?)
コメント
7件
動悸がドキドキww 私見逃しませんからね…😂 ていうかなんだこの懐かしい感じ…😭 やっぱり原点は「初めて会ったその日から──」ですね これをきっかけに主さんを知ったと言っても過言じゃないですから🥹 続き楽しみです✨️
うわ待って多分そのクラスの誰よりも私の口角がいっちばん上がってると思う(?)
可愛すぎだろ ー ッ !! てかあやちゃん出てくると思わんかったんやけど () クラスのみんな大森彡が可愛いのわかるのね !? 親の前で口角上がって天に行きそうになった ( ? さすが私の娘ね ! 私の下手な遺伝子受け継がれなくて良かったわ 、 w