とある休日の昼下がり。
窓の外は穏やかな晴れ空で、すちの家のリビングにはゆったりとした時間が流れていた。
みことは、朝のうちに一度は目を覚ましたものの、ふわふわした眠気に負けてソファの上で二度寝。
すちのブランケットにくるまり、頬を枕に押しつけて気持ちよさそうに寝息を立てている。
寝ぐせで少し髪が跳ねていて、顔には微かに陽の光が差し込んでいた。
「……ほんと、寝顔もかわいいな」
すちは苦笑しながらも、寝ているみことの髪を優しく整える。
そんな中、玄関のチャイムが鳴り、続いて元気な声が響いた。
「おじゃましまーす!」
「おーい、すちー!来たぞー」
ひまなつとらん、そしてこさめ、いるまの姿が次々と現れる。
リビングに入ってきた瞬間、全員の視線がソファで寝ているみことに向かう。
「……え、寝てる」
こさめが珍しく小声でつぶやく。
「朝から寝てんのか、こいつ」
そしているまは呆れ顔。
「いや、一回起きたんだけどね……」
すちは肩を竦めながら、静かに返した。
すると、ひまなつが腕を組んで、妙に真面目な表情をして口を開いた。
「なぁ、すち。ひとつ聞いていい?」
「……なに?」
「お前、みこととヤッた?」
その瞬間——。
「ぶふっ!?」「ごほっ!?」
らんとすちは同時に飲んでいたお茶を盛大に噴き出した。
すちは咳き込みながら慌てて口を拭き、「してない!!!」と全力で否定する。
「な、何その質問!? 唐突すぎるだろっ……!」
「ちょ、ひまなつお前!昼間から何言ってんだよ!」
らんも動揺して焦る。
しかし、ひまなつは真顔のまま首をかしげる。
「いや、だって最近すちとみことめっちゃ距離近いし。あれは手出してる顔だと思って」
「どんな顔だよそれ……!」
すちは真っ赤になって突っ込む。
ひまなつは構わず、「じゃあさ、らんは?」と矛先を向ける。
「手出してるんだろ?」
らんはカップを持ったままピタッと固まる。
「出されてない!」
こさめは即座に元気よく手を上げて、明るく宣言した。
「ちょ、こさめ!? そういうこと堂々と言うなって!!」
「だって出されてないもん!ちゅーしかしてない!」
こさめは悪びれず笑う。
らんは顔を真っ赤にし、頭を抱える。
「この話題マジでやめろ……!」
その様子に、ひまなつはますます調子に乗ったようににやりと笑う。
「んじゃ……いるまは?俺に手出されてる?」
その一言で、場の空気が一瞬静まり返った。
全員の視線が、じりじりといるまに集まる。
いるまは一拍置いて、面倒くさそうに溜息をつくと、どうにでもなれという表情で答えた。
「…手出されてるわ」
「えぇぇぇえ!?!?」
らん・すち・こさめが揃って叫び声を上げる。
ひまなつはどこか満足そうに頷きながら、
「ほらな、そういうこと」と勝ち誇ったように言う。
次の瞬間、恥ずかしさが抑えきれず顔を真っ赤にしたいるまが立ち上がり、 ひまなつの頭を軽く叩く。
「いった! ちょ、図星だからって叩くなって!」
らんは「いやマジかよ……」と呟き、こさめは「知ってた気もする」と肩をすくめた。
すちは呆れながらも笑い、「カオスだな……」とぼそりと漏らす。
その間も、ソファの上ではみことが気持ちよさそうに寝息を立てたまま。
笑い声の中でも、ほんの少しも起きる気配はなかった。
ひまなつといるまのひと騒ぎがようやく落ち着いた頃、 リビングにはまだ笑いの余韻が残っていた。
いるまは照れ隠しにソファの背にもたれ、ひまなつを軽く睨みつけている。
そんな中、ひまなつはにやにやと口角を上げ、何かを思いついたように全員を見回した。
「なぁ、もうちょい聞いていい?」
「……嫌な予感しかしねぇ」
らんが眉をひそめるが、ひまなつは気にせず続けた。
「すちとらんさ、手出したいとか思わないの?」
その瞬間——。
「ぶっ!?」「またかよっ!」
再びすちはお茶を噴き、らんは手にしていたグラスを落としそうになった。
「おま、おまえな……! なんでそういう方向に話を持ってくんの!?」
すちは耳まで真っ赤にして、完全に動揺。
しかし、ひまなつは涼しい顔で首を傾げた。
「いやぁ、さっき“出してない”とか言ってたからさ。 じゃあ本音はどうなのかな〜って思って」
らんが「ほんと勘弁してくれ!」と頭を抱える中、
すちは顔を真っ赤にしながら、視線を泳がせ、ぽつりと本音を漏らす。
「……っ、手……出したい、けど」
「おおっ!!!」
ひまなつが声を上げ、らんは「言っちゃったよ!?」とツッコむ。
こさめは、ぽやっとした表情のまま「すち兄、正直だね〜」と笑った。
「だ、だって……好きな人に手出したいって思うの、普通だろ!?」
すちは半ば自爆気味に言い返し、顔を覆った。
その様子にひまなつは楽しそうにニヤニヤが止まらない。
「じゃ、らんはどうなの?」
さらに追撃。
「はぁ!?俺!?」
らんが声を裏返すより早く、
こさめがぴょんと手を上げて元気いっぱいに叫んだ。
「手出されたいっ!!!」
その場が一瞬、静まり返る。
次の瞬間、らんの顔が見事に真っ赤になり、全力で叫ぶ。
「こ、こさめぇぇぇ!!そういうこと大声で言うなって!!!」
こさめはけろっとした様子で「だって本当のことだもん!」と無邪気に返す。
すちは笑いをこらえきれず肩を震わせ、ひまなつは机を叩きながら大爆笑。
「らんの顔、りんごみたいになってるって!」
「やかましいわッ!!」
場の空気が完全に混沌と化す中、
いるまだけは冷静に状況を判断し、そっと立ち上がった。
「……おい、いい加減にしとけよ」
「ん?楽しいじゃん」
「楽しくねぇよ」
そう言いつつ、いるまは被害が及ばないように、 すやすや眠っているみことの隣の床に腰を下ろす。
「お前だけがこの部屋の癒しだわ」
小声で呟き、 寝顔を眺めながらため息をついた。
その横で、みことは相変わらず幸せそうに眠っている。
周りの騒がしさなど一切気にせず、
時折ふにゃっと笑みを浮かべるその顔に、
いるまの頬が再びゆるんだ。
——騒がしくも、どこか温かい。
兄弟全員が集まると、いつだって笑い声で満たされるのだった。
リビングの空気が、まだひまなつの爆弾発言の余韻を引きずっている。
らんは顔を覆いながらソファに沈み、「なんなんだ今日……」と頭を抱えていた。
こさめはそんな空気をどこ吹く風といった様子で、みことの寝顔を眺めながらニコニコしている。
沈黙を破ったのは、らんだった。
「……なぁ、なつ」
「ん?」
「お前ら、結局どこまでいってんの?」
隣で同じように頭を抱えていたすちも、
「……もう聞くしかないよな」
と半ば投げやりに同調する。
ひまなつは「え、どこまでって……」と首を傾げ、 まるで天気の話でもするかのように淡々と、 「最後まで」と口にした。
「――っ!?」
その瞬間、すちとらんが同時に驚く。
「おま、お前サラッと言うな!!」
「そういうことはな!?身内の前で言うな!!」
ひまなつはケロッとした顔のまま「事実じゃん」と肩をすくめる。
だが、その発言を聞き逃さなかった男がいた。
いるまだ。
「……おい、今なんつった?」
低く響いた声に、全員がびくりとする。
いるまは眉をひそめ、声を荒げた。
「兄弟間で俺の性事情を暴露すんじゃねぇ!!!」
ひまなつは驚くどころか、にやりと笑って一歩近づく。
「でも、いるま可愛いからつい言いたくなっちゃったんだって」
「可愛い言うなッ!」
「ほんと可愛い」
そう言いながら、ひまなつは怒って頬を赤らめるいるまの腕を引き寄せ ――ふっと唇を重ねた。
一瞬、時間が止まる。
いるまの瞳が大きく見開かれ、息が詰まるほどの近さ。
触れたのはほんの数秒、それでも空気が甘く揺らいだ。
唇が離れると、ひまなつは満足げに微笑んだ。
「ほら、怒った顔も照れてる顔も、やっぱり可愛い」
いるまは完全に固まったまま、 顔を真っ赤に染めてぴくりとも動かない。
「お、おま……なにしてんだよ……」
ようやく搾り出した声は震えていた。
その反応を見て、ひまなつはますます嬉しそうに笑う。
らんは呆れたように「ごちそうさまって言っとくわ……」と溜息をつき、
すちは「もう本当に今日カオスすぎる……」と額を押さえた。
しかしこさめだけは目を輝かせる。
「わー!なんか楽しそう!らん兄!俺らもしよっ!」
「はあ!?なに言って――」
らんが制止する間もなく、こさめは勢いよく背伸びして、らんの唇にちょこんとキスをした。
「……っ!」
らんは顔を真っ赤にし、声を詰まらせる。
「お、お前なぁ……っ、ほんとマイペースすぎ!」
その横で、ひまなつはけろっとした顔でいるまに 「もう一回」と言って再び軽く唇を重ねた。
「お、おま……っ!」
いるまは真っ赤な顔で言葉を詰まらせる。
その動揺っぷりに、ひまなつは満足そうに微笑んだ。
そんな喧噪の中――
ふと、ソファで寝ていたみことが目を擦りながら上体を起こした。
「……ん。なんか、にぎやか……」
目に映ったのは、あたふたするらんと赤面したいるま、
にこにこと笑うひまなつとこさめ、そして呆れ顔のすち。
「……あれ? みんな来てたんだ……?」
寝ぼけた声でそう呟くみことに、全員の動きが止まる。
「お、おう……来てたよ……」
「……うるさかったかな?ごめんね、みこと」
すちが苦笑しながら頭を撫でると、みことはぽかんとした顔でリビングを見回す。
「なんか、すごく楽しそう……」
「いや、楽しそうっていうか……まあ、にぎやかかな……」
すちは溜息をつきつつも、どこか安心したように笑う。
らんはこさめの頭をぐしゃぐしゃにし、
「お前もうちょっと節度ってもんをだな……!」と怒鳴りつつも照れ笑いを浮かべていた。
ひまなつはいるまの腕を掴んで離さず、
「怒っても可愛いなぁ」などと相変わらずの調子。
いるまは真っ赤な顔で「うるせぇ!」と反論していた。
そんな賑やかなやりとりを聞きながら、
みことはふにゃりと笑ってすちの肩にもたれた。
「みんな仲良しで……よかった……」
すちはその言葉に頬を緩め、 優しくみことの頭を撫でるのだった。
みことが目を覚ますと、すぐにこさめが駆け寄ってきた。
するとこさめは、突然とんでもないことを口にする。
「ねぇねぇ!さっきすち兄が“みことくんのこと、めちゃくちゃ可愛い、抱きたい”って言ってたよ!」
「ちょ、こさめちゃん!? 誰がそんな――!」
すちは顔を真っ赤にして慌てふためく。
しかし、みことは驚くどころか、ふにゃりと優しい笑顔を浮かべた。
「……そうなんだ。おれも、すち兄のこと……だいすきだし、手出されたいよ?」
リビングに静寂が降りた。
ひまなつもらんもいるまも、全員が一瞬、息を呑む。
「な、なっ……!」
今度はすちが真っ赤になって固まってしまう。
「え、なにこの流れ!?」とらんが頭を抱え、
「えへへ〜、いいこと聞けた!」とこさめは満足げに笑った。
「……ほんと、お前は爆弾みたいなやつだな」
らんは頭を抱えながら苦笑した。
そんな空気の中で、みことはすちの袖をそっと掴み、小声で呟く。
「すち兄、あとで話そ?」
すちはその一言に優しく頷き、穏やかな声で返した。
兄弟たちのどよめきと笑い声の中、
リビングにはどこか温かい空気が満ちていた。
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はい、来たよ来たよ来たよ来たよ来たよ来たよ来ましたよ!もうそろそろですちみこR18くんじゃありませんか!?みこちゃんとこさめちゃんの『手出されたい』はなんなんよ…可愛いかよ…こさめちゃんに関してはまだ付き合ってなかったんかよ、すっかり忘れてましたわ…てかそれは告白なのでは?
見るの遅くなっちゃってごめんなさいです💦 3話一気読みした、、、んですけど、最後の、つまりこのお話ですんごいぶっ飛んた話題とか発言とかが連発されてて、心臓止まるかと思いました😳 何なんですかこの尊いがつんめつめになってる空間は!!! 最高すぎじゃないですか!!! 次のお話はあーるですかね、、? あーるでもあーるじゃなくても楽しみです!!!! 待ってます!!!
なついるてぇてぇなついるてぇてぇなついるてぇてぇなついるてぇてぇなついるてぇてぇ