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第20話 敗北
勝ち目がない。
そうみんなが思わされた。
最終的に西円寺は4回も海斗に刺された。
その後、傷ついた佳代たちは突如現れた海斗の組織のボスらしき者によって拘束された。
アルンはその男によって捕獲された。
その男の名はまだ誰も知らなかった。
ただただ黒い外套をまとい、顔を深くフードで隠した不気味な男ーー。
「連れていけ。全員だ」
その一言で、佳代たちは全員、強引に黒い輸送車の中へ詰め込まれた。
抵抗する余力もなかった。
そして、連れていかれた先は、海斗の所属する組織の本拠地一一地上から隔絶された地下都市のような場所だった。
地上とは異なる空気、鉄と薬品の混じったような臭い。
そこに着くなり、仲間たちは男女で強制的に分けられた。
女たち(佳代・相奈・お鶴の方・西円寺)は、何も知らされないまま、すぐに「労働部屋」と呼ばれる場所へ送られた。
薄暗い部屋。掃除、資材運び、解体作業。
さらに西円寺は先程の怪我で多少の治療を受けたものの、傷が治りきっていない状況でも労働を強いられた。
そして数時間ごとに交代で拷問室に呼び出され、耐久試験と称した肉体への苦痛が与えられた。
「やめて…つ、何の意味が…ツ!」
佳代は唯一抵抗した。
だが佳代がいくら叫んでも、聞き入れられることはない。
拷問官は無言で、電流の走る鎖を腕に巻き、身体に直接流し込んだ。
一方、男たち(日向・蓮人・晴翔・小河・近松・林)は、完全な監禁状態だった。
食事も不定期。光の入らない鉄格子の独房に閉じ込められ、声を発していることがバレると拷問室に呼ばれる。
時折、誰かが独房から連れ出されるが、その誰もが、戻る時には言葉を失っていた。
だが一ーただ一人、光希だけは別だった。
彼は、「特別対象」として、組織中枢の実験棟に運ばれた。
16歳という若さで異常な力を持つ光希の存在は、海斗の組織でも特異視されていた。
実験室は、生物的でもあり、機械的でもある異様な空間だった。
壁には見たこともない管や装置が張り巡らされ、人体のパーツと思われる何かがホルマリン漬けで並んでいた。
「ふふ…光希くん。ここが君の”居場所”だよ」
そう言ったのは、この施設の支配者ーーアルベリヒ。
それは先ほど会った黒い外套をまとい、顔を深くフードで隠した不気味な男の正体だった。
あの黒いフードの男こそ、海斗の所属する組織のボスであり、悪魔を神と崇める「エンジェル」の頂点。
アルベリヒは、研究員のトップ5人を従えて、光希の身体に興味を示していた。
「素晴らしい筋肉の密度、反応速度、そしてこの若さにしてのこの強さ。これは..まさに”奇跡”だ」
最初の実験は、光希の血液採取だった。
だが、普通の注射ではなく、腕に無理やりのうな針を刺し、体に刺激を与えて力を使わせ、
血を暴走させた状態で強引に搾取した。
「う、あ、がっ…..!」
光希は叫んだが、容赦はなかった。
何本もの注射器が体に突き刺さり、神経へ異物が送り込まれていく。
時には体を焦がすような電流、時には脳を揺さぶるような光と音。
「もっとだ。もっと出せ…君の本当の力を」
アルベリヒは狂ったように笑いながら、光希の叫び声を聞いていた。
彼にとって、光希は”理想の兵器”であり、“信仰の素材”だった。
実験は何時間にも及び、体は何度も意識を手放しかけた。
それでも耐えていた光希だったが一一最後には、あまりの苦痛に静かに崩れ落ちた。
「光希…..くん?」
研究員が呟く。
だが、すでに光希は一一失神していた。
アルベリヒはその姿を見て、興奮しながら呟いた。
「いい…!お前は素晴らしい…!次の段階だ。もっと…..もっとだ…..!」
こうして、光希たち11人は過酷な状況へと放り込まれた。
それぞれが苦痛と闇に飲まれかけながら、必死に希望の火を絶やさぬように生きていた。
だがまだ、この地獄のような日々はーー始まりに過ぎなかった。